映画「アイミタガイ」 (original) (raw)

休日の朝、TOHOシネマズ流山おおたかの森に行きました。


8時半ちょっと前の時間帯、ロビーにはけっこう多くのお客さんがいました。


この日の上映スケジュール。この日は合計27作品・29種類の上映が行われていました。

観るのは、「アイミタガイ」(11月1日(金)公開)。全国276館と大規模な公開です。


上映は、125+2席のスクリーン5。お客さんは15人ちょっとという感じでした。


(チラシの表裏)

2013年に刊行された中條ていの同名の連作短編集を原作に実写映画化された作品で、監督は草野翔吾、脚本は草野翔吾・市井昌秀佐々部清

公式サイトで紹介されている主な登場人物・キャストは、次のとおりです。

公式サイトのストーリーによれば、

見逃してしまいそうな微かなふれあいが繋がり、秘密の糸がほどけるとき、
思いもよらない幸せの歯車が動き出す

ウェディングプランナーとして働く梓(黒木華)のもとに、ある日突然届いたのは、親友の叶海(藤間爽子)が命を落としたという知らせだった。交際相手の澄人(中村蒼)との結婚に踏み出せず、生前の叶海と交わしていたトーク画面に、変わらずメッセージを送り続ける。同じ頃、叶海の両親の朋子(西田尚美)と優作(田口トモロヲ)は、とある児童養護施設から娘宛てのカードを受け取っていた。そして遺品のスマホには、溜まっていたメッセージの存在を知らせる新たな通知も。

一方、金婚式を担当することになった梓は、叔母の紹介でピアノ演奏を頼みに行ったこみち(草笛光子)の家で中学時代の記憶をふいに思い出す。叶海と二人で聴いたピアノの音色。大事なときに背中を押してくれたのはいつも叶海だった。梓は思わず送る。「叶海がいないと前に進めないよ」。その瞬間、読まれるはずのない送信済みのメッセージに一斉に既読がついて……。

「アイミタガイ」=「相身互い」
誰かを想ってしたことは、巡り巡って見知らぬ誰かをも救う。
誰の胸にも眠っている助け合いの心を呼び起こし、
何気ない毎日をやさしく照らす、
あたたかな物語が誕生した。

・・・というあらすじ。

親友を事故で亡くした若い女性を軸に、その周囲の人たちがそれぞれ抱えていた後ろ向きな気持ちから前向きに進んでいく姿を描いた群像劇。深く感動するという物語ではありませんでしたが、じんわり心が温まる作品でした。

群像劇でありながら、それぞれ別に描かれていたエピソードが絡み合い、パズルのピースのように、最後はカチッとはまっていく感じで、幾重にも張り巡らされた伏線が見事に回収されていく脚本の妙が際立つ作品でした。現実には、いくら世間は狭いといってもここまで密接に相互に絡み合っていることはまずないと思いますし、(未読ですが)原作の連作短編集はもっと緩やかな連関にとどまっているのだろうと想像しますが、それ自体は些細なところを結節点にして、それぞれの登場人物を巡るエピソードが結びつけられており、よく作り込まれた脚本だと感じました。

基本的に悪人は登場しないのは、賛否あるかもしれませんが、私自身はいたずらに心乱されることなく、本筋の物語に心を委ねて観ることができたので、個人的には良かったと思います。

以下はネタバレになりますが、自身の備忘も兼ねて、より詳しめにあらすじを記してみます。(個々のシーンが登場する時系列をはじめ、多少の記憶違いはあるだろうと思います。)

名古屋でウェディングプランナーとして働く梓。顧客と打合せをするが、新郎新婦の親は、結婚してない梓がプランナーであることに遠まわしに不満を漏らす。梓には澄人という恋人がいたが、梓は結婚はしないという約束を取り付けていた。

そんなある日、大阪でカメラマンをしている親友の叶海と桑名のレストランで会った梓。自身に結婚願望がなく、この職種が合っていないのではないかと漏らすが、叶海はそんな梓の弱音を一蹴して励まし、ボランティアで南国に行くと話す。

叶海と別れた梓は、電車に乗るため桑名駅の改札を入っていくが、それと入れ違いに、電車を降りた1人の男性が改札から出てくる。その男性は、叶海の父親で、叶海は、父親の帰りの電車がいつも一緒だったことで賭けに勝ったと言い、不在の間の郵便物は実家に転送してもらうことにしたことを伝え、そして父親にあることを勧めて別れる。

しかし、叶海は、出かけた南国で、乗っていた車の転落事故により命を落としてしまう。

中学生時代、両親の離婚で母親に引き取られ、桑名の中学校に転校してきた梓は、周囲になじめず、女子生徒からのイジメに遭ってしまうが、それを助けたのは叶海で、それ以来、叶海は梓の唯一無二の親友となっていた。また、写真を撮るのが好きだった叶海が梓を撮った写真が、写真雑誌のコンテストに入選して雑誌に掲載されたことが、叶海のカメラマンへの第一歩となっていたのだった。

親友を失った喪失感から立ち直れない梓は、叶海が亡くなった後も、そのLINEのアカウントに度々メッセージを送っていた。そのメッセージの着信に、遺品として叶海のスマホを受け取っていた母親が気づく。

一方、叶海の四十九日を終えた叶海の両親が自宅に帰ってくると、山梨県にある「サンシャインハウス」という児童養護施設の子どもたちからが書いたメッセージカードが届いていた。母親は質の悪いいたずらではないかと考えるが、父親は、その児童養護施設をネットで検索し、メッセージを送る。

