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2024年10月15日 金正恩が国防・安全分野協議会を招集したことを報道
本日の「労働新聞」は、金正恩が10月14日、「国防・安全分野に関する協議会を招集」したことを報じた。同協議会の概況は、次のとおりである。
- 出席者(写真では金正恩含め10人):努光鉄国防相、趙春龍党秘書、李永吉総参謀長、李創浩副総参謀長兼偵察総局長、李昌大国家保衛相、朝鮮人民軍総参謀部の砲兵局と探知・電子戦局をはじめとする主要局の指揮官
- 報告内容:①敵の厳重な共和国主権侵犯挑発事件に関する総合分析報告(偵察総局長)、②対応軍事行動計画に関する報告(総参謀長)、③軍事技術装備現代化対策に関する報告(国防相)、④武力装備生産実績に関する報告(党軍需工業担当秘書)、⑤情報作戦状況に関する報告(国家保衛相)
- 金正恩指示事項等:各報告に対する「評価と結論を下した」、「総参謀部が行った当該の活動内容と主要連合部隊の動員準備状態に関する報告を聴取し、当面の軍事活動方向を示す中で、国の主権と安全利益を守るための戦争抑止力の稼働と自衛権の行使において堅持すべき重要な課題を明らかにした」、「我が党と共和国政府の強硬な政治軍事的立場を表明した」
また、本日の「労働新聞」は、同協議会に関する記事に続けて、「滅敵の意志を込めて党決定貫徹に一層拍車を!」との共通題目の下、「無人機」への怒りをばねに増産に取り組む各部門生産現場の状況を報じる次のような記事を掲載した。
- 「石炭増産で無慈悲な懲罰を 順川地区青年炭鉱連合企業所にて」
- 「吹きあがる憤怒を最大の奮発へ 興南肥料連合企業所にて」
- 「農事結束を推し進める 配天郡で脱穀早い速度で推進、70%を超えた」
- 「生産的高揚の火の手をより高く 祥元セメント連合企業所」
- 「増産闘争を力強く展開している茂山鉱山連合企業所労働階級」
なお、これに先立つ14日、金予正は、「無人機」に関し3回目となる短文の談話を発表したが、同談話は、本日付け「労働新聞」には掲載されていない。同「談話」は、全文次のとおりである。
- 「我々は、平壌無人機事件の主犯が大韓民国の軍部のくずであるということを明白に知っている。核保有国の主権が米国の奴らが手なずけた雑種の犬によって侵害されたなら、糞犬を飼った主人が責任を負うべきであろう」
上記動向の内、金正恩による評議会招集は、「無人機」に関する対策を実際に論じるためというよりは、事態を重大視していることを内外に印象つけるための演出の側面が濃いように感じられる。最初の公開動向である「重大声明」が外務省から出されたにもかかわらず外務相の出席がないことからも、同評議会が実質的なものではないことがうかがわれる。
「労働新聞」の一連の記事は、北朝鮮が同件を国内的な思想宣伝の格好の材料として大いに活用しようとしていることを改めて示すものといえる。
一方、金予正の3回目談話は、当初の軍は「主犯又は共犯」との主張とは矛盾するものとも言え、何故、この時期にそのような主張を、しかも何の論拠もしめすことなく打ち出したのかは不可解である。前掲「評議会」での審議内容と関連している可能性も考えられるが、判然としない。
ただ、いずれにせよ、同談話の本当の狙いは、米国に対して、本件に関心を持ち、危機管理(状況鎮静化)に乗り出してほしいとの訴えのように思われる。俗な表現を用いれば、「お宅の馬鹿息子を何とかしてよ」ということであろう。
そうは言っても、金正恩が自ら「強硬な政治軍事的な立場を表明」した以上、当分の間、事態はそう簡単には収まらないであろう。