完聴記~アーノンクール/ロイヤル・コンセルトヘボウBOX⑩ (original) (raw)

今週はアーノンクールロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団による未発表放送録音集の完聴記シリーズの最終回、Vol.10(CD15)の投稿となります。

曲目・演奏家・録音データは以下の通りです。

CD15

メンデルスゾーン真夏の夜の夢 Op.21&61

ソプラノ:ユリア・クライター(ソプラノ)

アルト:エリーザベト・フォン・マグヌス(アルト)

ナレーターゲルト・ベックマン(ナレーター)

オランダ室内合唱団(合唱指揮:クラース・ストック)

録音時期:2009年4月26日 アムステルダム、コンセルトヘボウ

1990年代初頭にもヨーロッパ室内管弦楽団とライヴ録音しています。その時も恐らく今回と同様にナレーター付きの劇音楽として演奏したと思われますが、収録時間の関係でしょう、主要楽曲の抜粋盤でした。このディスクではたっぷり約82分弱に収まった完全全曲です。恐らくアーノンクールさんもこの作品はこのように劇音楽として演奏することが真正と考えていたと思います。

序曲から今まできいたことの無いフレージングとバランスです。フォルテでも旧盤では―オーケストラ違いはありますが、もっと鋭く、いかにも古楽器奏法に基づくアーノンクール節が効いたある意味アクの強いモノでした―しかし、ここではとても柔らかく、フワッとした金管の音色が布生地をパッと広げたような感じです。

終結部もメルヘンチックで静かで繊細なニュアンスに魅かれます。

対向配置の弦楽器の効果はスケルツォの上下降音型をはじめ、楽曲と劇の進行においても臨場感が伝わってきます。

第3曲はテンポを遅めにとり、劇の歌と合唱の楽曲として表現しているのも個性的です。これはワルツが舞台上で演奏されるときとコンサートで演奏されるスタイルと異なるといわれることと通じるのでしょうか?その辺の知識が皆無なのですが。

意図して演奏しているのでしょうか?ノットゥルノの冒頭3連音はベートーヴェン交響曲第5番第1楽章冒頭主題へのオマージュのような印象を受けました。蛇足ながら、「結婚行進曲」のあの有名な金管の冒頭のファンファーレは後年、マーラー交響曲第5番第1楽章冒頭のトランペット吹奏のメロディーにモチーフとしても借用しているといわれていますね。

そういった有名なメロディーだけではなく、今回初めて耳にした楽曲も登場してきて発見もありました。

歌手をはじめ、ナレーターたちも多面的な表現力でオーケストラとの掛け合いがよくて、もちろんアーノンクールさんの引き締まった演奏とも合致し、この長い劇音楽を飽きさせずに楽しませてくれます(とかくこういった劇音楽は中弛み的な演奏に出会うこともありますが)

ただし、私にもっと語学力があればもっと情景を思い浮かべながらきけるのですが。。。また、映像でも残されていたら、とも思いました。ブックレットが付随していないのでテキストを追うこともできないのが残念です。

また、テキストには追加などがあるのでしょうか?ストーリーテラーによるものかもテキストが無いのでわかりません。会場の雰囲気からすると笑い声もきこえてくるので、楽しませる舞台になっているようです。

アーノンクールさんも喋っているのでは?と思うところがあります。トラック8で彼特有のしわがれた、しかし圧のある声がきこえてきます。

序曲のメロディーに基づく終曲も素晴らしいです。合唱やオーケストラの静けさを伴いつつ空中に消えていく響きから儚さや寂しさを感じ、友達と遊んだあと日が傾く中、ひとりで家路に帰った小さい頃に見た景色が浮かんできます。

アーノンクールさん死後も未発表だったライヴ音源などが発売されているので、まだドイツやオーストリアなどの放送局などに残っていれば今後の登場に期待したいです。できれば再録音が無い作品を。個人的には最後の来日公演になったバッハのロ短調ミサ曲を商業リリース化して欲しいです。マタイとヨハネは再録音がありますが、この作品は再録音がないので。NHKさん、是非とも利権者と交渉をお願いします。一番の利権者と思われるアリス夫人も2022年にお亡くなりになっていますので、子供とか孫でしょうか?そのお孫さんのおひとりはBMGに録音したモーツァルトの初期交響曲集に付いていた、父子の手紙朗読CDでウォルフガングの手紙を朗読していた事を思い出しました(アーノンクールさんはレオポルドの手紙を朗読)

以上、CD全15枚組のボックスセット完聴記シリーズの完結編でした。

お付き合いいただきありがとうございました。他にも手付かずのボックス物がありますので改めて投稿をしていきたいと思います。またお付き合いいただければ幸いです。