伊是名氏ニッコリ 社民党が援護「暇な人たち」 | 令和電子瓦版 (original) (raw)

The following two tabs change content below.

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

コラムニストの伊是名夏子氏が車椅子ユーザーが利用できないJR来宮(きのみや)駅まで駅員4人を動員させ批判が集まっている問題で、社民党が10日、YouTubeで緊急配信を行った。ユーザーからのコメントを受け付けず、出演者が伊是名氏を全面的に擁護し、批判する人々を「暇な人たち」、「教えてもあげても聞かない」とする刺激的な90分。伊是名氏は満面の笑みで同じ障害を持つ人々に連帯を呼びかけた。この内容に、さらに世間の反発が強まることが予想される。

■出演は5人、目的の正当性ばかりを主張

写真はイメージ

配信は社民党 Official You Tube Channelで行われ、タイトルは「【緊急配信】誰もが行きたい時に行きたい場所へ~声をあげることの大切さ~」。出演は以下の5名(肩書きは番組に準ずる)。

安積遊歩(ピアカウンセラー)

石川優実(女優・グラビアアイドル)

伊是名夏子(コラムニスト・社民党全国連合常任幹事)

下地真樹(阪南大学経済学部准教授)

(MC)大椿ゆうこ(社民党副党首)

配信はおよそ1時間30分。MCの大椿氏を含め出演した4人が伊是名氏擁護に終始した。その論理構成が4人ともほぼ同じと言ってよく、国民の怒りを無視する形と言っていい。今回の問題については何が世間から批判を受けているかについては、既に記事にした(参照:東ちづるさん”燃料投下” こうすれば良かった…)。一連の問題を実体と手続き、目的と手段で分けて考えると以下のようになる。

①目的:駅のバリアフリーは依然として進んでいない(障害者は差別されている)点を解消

②手段:無人駅に乗り込み、駅員を動員させて問題の存在を世間に示す

多くの人が①を問題にしておらず、②について怒っていると思われる。ところが出演した4人は、①の正当性を主張するばかり。伊是名氏が批判されている②については、ほとんど言及していない。東ちづる氏の擁護ツイートとほぼ同じ論理構成で、分かりやすく言えば「目的が正しいから、手段はどのようなものでもいい」というもの。

通常の配信ではユーザーからのコメントを受け付けて双方向性を担保しているが、今回に限りコメントは受け付けないとした時点で、国民の声に真摯に向き合う気があるのか疑問が残る。

■石川優実氏「教えてあげても聞かず…」

皆さん、そんなにおかしいですか?(社民党 Official You Tube Channel 画面から)

目的が正当なら、手段を選ばないという議論を前面に押し出したのが安積氏。自身が障害者で、車椅子利用者のために駅にエレベーターを設置する運動をしていたという。それをもって、障害者は健常者に優先するという思想を持っているようである。

安積:自分たちが(運動をした結果で、エレベーターを)つけてきたと思っているから、あまりにも長い列の前で、じっと後ろの方で待っていることはしません。前に回って、急いでいるときは「これ私たちがつけてきたので、私を優先させてください」と、「優先的に乗りますから」と言って、一番最初に乗ります。じゃなかったら、あの命懸けの日々に対する自分への感謝、周りの人への感謝がなさすぎですよ。

これにとどまらず、安積氏は伊是名氏を批判する人たちを痛烈に批判する。

安積:暇な人たちが、よく考えられずに想像力が本当に不足して、なっちゃんのブログにケチをつけているんだと思いましたけど。とても悲しい時代だなと思います。

上記のように問題提起をするために声をあげたという伊是名氏を擁護している。自らが平然と社会のルールを無視する行為を行っていたことを根拠に、伊是名氏を批判する人たちを暇人呼ばわりしての擁護論にどれだけの人が納得してくれると考えているのか。そうした点については全く想像力が及ばない人のようである。贔屓の引き倒しという言葉がこれほど当てはまる例はそうそうない。

石川氏は話している途中に感極まる場面があるなど、かなり感情的になっていた。

石川:(伊是名氏への一連の批判を見て)ここまでこの国は差別の問題について、理解が進んでいないんだなっていうのにびっくりしたのが私の印象でした。差別が何かっていうのを全然分かっていない人たちがたくさんいるんだな…。こんなふうに、(伊是名氏に)ひどい言葉を投げつけて…こうやって足を引っ張って、何がしたいのかなというのが正直な感想です。障害者差別の運動をしてきた人たちがどういうふうにやってきて、どんなに戦って今があるのかっていうことも全く振り返らず、教えてあげても聞かず…。こうやって声をあげた人がいた時に足を引っ張ってということが本当に腹立たしいな、と思って…。

