「八月納涼歌舞伎 第二部」 (original) (raw)

「髪結新三」。勘九郎さん念願の新三である。インタビューで「親がいればもっとはやくにできたのかも」と口にしてらしたようですが、そういう言葉がポロッと出てしまうほどやりたかったお役ということなんでしょうね。今年は籠釣瓶の次郎左衛門もやれたし、これで十一月が桜姫東文章なら言うことなかった(根に持つタイプ)。

どの場面も期待通りに、いや期待以上にカッコいい、キレッキレの刃物のような江戸っ子新三が拝めてマジ至福の時間でした。忠七との場面も勝奴との場面も、家主長兵衛との場面もぜんぶ演者同志の相性の良さが伝わってくるよい座組で、これで初役を迎えられて本当によかった…と勝手に親戚の気持ち。思うに、勘九郎さんてこうした絵にかいたような江戸っ子をやることに強いあこがれをお持ちなような気がするし、その憧れの強さとご本人のニンがうまいこと噛み合っていたんじゃないかなあ。勘三郎さんの新三で勘九郎さんが勝奴の時に拝見していますが、勘九郎さんの勝もめちゃよかったもんね。

普段はあんなにナチュラルボーン好青年みたいな佇まいなのに、悪いやつを演じるときほど色気びしゃびしゃになる現象に誰か名前を付けてほしいし、中でもあの懐手で柱にもたれかかり、お熊を品定めでもしているかのようなあの場面、やばいやばいこわいこわい男前すぎてもうこわいってぇー!と私の心の中がうるさかった。ハアハア。もちろん終演後お写真ダッシュで買いに行きましたとも。

いてうさんの鰹売りとのやりとり、巳之助さん勝奴とのさりげない場面で出る親密さ、勘九郎さんの思い描く「江戸の香りが匂い立つような」舞台になったんじゃないかと思いますし、これからももっと上演を重ねていってほしいと心から思います!

続いて所作事…というわけで「艶紅曙接拙 紅翫」。若手中心の舞踊で、勘太郎くんがしっかりこの中で踊っていて感心したし、かつ隣にいた虎ちゃんともうほぼ背丈が変わらんやん…!とびっくりしました。手の美しさはお父さん譲りだね。あと私は児太郎さんのふくふくとした色気が大好き。今年の納涼は児太郎さんをたくさん観られて嬉しかったです。