【中学受験都市伝説】結局合格する子は親が東大出身 (original) (raw)
「結局のところ、受験で〇〇中学に合格するような子は、親が東大出身なのよね」
そんは話を聞いたことはありませんか?
今回はこのことについて考察します。
親が東大って?
まず、この「親が東大」って何を意味しているのか整理します。
◆親の頭が良い
これでしょうね。
別に東大でなくても「親が一橋」「親が京大」でもいい気がします。
つまり、東大というのは一つの象徴であって、親の頭の良さをいいたいのでしょう。
もう少し細かく考えてみます。
子どもが12歳として、親が28~42歳の間に生まれた子どもだと仮定すると、親が大学に進学した時期は、1988~2002 となります。
この時期の、東大合格高校別ランキングをつくってみました。
東大ベスト10推移
同じ学校名が多少前後が入れ替わるだけで並んでいます。
この表ではベスト10までしか載せていませんが、これをベスト20に広げたところで、桐朋・聖光・県立浦和・久留米大付・女子学院といった学校が出てくるだけです。
つまり、今の親世代が大学入試をした頃には、すでに現在と同じ状況、つまり特定の私立中高一貫校が東大合格者を輩出していたのです。
そうすると、「親が東大」の場合、以下のケースが想定されます。
①親は中学受験に成功し、開成・桜蔭・灘等の中高一貫校から東大進学
②親は開成・筑駒に不合格で巣鴨・海城・攻玉社といった私立でがんばって東大進学
③親は日比谷・県立浦和・県立千葉・等の首都圏トップ公立高校から東大進学
④親は地方のトップ県立高校から東大進学
もちろんそれ以外のケース、たとえば無名の私立高や二番手公立高からの東大進学もいますが、あくまでも「中学受験」というフィールド上での話ですので。
①・②のケースは、親が中学受験をしていますね。
ということは、さらにその親(現在の小6受験生の祖父・祖母世代)が、自分の子どもに中学受験をさせたということです。
「合格する子は親が東大」理論を適用すると、祖父・祖母も東大出身ということになりますが、それではいくらでも遡ってとんでもない家系図ができるだけですので、話をすすめます。
ここから考えられることとしては、祖父母が親に、つまり自分の子どもに中学受験をさせ、こういった学校に進学させるだけの教育熱心な方であったことは間違いありません。
③のケースは、あえて中学受験をさせずに、都立・県立のトップ校に進学させたのですね。
県立浦和・千葉はともかくとして、このころは、すでに都立日比谷の進学実績は地に墜ちていました。
上の表にならって、親世代が大学入試をした時期、1988年から2002年の日比谷高校からの東大実績はこうなっています。
10→ 11→ 8→ 7→7→ 8→ 1→ 7→ 4→ 3→ 6→ 2→ 2→6 →3 →4
この時期に日比谷高校から東大に進学したということは、本当の秀才といえるでしょう。おそらくは中学受験をしたとしても開成あたりには合格できたかもしれません。
ちなみに日比谷高校が復活した(コンスタントに20名以上の東大合格者が出る)といえるのは、2010年頃からです。
この時期に日比谷高校(やその他名門公立高校)を選択したということは、親も高校受験で都立高校に進学したのか、あるいは地方出身で東京の状況をよくわかっていなかったのか、地元の公立中学が魅力的だったのか、そうした場合でしょうか。
④もよく聞く話です。地方のトップ県立高校出身で東大出身の親が、わが子は中学受験させるというケースでしょうか。
例えば、長野県の松本深志高校をみてみましょう。140年以上の歴史を誇る名門県立高校です。同様に1988年から2002年の東大実績はこうでした。
6 →11→ 3→ 9→ 11→ 11→ 7→ 8→ 9→ 9→ 3→ 11→ 10→ 10→ 7
多くは見えないかもしれませんが、この時期の長野県全体からの東大合格者数を見るとこうなっているのです。
30→42→24→34→37→34→37→28→34→33→28→38→29→49→34
地方の県立高校から東大へ合格するのが、いかに難関であるのか、そしていかに優秀な人たちであるのかがうかがえますね。
日ごろ、開成や桜蔭に進学する生徒を教えていて、彼らが東大に当たり前のように進学する話ばかり聞いていると、東大進学が当たり前のような錯覚に陥りますが、日本全体で考えれば、やはりとんでもなく優秀な層だけが進学する大学であると再認識しました。
そう考えると、東大出身の親世代が、どんな経緯で東大に進学したとしても、いずれの場合にも共通しているのは、親の意識の高さです。
親が東大出身と聞くと、すぐに「優秀な遺伝子」とDNAの問題にしがちですが、それよりもこの「親の意識の高さ」が最重要だと思っています。
もちろん遺伝もあるとは思いますが。
むしろ難関中学に進学した生徒からよく聞くのは、
「うちの学校で抜群に勉強のできるA子は、両親とも医者だった」
「成績トップのB太の親は、父親は外務省、母親は外資コンサル勤務だって」
そういった話です。
進学して周囲を見ると、意外と普通のサラリーマン家庭が多いのですが(親もとくに東大ではない)、学校の成績最上位には、非常に優秀な親の子弟がいるのですね。
親の意識が高いとは?
簡単です。
教育に手間とお金を惜しまないのです。
教育こそが子どもの未来を切り開くために最重要であることをわかっているからです。
そうした子は、中高生のときに留学する者も多いですね。夏休み1か月オックスフォード留学であるとか、1年間の交換留学であるとか。
子どもの、まがい物の自主性にとらわれて勉強させない、などということもありません。やるべきことをやるべき時にやることの大切さを自覚しています。
もちろん、家庭でも勉強するのが当たり前の空気が漂っています。
結局この都市伝説は?
東大生の親の出身大学の全調査など実施してみないと、検証できるわけがありません。
親子で東大という家庭もあるでしょうし、そうでない家庭もあるでしょう。
では、なぜこんな都市伝説が流布するのか。
簡単です。
僻みです。
「結局のところ、筑駒に受かるのは親が東大の子なんだよね。うちはそうじゃないから・・・・・」
「結局遺伝よね。A君のところもBさんのところも親が東大だって聞いたよ。だからうちは開成に行けなくても・・・・・」
この「・・・・」のところには「しかたがない」という諦めワードが入ります。
でも、冷静に考えてみてください。
仮に親が東大出身で、子どもも成績優秀だったとして、その要因は以下の3点にまとめられるはずです。
◆優秀な遺伝子
◆親の意識が高い・・・勉強の価値を知っている
◆学習環境・・・塾・家庭学習環境等
このうち、2つについては、親次第で何とでもなる要因です。
大人になれば見えてくる真実というものももちろんありますが、せめて子どもが社会に出るまでは、
「努力は裏切らない」
「がんばればもっといける!」
と、努力第一主義で接してあげるべきだと思うのです。
この都市伝説の派生形について以下の記事で書いています。