すると、施設長の羽星が自宅を訪ねてくる。叶海は取材で施設を訪ねてきて以来、自ら撮った写真を持ってきたり、季節の折々にケーキや柏餅などを送ってきてくれていること、施設のトイレが叶海が撮った写真が叶海のギャラリーとなっていることなどを話し、一度来てみてはと誘う。

一方、梓の恋人の澄人は、叶海を失った喪失感から立ち直れない梓を見て、梓が前に進めるようになるために何かしなければと考えていた。澄人は、マスコミでも紹介される桑名で有名な宝石店を訪れ、先代の店主に店で一番高い指輪を出して見せてもらうが、120万円というその値段に尻込みし、5番目に高い指輪も見せてほしいとお願いするのだった。

そして、家事ヘルパーをしている梓の叔母は、新たに担当になった一人暮らしの93歳の老婦人の家を訪れる、最初は気難しい印象だった老婦人と徐々に打ち解けた叔母は、老婦人が3歳のころからフランス人の教師に付いてピアノを習っていたことを知る。

その話を梓にすると、結婚式場で企画・実施している金婚式でいつもピアノを弾いてもらっている高齢のピアニストが入院してしまい、代わりに高齢でピアノを弾ける人が必要になっていた梓は、その老婦人にお願いさせてもらうことにし、叔母とともに老婦人の家を訪ねる。老婦人は、フランス人の教師にピアノを習い、大きくなったらパリに留学する予定だったが、戦争が始まって教師は帰国してしまった、戦地に出征する兵士の壮行会で頼まれてピアノを弾いた、自分のピアノで同年代の若者を戦場に送ってしまった、自分は人前で弾く資格はない、と難色を示す。
それを聞いた梓は、自分が中学生のころに老婦人のピアノを聞いたことがある、と叶海と毎日18時に聞こえてくる老婦人のピアノを聞いていた思い出を話す。それを聞いた老婦人は動揺し、梓と叔母は老婦人の家をお暇するが、梓たちが帰った後、久しぶりにピアノと向かい、かつて弾いていた「家路」(Goin’ Home:ドヴォルザーク交響曲第9番新世界より」の第2楽章)を再び奏でる。

滋賀にある祖母の家に帰るという梓に時間を割いてもらって会った澄人は、指輪を見に行こうと誘うが、結婚を考えていない梓はそれを断り、祖母の家に帰るため桑名駅から電車に乗る。見送るはずだった澄人だが、突然ドアが閉まろうとする電車に飛び乗り、梓の祖母の家に一緒に行く。祖母の家で泊めてもらい、翌日一緒に戻った澄人は、下りた駅で、自分たちの名前を記入した婚姻届を差し出し、突然プロポーズする。戸惑う梓だが、返事を待っていていいよね、と尋ねる澄人に、うん、と答える。梓は、プロポーズされて逡巡する思いを叶海のLINEに送り、叶海の母親はそのメッセージを見る。

そして、叶海の両親は、途中で柏餅を買って、駅からタクシーで「サンシャインハウス」に向かう。父親が運転手の苗字が「車屋」であることに気づいて話しかけると、運転手は、以前に大阪でカメラマンをしている女性を施設まで乗せたことがあると話し、偶然の巡り合わせに、母親は涙し、父親も、叶海もここにいる、と空いている後列中央の席に手を置く。施設に到着し、柏餅を差し入れた両親は、施設長に叶海の撮った写真のギャラリーとなっているトイレを案内してもらう。壁に貼られた数々の写真を見て、2人はそれぞれ涙する。そして、改めて施設長と話をする両親は、叶海の死亡保険金として受け取った1000万円の小切手を差し出し、叶海が生きていれば受け取ることのなかったお金、自由に使ってほしいと申し出る。最初はそんなものを受け取ることはできないと固辞する施設長だったが、2人の強い思いに、それを受け取る。

一方、梓の依頼を受け入れ、ピアノを弾くことになった老婦人は、梓がプランナーを務める金婚式で、見事なピアノの演奏を披露する。

その帰り、澄人からいつもの場所で待っているとメッセージを受けた梓が、桑名駅で電車を降りると、ちょうど施設から帰ってきた叶海の両親と遭遇する。かつて叶海が送ってきた写真で、父親の顔を覚えていた梓は、2人に声を掛ける。母親は彼女が叶海のスマホにLINEでメッセージを送っていた梓であることに気づき、立ち話となる。話しているうちに、梓は思いがこみ上げてきて涙する。

立ち話で時間が過ぎてしまい、叶海の両親と別れて澄人との待ち合わせ場所に向かう梓がスマホを見ると、叶海から「行っちゃえ!」とメッセージが入っていた。その言葉に背中を押されるように走り、待ち合わせ場所で澄人と会った梓は、澄人のプロポーズを受け入れる。

そして、2人が指輪を見に行こうとかつて澄人が訪れた宝石店を訪ねると、お店は休みだった。またタイミングが悪いと思った2人だったが、ちょうどそこに、寝入った孫をおんぶした先代店主が帰ってくる。先代店主と孫は、梓がプランナーとして担当していた金婚式に出席しており、孫の手には、金婚式を挙げた夫婦の食品サンプル会社の製品で、金婚式の引出物として配られたモンキーバナナが握りしめられていた。先代店主は急いでお店を開けてくれ、2人は指輪を見るために店に入るのだった。

(ここまで)

上記には書きませんでしたが、澄人が通勤帰りにいつも乗る電車に乗っている叶海の父親に見覚えがあり、いつも桑名駅で降りるはずその男性が寝入って寝過ごしそうになっているのを見かねて、読んでいた本を偶然落としたと装って起こしてあげて、それで父親がいつもの時間どおりに駅を降りることができ、梓と賭けをしていた叶海と会うことができた、といったところまで、よく作り込まれている作品でした。