①の目的に正当性があるため、それに反対する動きはすべて「足を引っ張る」と考えているようであり、伊是名氏を批判する人たちに対して啓蒙が必要であるかのような発言。これまた、多くの怒れる国民を挑発するかのような内容である。

■伊是名氏は「最大限丁寧にやった」という准教授

下地氏もほぼ同様の論理構成で、過去に運動をした人の結果が今につながっており、伊是名氏の行動を評価する立場を明らかにした。もっとも同氏は来宮(きのみや)駅を「くるみや」と発音しており、現場で発生した問題についてはあまり下調べをした様子はなく、目的の正当性にばかり目が向いていることを思わせた。ただし、②の点については、少しであるが言及した。

下地:その(伊是名氏の)やり方が賛成できないと言っている人もいるようですが、僕からすると、安積さんの話にもありましたけど、時代が時代だったら「そんな丁寧な態度だから舐められるんだ」という怒られかねないぐらいの…まあ、荒っぽくやった方がいいとは言わないですけど、考えられる限り最大限丁寧に、やられているという感じなんですけど。これでやり方がどうこうというのはそもそもおかしいだろうと思いますね。

伊是名氏が最大限丁寧にやったのかどうか、かなり激しい口調であったというツイートも目にするが、その点はとりあえず措くとする。大事なことは、国民の多くはバスやタクシーが利用できたのにそれを調べようともせず、JRに法的な義務はないのに過剰なサービスを実施するように求め、実施させたことに怒っているという点。それを応対の際の丁寧さだけを強調することで(その事実自体も疑わしいが)、②の手段も適切であったとしているのであるから、批判に対して全く反論になっていない。

■空腹の子供と盗んだパン 社民党編

東ちづる氏の記事を書いた際に空腹の子供と盗んだパンの話をした。それをもう一度、今回の場合に当てはめて使おう。

伊是名氏:お腹をすかせている子供がいるから、スーパーでパンを盗んで分け与えた。

安積氏:お腹をすかせている子供がパンを食べられるようになるために尽力してきた。だから、子供のためにスーパーでパンを盗んでも許される。暇な人たちが盗んだ私を批判している。

石川氏:子供がお腹をすかせている状況こそが大事な問題なのに、パンをどのように手にしたかだけを問題にする人ばかりなのが信じられない。日本は、そのレベル? 私が、それはおかしいと教えてあげても、多くの人は聞かない。

下地氏:お腹をすかせている子供がいるから、スーパーでパンを盗んで分け与えた。盗む際に「もらっていきますね」と最大限丁寧に言ってるのに、批判するのはおかしい。

これに対して、多くの国民はこう言いたいと考える。

多数の国民:子供がお腹をすかせている状況は問題だが、だからといってパンを盗むな。貯金をおろしたり、消費者金融で借りたりして、パンを買え。それができたのに、他の方法を調べようともせずに盗んだことが許せない。

笑みを浮かべる伊是名夏子氏(社民党 Official You Tube Channel 画面から)

社民党が今回、唯一正しい判断をしたと言えるのは、コメントを受け付けなかったことであろう。もし、コメント欄を開放していたら、見るも無残な結果となっていたと思われる。

最後に発言を求められた伊是名氏は、満面の笑みをたたえ、「思いがいっぱいなんですけど」と感極まった様子。「声をあげることが全てではないですが、声もあげる方法もあるよってことはまず一つ、伝えたいなぁって思います」と話し、MCの大椿氏を含め4人からのエールを受けて、自分の行動が正しいということを再認識した様子。

障害を持つ人から批判を受けたことについて辛かったとしながらも「最後に障害のある人へのメッセージも付け加えて、繋がっていきましょうというのを伝えたいです」と締め括った。

世間の常識とは無縁の場所に住んでいるであろう人たちの話を90分間聴いた感想を言えば、たった一言「クレイジー」である。

■「伊是名氏は間違っている」と声をあげ続けよう

伊是名氏を含め、出演した人々は声をあげ続けることの重要性を口にした。そう考えるのは勝手であり、どうぞお好きにと言うしかない。

それならば僕も声をあげ続けようではないか。「伊是名氏の行動は間違っている」と。ユーザーのコメントをブロックし、聞く耳をもたない伊是名氏と社民党に対して正義の声をあげ続けることが、僕に求められている責務と信じる。