やっぱりアイデアラフはシャーペンで描くのが良い(使用シャーペンの紹介など)。 (original) (raw)
まあ、タイトルのとおりなんだけど、ラフ絵を描いたり、アイデアを練ったりするのには、鉛筆とかシャーペンが良いよねって話とか、シャーペンに対する僕なりの「愛」を語っていきたい(そこまでマニアではない)。
最近、僕が特に感じるのは、漫画・イラストを描いている人と、鉛筆・シャーペンとの相性が抜群に良いということであり、アナログで描いてるときの90%ぐらいはもはや鉛筆・シャーペンじゃね?・・・って気がしている。
一応、ミリペンとか万年筆も持ってるし、最近はブログでも頻繁に取り上げるぐらい万年筆&インク熱が高かったけど、デジタルで漫画を描いてる人間からすると、そんなに何本も要らねえなーという感じである。
というか、本番の作画をデジタルでやる限り、アナログでペン入れをするための画材は極論1本も必要なくて、現在3本ほど万年筆を所有しているけど、「プラチナカーボンインクの書き心地の良さ」「色彩雫の月夜の味わい深い青」を体験するためだけに、一応手元に取っている・・・というだけの気もする。絵を描く以外にも、万年筆の出番がちゃんとあるので、もちろん現時点では必要なんだけども。
要するに、僕みたいな奴からすると、本来投資すべきは「鉛筆・シャーペン」なんだろうと思う。フルデジタルで描いている人はともかく、「ネームまではアナログで描く」とか、「ラフ絵まではアナログで描く」といった「半アナログ派」の人であれば、必ず通るのが「鉛筆・シャーペン」なわけなので。
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んでもって、アナログ画材をほとんど所持していない僕が、一番最初にこだわったのは、実はシャーペンだった。
今から2〜3年ぐらい前に、人物クロッキーとかポーズ模写をやろうと思って、色々と調べたところ「製図用シャーペンが良い」ということを知ったからだった。
ちなみに、本来絵を描き始めた人が最初にオススメされるのは「鉛筆」である。シャーペンより鉛筆の方が表現の幅が大きく、色の濃淡も付けられるので、デッサン感覚を身につけるのに適しているからだ。
しかし、鉛筆はいちいち削らなければならないとか、濃さの違う鉛筆を何本も買い揃えないといけないとか、どうしても心理的ハードルが高く、僕は全く手を出さなかった。美術関係者の皆様ごめんなさい。僕は鉛筆デッサンとか全然興味無かったです(その当時はね)。
んで、意気揚々と文房具屋に「製図用シャーペン」を買いに行った。
僕は使い勝手が良い「0.5mm」が欲しいと思っていて、パーッとシャーペンコーナーを見渡したところ、グラフギア1000は「0.3mm」以外は全部売り切れていたので早々に除外。あと残っているのは、「グラフギア500」「グラフ1000」「SMASH」とか、たぶんそのあたりだったような気がする。
(ちなみに、ロットリングとか、ステッドラーとか、そういう海外製の製図用シャーペンは置いていない店だった)
ところが、何本か手に取ってみるものの、全然しっくりこない。確かにペン先が見やすいとか、グリップが握りやすいとか、安定感があるとか、普通のシャーペンとの違いは感じるものの、「絶対に製図用シャーペンでなければならない」とまでは思わなかった。何と言うか、「普通のシャーペンをちょっとだけ改良したもの」という印象を受けたのだ。
僕は「うーん・・・」と首を捻って、唯一売れ残っていたグラフギア1000の「0.3mm」を手に取ることにした。
手に握った瞬間、僕の手に電流が走る。
「なんじゃこりゃ」と。普通のシャーペンと全然違うやないかと。感覚的に物凄くしっくりときたのを覚えている。「これは買わねば」という使命感に駆られ、もはや太さなんてどうでも良くなっており、気づいたらグラフギア1000の「0.3」を買っていた。
今でも愛用しているお気に入りの1本。
いわゆる高重心(?)という設計で、ストンと自重で紙に落ちてくれる感覚があり、そんなに力を入れなくても、ササーッと綺麗な線が引ける。しばらくは、これでずーっと人物クロッキーなどをやっていた。
ちなみに、最初はHBを使っていたけど、僕の筆圧では薄すぎるので、今はBを使っている。というか、ぶっちゃけ2Bとか、もっと濃い芯でも良いと思っている。
ちなみに、「0.3はすぐに折れる」という人もいるが、僕は軽く持って、フワッと撫でるような描き方をしているせいか、芯が折れたことなんてほとんどない。たぶん、文字を書くのか、それとも絵を描くのかによって、だいぶ感想は変わってくるんだと思う。
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ただ、最近は0.3mmだけだと限界があるなーと感じるようになってきた。
こういう細い芯は、細かい描き込みには向いているものの、ざっくりとしたアタリを取るのには向いておらず、全体のバランスを取るのがどうしても難しくなる。やっぱり最初は太い線でざっくりとしたアタリを取る方がラクだし、アイデアラフ段階で描きたい絵はそういう絵なのだ。
