寺嶋由芙が“ゆるキャラとの架け橋”に アイドルとしての「芯」を見せた代官山UNIT公演レポート (original) (raw)
アイドルとゆるキャラが同じステージに立つことで、代官山UNITが埋まるのだろうか? それが杞憂に過ぎなかったことを証明したのが、2015年12月6日に代官山UNITで開催された『寺嶋由芙 LIVE TOUR 2015「いーくーよ、ほいっ。」』の東京公演だった。
この日は2部公演で、第2部には、寺嶋由芙とともに「寺嶋由芙 with ゆるっふぃ~ず」名義でシングル『いやはや ふぃ~りんぐ』をリリースしたゆるキャラ10体が全員集合。そしてフロアも満員に。その結果、寺嶋由芙というアイドル、10体のゆるキャラ、熱気に満ちたアイドルオタク、歓声を上げるゆるキャラファンが同じライブハウスにいるという、見たこともないような空間を体験することになった。
それは言い換えると、寺嶋由芙というアイドルが、アイドルシーン全般に蔓延する“物語性”への依存を断ち切って、自分の趣味趣向をエンターテインメントに昇華した、極めて強度の高いステージを披露したとも言える。2015年2月8日に渋谷WWWで開催されたソロとして初のワンマンライブ『Yufu Terashima 1st Solo Live 「#Yufu Flight」』は、BiS脱退以降の彼女の軌跡の総決算をバンドとともに行ったものだった。そして、今回のセカンド・ワンマンライブは、ゆるキャラとともに楽しさを押し出すことによって、カオスすらもたらすものだった。それこそ「アイドルのライブでこんな光景はもう見ることがないだろう」と感じるようなシーンが何度もあったのだ。
ライブは、寺嶋由芙の2014年のソロ・デビュー・シングル「#ゆーふらいと」で幕を開けた。でんぱ組.incの夢眠ねむが、すべての後ろ盾を失くした時代の寺嶋由芙の姿を歌詞で描いた楽曲だ。作編曲のrionosは、その後の寺嶋由芙のシングル表題曲の多くを手掛けることになる。ソロ・デビュー後の寺嶋由芙のストーリーの幕開けを象徴する楽曲が「#ゆーふらいと」だ。あの頃<まだまだ ひとりきり / 戦わなきゃなの / 覚悟決めなくちゃ>と歌っていた寺嶋由芙が、今、ソロとして代官山UNITを埋めている。歌声も安定した声量とピッチだ。2本の指でハッシュタグをたどる振り付けの部分では、フロアの客電もつけられて、寺嶋由芙とともにハッシュタグをたどるファンたちを照らし出した。粋な演出である。
「初恋のシルエット」は、曲調はアイドル歌謡然としているが、GOOD BYE APRILによるギターポップなサウンドだ。「ふへへへへへへへ大作戦」は、2015年のメジャー・デビュー・シングル。大森靖子作詞、rionos作編曲による、80年代の松田聖子とナイアガラ・サウンドへのオマージュに満ちたミディアム・ナンバーだ。MCを挟んで、西浦謙助作詞、ハジメタル作編曲による80年代テイストの「ヒロインになりたい」へ。
そして、その日最大の熱気を生み出したのではないかと感じたのが、ふぇのたす時代のヤマモトショウが作詞作曲した「contrast」だ。ふだんのライブではあまり聴けない「レア曲」の部類だが、イントロが鳴っただけで寺嶋由芙が「湧きすぎでしょ!」と苦笑するほどの「うりゃおい」コールが沸き起こり、さらに寺嶋由芙が歌い出すとファンも一斉にそのポーズを真似るので、寺嶋由芙も笑いをこらえるのが大変そうだった。