仏女優 アヌーク・エーメさん死去 (original) (raw)

フランスを代表する女優

甘い生活『男と女』などの映画で知られたフランス女優のアヌーク・エーメさんが、18日にパリの自宅で亡くなったことが伝えられた。92歳没。

50~60年代にフランスを代表する女優として活躍。その美貌とアンニュイな雰囲気、ファム・ファタールな魅力で世界的人気を博した。

俳優である娘のマヌエラ・パパタキスさんは、自身のSNSで「母アヌーク・エーメの旅立ちをお知らせすることに大きな悲しみを感じています。母がパリの自宅で今朝亡くなったとき、私はすぐそばで見守っていました」とコメントを発表している。

フェリーニ監督の名作に出演

アヌーク・エーメさんは1932年生まれのパリ出身。本名はフランソワーズ・ソリア・ドレイファス。両親はともにユダヤ系の舞台俳優だった。

14歳のとき、際立つ美貌で映画界にスカウトされ、アンリ・カレフ監督の『密会』(47年)で映画デビュー。その時の役名であった “アヌーク” を芸名とする。

同じ年にはフランスの巨匠、マルセル・カルネ監督『花の年頃』の主役に抜擢されるが、映画は未完成に終わってしまう。この映画の脚本を担当した詩人のジャック・プレヴェールから “エーメ”(最愛の人)を名乗るよう提案され、「アヌーク・エーメ」の芸名となった。

そのあとイギリスに渡って中等教育を受け、演劇学校にも通う。49年には「ロミオとジュリエット」をモチーフとした『火の接吻』(アンドレ・カイヤット監督)で主役を演じ、その美貌で一躍人気を博す。

58年にはジェラール・フィリップと共演した『モンパルナスの灯』が評判を呼び、トップスターの地位を確立した。

また国内だけでなく、イタリア、イギリス、アメリカ、スペイン、ドイツと国際的に活躍。60年には名匠フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』に出演。アンニュイな女性を魅力的に演じ、強い印象を残す。63年にも同監督の名作『8 2/1』(イタリア・フランス合作)に出演している。

『男と女』の成功

そんな彼女の代表作となったのが、66年のフランス映画『男と女』である。クロード・ルルーシュ監督(当時29歳)のオシャレな演出とフランシス・レイによる甘美な音楽が、中年にさしかかった男女の恋物語にエモーションを呼び、カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞。日本などでもヒットを記録し、世界的な成功を収めた。

そして成熟した女性の愛情を高い演技力で表現したエーメは、ゴールデングローブ賞の女優賞と英国アカデミー賞の外国女優賞を受賞。米アカデミー賞の主演女優賞にもノミネートされている。

80年にはイタリア映画『Salto nel vuoto(暗闇の中の跳躍)』でカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞。このあと80歳半ばを過ぎるまで俳優活動を続け、2019年の『男と女 人生最良の日々』(クロード・ルルーシュ監督)が遺作となった。

また今年2月には、『男と女』で共演したジャン=ルイ・トランティニャンさんも帰らぬ人(91歳没)となっている。