日本の民話『紀伊の民話』(21) (original) (raw)
前回見た発生時代順 日本むかしむかし⑩『いまのむかし』とほぼ同じ頃、やや先行して紀州の天狗の話を松谷氏が作品化していたことに気付いたのも、やはり『松谷みよ子の本』別巻を眺めていて、のことでした。
・『松谷みよ子の本 第4巻 童話・詩・全1冊』一九九五年二月二十五日・第一刷発行・講談社・709頁・上製本(20.0×14.8cm)
17~601頁「第Ⅰ部**:**童話」の、19~394頁「短編」545~601頁「こわい話」には雑誌や共著に発表したものが集められているが、395~543頁「鯨小学校=おじさんの話」のみ、週刊紙に連載した連作である。そのことは672~684頁「初出と底本」の676頁12行め~678頁5行め「鯨小学校―おじさんの話」を見れば分かる。
その2作めが、676頁14~15行め、
こうもりがさのてんぐさん【初出】「日教組 教育新聞」第八五七号 一九六七年六月十三日、第八六〇号 一九六七年七月四日 全二回 /日本教職員組合
なのである。**伊藤英治 編『松谷みよ子の本** 別巻 松谷みよ子研究資料』159~516頁「**松谷みよ子全著作目録**」259~411頁「編纂出版物・雑誌・新聞」266頁上段14行め~291頁下段5行め「創作(雑誌・新聞)」を見ると、この連載については278頁上段1行めから281頁下段3行めに掛けて、他の作品に交じって記載されているが「こうもりがさのてんぐさん」は、まづ278頁上段7~9行め、
とあり、次いで14~16行めに、
と見える。『松谷みよ子の本4』にしか号数が出ていない。月1回の連載なので『別巻』だけ見たのでは週刊なのか月刊(或いは日刊)なのかが分からない。一方、原題は『別巻』にしか載っていない。ここでは、連載回数と原題、号、発行日を一覧表に纏めて置こう。原題は全て「おじさんの話 」を冠しているのでそこは省略する。「松谷春男え」も全てに共通、紙名と発行元も一々記載するに及ばないだろう。
回 | 原題 | 号 | 発行日 |
---|---|---|---|
1 | 鯨小学校 | 853 | 1967-05-13 |
2 | こうもり傘の天狗さん 1 | 857 | 1967-06-13 |
3 | こうもり傘の天狗さん 2 | 860 | 1967-07-04 |
4 | おせん(一) | 864 | 1967-08-01 |
5 | おせん(二) | 868 | 1967-09-05 |
6 | きやりを、うたうきつね | 872 | 1967-10-03 |
7 | あぶらげときつね | 877 | 1967-11-11 |
8 | キチンカムカム | 1967-12-05 | |
9 | 紅椿 | 885 | 1969-01-01 |
10 | 洪水のはなし(一) | 894 | 1969-03-05 |
11 | 洪水のはなし(二) | 898 | 1968-04-08 |
12 | 唇を縫う | 902 | 1968-05-07 |
13 | 日本の狼 | 906 | 1968-06-04 |
14 | おじさんとうりん坊 | 911 | 1968-07-09 |
15 | 銀の矢 くるみの木の矢 | 915 | 1968-08-06 |
16 | 熊の鳴く声 | 919 | 1968-09-03 |
17 | からすのはなし | 923 | 1968-10-01 |
18 | サンコ | 927 | 1968-11-05 |
19 | 山の河童 | 932 | 1968-12-10 |
20 | 年神さまと貧乏神さま | 935 | 1969-01-01 |
21 | ウメボシ狸 | 943 | 1969-03-04 |
22 | ある池のほとりで | 948 | 1969-04-08 |
23 | 鳥が啼く | 952 | 1969-05-06 |
24 | 若葉の頃 | 956 | 1969-06-03 |
25 | 嫁さんのみやげ | 961 | 1969-07-08 |
26 | ネス湖の竜は…… | 966 | 1969-08-12 |
27 | ゆうれい | 970 | 1969-09-09 |
28 | 帰ってこない猫 | 975 | 1969-10-14 |
29 | 黄金の沼 | 978 | 1969-11-04 |
30 | お汁粉の煮えるまで | 981 | 1969-12-02 |
31 | 仙人のはなし | 985 | 1970-01-01 |
32 | 雪おなご | 991 | 1970-02-10 |
33 | かわいそうな きつね | 994 | 1970-03-10 |
『松谷みよ子の本4』の「初出と底本」には、これら初出を列挙した後に、678頁3~5行め、
初出単行本**:**『木やりをうたうきつね-おじさんの話』一九七一年十二月 偕成社 *「こうもりがさのてんぐさん」「おせん」「ウメボシだぬき」/「ネス湖の竜は……」「黄金の沼」「おしるこの煮えるまで」「仙人の話」「雪おなご」「かわいそうなきつね」は未収録。
底本『鯨小学校-おじさんの話』一九八六年一月 偕成社 *「おせん」「黄金の沼」「おしるこの煮えるまで」は未収録。本巻で新収録。
とある*1。なお連載8回めの「チキンカムカム」の号を示せていないのは「初出と底本」に載っていない、すなわち底本の『鯨小学校―おじさんの話』に収録されていないからで、それがどうなったのか等、もう少し細かい経緯は『別巻』7~157頁「「松谷みよ子の本」編集メモ」40頁下段8行め~47頁下段7行め「第4巻 童話・詩・全1冊」43頁上段15行め~44頁上段13行め「3 『鯨小学校―おじさんの話』」に説明されている*2。
次回、『松谷みよ子の本』に先行する「おじさんの話」の書籍版を一通り眺めることとしましょう。(以下続稿)