ちなみに、僕の好きなイラストレーター・popman3580さんの画集「CITRUS」のイラストメイキングを読んでいると、下書き段階で使用している画材は「ステッドラー シャープペンシル 0.3mm」とある。
なので、0.3mmのシャーペンだけで絵を描けないわけではないが、僕の感覚的に、0.3mmを使うのであれば、「精密な下書き絵」を目指さないと綺麗な線にならないという感じがする。
また、一見すると細いシャーペンは、文字を書くのに向いているようにも思えるが、細い芯で文字を書くと紙をカリカリと引っ掻いている感覚があって、正直そこまで気持ちが良いとは思えなかった。たとえるならば、先がキンキンに尖っている鉛筆よりも、ちょっと丸くなった鉛筆の方が好き・・・みたいな感じ。
んで、色々と調べた結果、「シャーペンで絵を描きたいんだったら、細いものと太いものを2種類ぐらい用意した方が良いよ」ということを最近になって知る。いや気づくのおせーよ、という感じだと思うが、それぐらい僕がアナログ画材に興味関心を持っていなかったということである。
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じゃあ、何を買うかって話なんだけど、僕は「ステッドラー 925-25」というモデルの「0.9mm」と「2.0mm」を追加で購入することに決めた。たぶんステッドラーの製図用シャーペンの中では一番人気のあるモデルかと思う。
「なぜ、グラフギア1000で揃えるのではなく、ステッドラーを選んだのか?」
「なぜ、0.9mmと2.0mmなのか?」
・・・という疑問にお答えすると、あの井上雄彦先生がお使いになられているのが、「ステッドラー 925-25」の「0.9mm」と「2.0mm」だからである!
(すみません。むっちゃ詳しいフリをしてますが最近知りました・・・てへ)
あとーんす!ステッドラは2.0と0.9を使ってます RT @snyker999: @inouetake pepita買わせて頂きました!漫画では見れない先生の絵が沢山あって感無量 DVDも付いてて最高でした。 ステッドラーのシャーペンは何ミリをお使いで??
— 井上雄彦 Inoue Takehiko (@inouetake) 2011年12月12日
昔、テレビのドキュメンタリー番組(プロフェッショナルだったかな?)で井上先生の特集が組まれたときに、ステッドラー925-25をお使いになられていることが紹介され、業界内に知れ渡ることになった(らしい)。その影響もあるのか、やっぱりステッドラーを愛用している絵師は多い気がする。先ほどのpopman3580さん然り。
なお、ネットで調べると、井上先生が使われているのは「0.7mm」という説もあるが、上記のとおり、井上先生自身が「2.0と0.9を使ってます」と仰っているし、このステッドラー925-25には、「Limited Edition INOUE Ver.」という井上先生モデルがあり、その太さが0.9mmなので、たぶん僕の認識で間違いないと思う。
なお、ステッドラー925-25を選んだ理由は他にもあって、ほとんどグラフギア1000と重さや握り心地が変わらず、今までと同じ感覚で描けるからである。僕はやっぱりこういう重めの製図用シャーペンが好きだ。
また、実際に文房具屋に行って試し書きをしてみたところ、「0.9mm」は力の入れ具合で細い線から太い線、薄い線から濃い線まで自在に描けるという感覚があり、芯が太いこともあってか物凄い安定感を感じた。0.3mmはどう頑張っても細い線しか描けないが、0.9mmは基本的には太めなんだけど表現の幅があるというか。
「2.0mm」は、いわゆる「芯ホルダー」と同じく、鉛筆と同じ太さの黒鉛芯を使用するので、芯を尖らせて横面を使用すれば、鉛筆みたいに「塗る」ということもできる。ぶっちゃけ、「井上先生が使っているから買ってみた」という理由が大きいんだけども、調べてみると「2.0mmが一番使いやすい」という人もいて、まあここらへんは自分なりに使い分けを探ってみたい。
ちなみに、ひとつ余談として、この「925シリーズ」には、「925-35」というナイトブルーカラーのモデルもあって、1本ぐらいは925-35にしようか迷ったんだけど、製図用シャーペンは全部シルバーボディで揃えた方が見た目がカッコいいという結論に至り、どっちも「925-25」で揃えることにした。
実際に使ってみた感想などはまた後日。
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現時点で僕が考えている使い分けは以下のとおり。
- グラフギア1000 0.3mm:細かい描き込みをしたり、精密な下書きを描く場合に使用。また、方眼ルーズリーフにネームラフを描いたり、小さいラフ絵を描く場合にも使用することを想定している。
- ステッドラー 925 25 0.9mm:アイデアラフやイメージを描き殴るときにメインで使うことを想定。基本的には大きなアタリを取るために使うという感じ。
- ステッドラー 925 25 2.0mm:大きな文字を描く・塗るといった場面での使用を想定。「芯研器」の購入も検討中。
まあ、たぶん絵を描く人でもない限り、こんなに太さの違うシャーペンを買う人もいないだろうなーと思う。いやはや、次にハマるのはシャーペン沼か・・・。