Selct Classic(13)~J.S.バッハ:半音階幻想曲BWV.903 (original) (raw)
この半音階幻想曲とフーガ ニ短調 BWV.903は1,100近くある作品のうち自筆譜が存在せず、正確な作曲年代も判明していません。
一応、1717年頃のワイマール時代もしくはケーテン時代(1717年~1723年)に作曲され、1730年頃に改訂が加えられたということになっています。
この曲にはいかにもバッハらしいガッチリとした構築力で真面目な姿をした音楽と、後のヴィルトゥオーゾ的な音楽の先駆けみたいなものと共に、力強い意志も感じるところに魅力があると思います。
作品は「幻想曲」と「フーガ」のふたつの部分から成ります。
「幻想曲」の部分は既に後世の曲を知ってしまっているからかもしれませんが、疾風怒濤期といわれる時代のバッハ・ジュニア(特にフリーデマンとカール・フィリップ)やハイドン、もっと新しい時代ではベートーヴェンのピアノ・ソナタなどにも影響を与えているように思います。
「フーガ」はバッハの代名詞、キッチリと構築された音が織り成す高い次元の音楽が形成されていきます。曲後半になるとききてに一段と集中力を要求する空気になります。
そして、この曲からは、雪が少ない地方に住んでいる方は実感しにくいと思いますが、冬の風の強い日に遮蔽物の無い平地を、ゴーゴーと音をたてながら巻き上げた雪がこちらに向かってくる風景が重なり、この寒さがいちばん厳しい時期にフト思い出す曲です。
【Disc】
弾き応え&きき応えある曲なので昔から多くの名手が手掛けており、ランドフスカの初期古楽器演奏家、フィッシャー、ケンプ、それからブレンデルやシフなど、古楽器系ではヴァルヒャにはじまりレオンハルト、ピノック、シュタイアーなどの録音があります。
意外にもグールドの録音は耳にも目にした事がありません。
私が最初にきいたのはカール・リヒターです。オリジナル楽器愛好家からはとかく評判の悪いヴァルヒャと同様にモダン・チェンバロによるものですが、かき鳴らされるが如く弾かれる音に体と脳が刺激される緊迫感がイイです。
もうひとつおすすめが、注目すべき若手の優秀なピアニストが沢山最近出てきていますが、そのおひとり亀井聖矢さん。
是非YouTubeの動画を観てください。
ピリオド奏法も学習(意識)されている事を感じる、ピアノによる現代的な表現方法の演奏をきくと中途半端にチェンバロで弾いた演奏よりも発見があります。
他にも皆様のおススメ演奏があればコメント等をお願いいたします。