ポケモン (original) (raw)

目覚めた俺は、どうやら異世界転生してしまったみたいだ。

「痛い痛い痛ーい!」

何かが体の下で騒いでいる。目覚めた俺は、ここがどこなのかも分からずキョトンとする。

(え…ここ、どこ?)

「…どけよ!どけったら!」俺の下で下敷きになった何かは、俺の背中を激しくどつく。仕方なく、よっこいしょ、と体を起こすと、下の何かは勢いよく俺の目の前に飛び出してきた。

「おい!お前!人が眠ってるところに、ぶつかってきたら、まず言うことあるだろ!」
「え…あのさ、ここどこ」
「…」
「ごめんなさいだろ!人のいうこと聞けよ!」
「ごめん」とにかく謝った方が良さそうなので、俺は謝罪を口にする。「人、人っていうけど、あんたほんとに人?」目の前で腹を立てているやつを観察してみると、小型のぬいぐるみみたいだった。動物のような耳が生え、だがついてる顔は人間のようだ。しっぽも生え、体は、ふさふさと茶色の毛に覆われている。
(言葉が通じるってことは人間なのかな…)俺は、自分の置かれている状況を理解する前に、この生き物が何なのか、しばし考えにふけってしまった。
「着ぐるみ…?」
「何だ、それ」着ぐるみは不服そうだ。「…フフン、お前、俺のこと知らないな?」(知るわけないよ…)「そうだなぁ、じゃ、お前俺が何に見える?」え、じっくり見てみると、眉が極端に短くて、体はコロコロしてる。
「…タヌキ?」
「な…!」瞬時に俺の言葉を理解したのか、タヌキが真っ赤な顔になる。
(コロコロ表情変わる…)
「ライオンだよ!」
「へー」
「おっまえなぁ…!」
「それは、いいからさ、ここがどこか教えてよ」
やっと自分の悩みの情報を考えることにシフトする。
「お前な!…プリムラ王国だよ」おうこく…王国かぁ…
「やっぱり、知らない」
「お前、一体何なんだよ」
「俺、日本ていう所から来たんだ」一応言ってみてアホらしくなった。「…おっまえ、もしかしてマスターか!?」タヌキの顔が異様に輝き、俺の鼻先まで顔を近付けてくる。
「ますたー?」今度も謎だらけの展開だ。
「まどろっこしいな!お前、マスターってのはな、俺らみたいな封印されたモンスターの封印を解いて、所有するんだ。そして、その契約の代わりにモンスターの望みを何でも一つ叶えてくれる特殊な人間のことなんだよ!」「…」「無言かよ!」「モンスター?契約?そんなの俺知らんし…」しかし、タヌキは、そんなのお構いなしなようで、短い手?で俺の肩をポンと叩く。「実際、俺の封印を解いたんだしな!うん、気に入った!お前を俺のマスターに任命する!」「えぇ…」わけが分からない上に、俺の苦手な面倒なことになってきた。「大体お前、そのニホンてところから来て、今困ってんだろ?それは、おいおい俺が解決してやる。代わりに、お前は、俺の望みを叶えてくれ」はぁ…、と間の抜けた返事が俺の口から出る。ふと、気になって、タヌキに聞いてみる。「あんたの望みって何」俺のここでの面倒をみてくれそうなのは、まずとして、このタヌキみたいなモンスターがどんな交換条件を出してくるのかが気になったのだ。
「ん?俺か、俺はな、過去の、モンスターになる前の記憶がない。それを知りたい」「へぇ、あんた記憶喪失なの」「まぁ、そんなところだ」「だけど、俺、記憶喪失の治し方なんて分からないよ」「お前がマスターなら、いずれ出来るようになるさ。その辺は俺に任しとけ」ふーん、とこの世界では、そんなものなのかな、と思う。そのなんたら王国で右も左も分からないなら、案内役がいるだけでも違うだろう。
「じゃ、契約成立な!」軽い感じでタヌキが言う。「契約って何すればいいの」「ほんとにお前って何も知らないのな。俺と知り合えてラッキーだったぞ?モンスターの中には、とんでもない凶暴なやつとかいるんだからな?」うん、と頷いてみせると、ふん、とタヌキが背をそっくり返す。「俺に名前をくれ」「名前?」「ああ、何でもいい。それが契約の代わりになる」そうだな〜、と考え、「タヌキじゃダメ?」カーッと顔が赤くなると、「却下!」と怒り出す。何でもいいって言ったじゃん…と思ったが、ふと「あ、じゃあレオは?俺の…日本じゃ、ライオンのことレオっていうから」急にタヌキの顔がぱぁっと輝く。「レオ!かっこいいな、それ!それにしてくれ!」ぴょんぴょんとレオは俺の周りをジャンプする。「腹減った…」俺はここにきて、自分がひどく空腹だということに気付く。
ウィダーインゼリーない?」とレオに聞く。
「なんだ、それ?キノコか?そんなものより、街に下りたら、もっとうまいもん食えるぞ、そうと決まれば、出発だ!」「うぇ〜めんどくさ〜い」「そう言うなって、マスター…そうだ、お前の名前は?」「俺の名前…凪だけど…」「ナギか!オッケーこれから、そう呼ぶぜ」レオは俺の周りをぴょんぴょん飛びながら、俺の背中をどやしつけてくる。こうして、ちょっぴり、いやかなりの面倒くさがり屋と、自分探しのライオンのコンビの冒険は始まったばかりなのだった…