晴天の霹靂 (original) (raw)

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』を観てきました。

素晴らしかったです。

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24年前に作られた前作も観てないし、時代背景も極めておぼつかない知識しかないままに行ってきたんですが、とてもおもしろかったです。大変古典的な貴種流離譚なので、何も知らないまま行ってもなんの問題もない。

話はわかりやすいし、画面の隅々までみたこともないオモシロで溢れているし、最近の映画では珍しいくらいナイトシーンも美しいし。またデンゼル・ワシントンデンゼル・ワシントン力が異様に高いので『イコライザー 古代ローマ編』として鑑賞しても楽しい。それから向こうからいきなりサイに襲われたときにどう振る舞うべきか、という知識としても非常に役にたつ。

リドリー・スコットは86歳にしてなんでこんな壮大な映画を撮れるんだろう、って言う話がしばしば巷で言われていたりしますが、本人の「やりたいこと」と、技術や知識、知恵、交渉力などがこのレベルでバランスとれるようになるまで86年掛かったってことなんだろうなあ、と観ていて思いました。

「私も86歳くらいまでにやりたいことができるようになってればいいってことかと思うと元気出るなあ」と、47歳の誕生日にものすごく勇気づけられたことです(馬齢)

イコライザー THE FINAL

「こういう面構えの人を舐めちゃいけない」というのは人類史に残る教訓ですね。

グラディエーター(吹替版)

前作。後日鑑賞予定です

紅葉の盛りで美しかった公園も、数日目を離すとほとんどの葉が地面に落ちてしまって、嘘みたいにさみしい光景に変わっている。

道を行く人も各々、冬用のジャケットに衣替えだ。だいたいのところみんな煮染めたような色合いになっているのは、10人中7人くらいがユニクロのダウンジャケットを着ているからだろう。実際、ダウンなんて普通は高価なもの、ユニクロか無印以外の場所で手にいれる方法が私にもよくわからない。しかしながら、そのおかげで出来上がった光景は、政府支給の国民服を着ている人たちの群れみたいに見えて寂しいのも事実なのだ。

おお寒。と、黒のジャケットのポッケに手を突っ込んだまま長い階段を下りていたら、向こうから階段を上がってきた上品な高齢女性にすれ違いざま、声をかけられた。

「あなた、きれいな色ねえ。そのマフラー。作ったの?向こうから歩いてきて綺麗な色がずっと見えてたの」

と、あらかた葉っぱが落ちきってしまっている道を振り返って指を指す。

私はといえばその名も「トマト」という名前の毛糸で編んだマフラーをしていた。もうちょっと頑張ればセーターくらい編めそうな大量の毛糸を使って、分厚く長く編んだものをグルングルンに首に巻いて。実際、このさみしくなっていく光景の中でトマト色の毛糸の山が歩いてくるのは目立つのかもしれない。

そういえば色鮮やかな手編みのものを身につけていると年上の見知らぬ女性によく褒められる。もしかしたらビフォー・ユニクロの時代を長く生きてきた人ほど「最近の冬はみんな黒づくめでつまんない」と内心思っているのかもしれない。

あら、嬉しい、ありがとうございます。この毛糸は本当は靴下を編む用の糸でドイツで生産されたものを輸入販売してるみたいなんですよ。などとニコニコと喋りながら、おやおやこのマダムは天使なのかもしれないな、という気になってくる。

「真っ赤な口紅ぎゅっとつけるといいわよ。かわいい顔してるんだから」

なんてついには愉快なお世辞まで言ってもらって「あはは。やってみます」と上機嫌。

わかるわかる。せっかく目立つ赤なんだからついでにファム・ファタールみたいな口紅をつけて見る人をビビらせていくの楽しそうですよね。分かる分かる。

でも私としては「野面で白髪交じりで、全体に黒っぽくて、さっき沼から上がってきたみたいな風貌なのに、なんでマフラーだけそんなにバッキバキなの」っていうばさらっぽい文脈のほうが、今ちょっとおもしろいのよね。あと十年くらい経ったら散歩にも真っ赤な口紅つけて歩くのが楽しくなったりとかするかしら。

そっかあ、見知らぬ年上の同性に、真っ赤な口紅がいいよ、なんて言ってもらっちゃった。人生ってこんなに楽しいことがいきなり起こったりするんだな。ふふふ。

『十一人の賊軍』を観てまいりましたよ。155分。

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私はあまり邦画を観ない方なのですが、父(75歳)が「観たい」と言い出したので調べてみたら原作・笠原和夫、監督・白石和彌という変わった作品。「そういうことなら、いきましょうか」ということで連れ立って行ってきました。鑑賞後、父の感想としては「『海に眠るダイヤモンド』のほうが面白いな」とのこと。そこ比較するとこなのか。

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魅力的なところは色々あったので「90分でまとめてくれたら面白かったよなあ」と私は思いました。チャンバラ映画で2時間半ってのは、やっぱりエンタテインメントの生理に合ってない気がするなあ。

賊軍だけで11人居るのに、のちにストーリーに絡め取られているいくわけでもない人物紹介とかを丁寧にやられるのは結構キツイ。

「それ、物語に関係ないなら言ってくれなくても良いですよ、こっちの集中力続かないんで」と思いつつたくさん人が出てくるのを観る。そしていつどこで誰が死んだのかがわからないままなんとなく人数だけ減っていくのにつきあわされる。

「キャスティングの段階で、『この人の見せ場が何分ね』とかのオーダーとセットなのかしら」などと、観ているこっちが事情を忖度してしまうほど、不自然に間延びしていました。

それから同じことを何度も繰り返されるのもキツかったです。

石油を見つけて表六玉作ったって話は面白いけど、延々とやることじゃない。ガッツのある反逆者が四方八方から刃物突き立てられながら立ち往生して死んでいくシーンは格好いいけど、一人やればいい。生首が転がる、刀を持っていた指が切れて散らばる、手がもげる、などのグロシーンが見せ場なのは分かるけど、同じことを二回やるともうダサい。などなど。ひとつひとつは格好いいだけに本当にもったいない。

衣装なんかはとても良かったと思うのです。時代劇ってだいたいいつも衣装に汚しが足りないのが毎回気になって仕方ないのですが、今回は本当に人物の社会的立場にあった生活感のある衣装を全員が着ていたのは素晴らしい。キャラクター設定によっては外連味たっぷりの衣装もたくさん出てきて、その点は全然飽きずに観ていられました。

惜しいなあ、面白いところもたくさんあったのに、これじゃ惜しいよなあ。と思いつつ。まあでも力作でした。

十一人の賊軍:プロット 浪漫堂シナリオ文庫

笠原和夫のプロットが出版されているのはちょっと気になる。