修論発表チェックリスト (original) (raw)

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研究室内ブログに書いてある内容から転載。こうやってみると実にあたりまえのことしか書いてないですが、「アタリマエのことをきっちりこなせる人」を世間では出来る人というみたいです。

修論発表Last Minute check

以下は主に工学系の修論発表(卒論発表)を想定しています。比較的オーソドックスな「発表の型」について説明してあります。

  1. 基本ストーリーを明確に。(1) メインクレームは何(この研究は一言でいうと何をした)? (2) なぜそれをやる価値があるのか? (3) 既存研究とはどこが違うのか(いままで解決できなかったどんな問題を解決するのか) (4) 具体的にはどんなもの? / 本当にうまくできた?(評価) (5) 修論までの計画 (中間発表の場合) がわかるように。以下のプレゼンテーション技法はそれが前提。
  2. 時間に厳密に。自己リハーサルしてきっちり規定時間で終われるように練習する(リハにはストップウォッチ必須)。後半に時間が足りなくなってスライドを飛ばすのは見苦しいし、練習してない感がただよう。逆に時間が妙に余って終わってしまうのも寂しい。最後のスライドは、最悪「表示して即終了」でも成り立つもの、たとえば業績一覧やコントリビューションまとめが望ましい。
  3. 発表原稿を書く。時間に厳密になるためにも、母国語であっても発表原稿を書いたほうがよい。暗記する必要はないが、話す内容やロジックにぶれがでないようするためにも必要。
  4. 発表スタイルはオーソドックスで構わない。学会発表ではインパクト重視で変化球的なプレゼンをあえてする場合もあるが、修士では基本重視。研究モチベーション、問題設定、関連研究との差、新規性や効果、がきっちりわかるように。
  5. How < What < Why。Howは比較的説明しやすいが、What が重要で、さらにWhy(なぜこの研究が重要なのか、なぜこの課題に取り組んだか、なぜこの解決法がいいと思っているのか)の説明が最も重要(かつむずかしい)。Whyがわかるように全体を構成すべき。唐突に「このシステムはこういう構成で、こう動作してます..」と言われても、なぜそのシステムが必要なのかが聴衆に共有されていないと聴いてもらえない。
  6. 話をふったらかならず決着させる。「***が問題」とふったら「結局それはこう解決された」と落とし前をつけなければならない。この対応関係が見えないと、「結局何がいいたいのかわからない」ということになる。
  7. 基本的なミスを犯さない。用語を定義せずに使う、グラフに単位がない、グラフのエラーバーが変だったり、と、理系教官ならだれでも指摘したくなるミスがあると研究態度そのものを疑われる。(中学校の理科社会で習ったことが出来てないとね!)。
  8. 用語に注意。専門用語・略語は、聞き手が普段慣れていない分野のものはなるべく使わない。そうでない場合でも、初出のときに定義をしっかりすると同時に、途中のスライドでも適宜補う。また用法が統一されておらず用語の使い方がぶれているのも気になる(同じシステムを、「遠隔コミュニケーションシステム」、と呼んだすぐあとで「テレプレゼンスシステム」、と言うなど)。
  9. 用語を正しく言えるように。「シュミレーション」とか「オーギュメンティッド」とか、カタカナ用語としてもおかしい。
  10. 自分だけわかっていないように。聞き手はこの研究の話を初めて聞くのかもしれない。一方発表者はほとんど二年近くその研究に従事している。この落差を意識する。注意して説明しないと、重要な前提条件を飛ばしてしまう。
  11. 結論を導くときに特に注意。「***とわかりました」と言う場合にはその根拠が必要。それぞれの教員の専門は異なっても、論理的に思考することについてはエキスパートである。安易な結論づけやロジックの飛躍がとても気になる。
  12. とはいっても自分のコントリビューションは充分主張。どのスライドが自分の研究なのか、が遠慮しすぎているとわからなくなる。自分オリジナルなところは明確に。「本研究の提案」などタイトルにもはっきり書く。どのスライドが「大事」なのかわかるように視覚的にもメリハリをつける。発表のクライマックスがどこなのかがわかるように。
  13. 大事なところ、聞き落としてもらいたくないところは必ずスライドに書き、口頭でも強調する。どっちかだけだと見落とされる。
  14. 同時に「ここは頑張った」「大変だった」(さらにいえば「でも面白かった」) というところもアピールする。修論は純粋な研究だけでなく教育(訓練)の側面も大きいので、頑張りアピールには意味がある。
  15. スライド一枚の情報量を適切に。字を詰め込みすぎても読んでもらえないが、あまりスカスカ(ジョブズのキーノートプレゼンのような)ではスライドの枚数が増えてしまう。ジョブズ型スライドは学術発表にはかならずしも適していない(とくに修論発表には)。
  16. 列挙する項目数は3が原則:何かを指摘するときは3項目にまとめると理解されやすい。「提案手法の特徴」「従来問題まとめ」「将来課題」などで列挙する項目。発表では3がマジックナンバー
  17. スライド上での視線移動が自然になるように。普通は上から下。上から順に「タイトル・結論・グラフ」と並べたスライドを作っている人がいたが、グラフを解釈した後に「結論」がくるべきなので、この順だと結論に目がいかない。印象づけたいなら、「結論」を非可視にしておいて、最後にグラフのところに出す。(アニメーションはビジュアルエフェクトとしてではなく、一度に出す情報量を調整して聴衆のアテンションを誘導するために使う)
  18. 目次スライドは不要。「最初に背景を述べて、次に関連研究を説明し、次に本手法について説明します。次に評価について述べて..」たいていそうなのでいちいち聞きたくない。
  19. 動画を再生しているときに、カーソルをその上に載せたままで平気でいないこと。
  20. バックアップスライドを用意する。発表時間の制約上省略した詳細情報や、想定される質問への答え、関連研究情報などをあらかじめ準備しておき、質疑に備える。
  21. スライドにはページ番号をつける。質疑の際にページ番号を参照してもらえるように。
  22. 配布資料を用意する(修論発表の場合)。質疑の際にスライドを参照して質問してもらえる。
  23. 不必要に固い表現は不要。「**を発表させていただきます」→「発表します」。学会と同じで、学問を追求するという立場では学生も教員も同列。無理に丁寧すぎる言い回しでぎこちなくなるよりは、通常の「です。ます」で充分。
  24. 質疑でまず大事なのは聞かれた質問を正しく理解すること。聞かれたことと見当はずれのことを答えないように。そして「発表の内容が充分理解されていない・誤解されている」のか「発表を理解した上での質問・指摘」なのかを把握する。必要なら「***という質問でしょうか」と確認する(その間にどう答えるか考える)。反論すべきところは自信をもって反論し、補足説明すべきところもしっかり説明する(単に教員が理解していない場合もあるので)。
  25. 聞かれたことに答える。あたりまえのようだが質問に答えていない返答は多い。例:「評価実験の参加者は何人でしたか?」「ええと、システムの作成に予想以上に時間がかかり、評価の時間が..」言い訳から入るのではなく、「5人でした」とまず答える。その後に補足なり言い訳なりを言う。同様に、YES/NOで答えられる質問はまずそう答える。
  26. 「理科系の作文技術」には口頭発表のことも書いてある。上に書いたこともだいたい網羅されている。

以上です。審査教員も、面白くてワクワクする話を聞きたいと思っているので、ぜひ頑張って下さい。

References