快晴の至仏山(でもちょっと物足りない) (original) (raw)

今年は雪山にガンガン行くんだと言っていたのに、マトモに登ったのは八ヶ岳の天狗尾根くらいで、結局成果が出ていない。そしてもう4月も半ば。GWは混むので出かけないつもりだし、GW前の週は、奥さんと東北温泉旅行が決まっている。その前の週は仕事の予定がびっしり。もう雪山に行ける日は数えるほどしかない。

今週は月曜と金曜以外は、仕事の予定は入っていない。行くなら天気のいい水曜日だと思い立ったのは今週になってから。そして前日の火曜日に行先検討を始めた。水曜日は奥さんに仕事のシフトが入っており、夕食の支度が出来る時間の帰宅という関門が設定される日である。そのため、行先候補のうち、北アルプス方面は除外され、尾瀬、谷川、上越方面に絞られた。谷川岳が一番行きやすく、帰りも早いが、もうどこも滑れる状態ではなさそうで、歩いて降りるのではつまらない。残るは巻機山か、至仏山かで迷ったが、至仏山に決めた。

なんとなく、雪山に行かねばという義務感のようなものから決めた山行なので、朝起きる段になって、やる気が出ないのではと心配していたが、3時の目覚ましに反応し、3時15分には家を出ていた。

車のラジオで、「ラジオ深夜便」をやっていた。3時台は日本の歌コーナーでペギー葉山さんの特集。CDに変えようか迷っているうち、4時台になって「明日への言葉」コーナーに変わった。コーヒーハンターと呼ばれる、川島良彰さんの話だった。大体、成功した実業家の話というのは、チャンスをものにした自慢話となりがちで、あまり聞くのは好きではないのだが、今回は違った。高校卒業後、単身エルサルバドルに渡り、様々な苦労を重ねて今に至るという内容で、本当に苦労しつつ、見事にご自身で道を拓いてこられたようだ。実に尊敬できる方だと感じた。いい話を聞いた。

おかげで眠くもならずに関越道を走り、沼田インターから戸倉に向かう。鳩待峠に向かう林道の手前の駐車スペースは、休日なら混んでいて停める場所に苦労することもあるが、平日なので先客は2台のみ。着いたらすぐに大キジに向かう予定だったが、1台の軽ワゴンのところに、自転車を押してきた女性がいた。林道を自転車で鳩待峠に向かうのだろうか。なにか自転車を調整している。山スカートをお召しになって、ちょっとそこらにハイキングという山ガール的な女性のようだが・・・

時間がかかりそうなので、藪漕ぎをして用を足した。車に戻ると、女性が自転車で出発するところだった。「旧車で来たキジ打ち男」のレッテルが貼られてしまったかもしれない。

鳩待峠に向かう林道は、除雪が完了しているので、スニーカーで歩くことにしていた。そのため、スキーブーツは背負う。ビンディングに取り付けた状態で、リュックに付けようとしたところ、なんとビンディングが合わない。しまった、最後にスキーをやったゲレンデでの鬼錬は、K2のブーツで行ったんだった。

工具の用意はないので、車載工具からドライバーを引っ張り出して、その場で調整する。なかなか合わず苦労した。何とか合わせたが、自信がないのでドライバーはリュックの雨蓋に入れておいた。そういえば、奥さんから貰った、レザーマンのプライヤがあったな。無くしそうなので持ち歩いていないが、最低限の工具は持っていた方がいい。

ようやく出発

ようやく6時20分に出発した。鳩待峠林道をスニーカーで歩くのは初めて。さすがに歩きやすい。シールで歩いたり、登山靴で歩いて、津奈木橋まで2時間はかかるのが普通だったが、1時間20分で着いた。ただし、途中融雪水が道路いっぱいに流れているところが何か所もあり、靴を濡らしたくないので通過に手間取った。それでも結局濡れてしまったので、次回同じように歩くときは、その対策をした方がいい。

こういう所で濡れる

津奈木橋から少し登ったところから、1866ピークに至る尾根に取り付く。スニーカーからブーツに履き替えるが、濡れてしまった靴下はリュックにしまう。今年から、靴下2枚履きが調子が良くてそうしていたので、2枚あって助かった。板にシールを貼り、昨日の雨と朝の冷え込みで、カチカチになった雪面を登り始めた。カチカチでも、けっこうシールは効くもんだなと思っていたが、今シーズン初シールで、なかなかぎこちない。

シール登高はつまらない。5分くらいで飽きてきた。雪山に行かねばと、無理くり出てきた感じもあるので、この辺歩いて帰ろうかななどという気持ちが湧き始めたころ、傾斜が急なところで苦労した。見るとスキートップの金具が外れてシールが剥がれている。手を伸ばして直して登る。少し行くと今度はテールが外れた。そして転倒してストックを取り落とす。ストックは5mほど転がって止まってくれた。板を外して取りに行く。

もうここで、シール登高には見切りをつけた。板をリュックに付けてキックステップで登る。この方が自分には合ってる。天気は無風快晴。だんだん気分が良くなってきた。

津奈木橋を出たのが8時。1時間で稜線まで行けるかなと思ったが、至仏山山頂が見える位置まで来たのは9時半。まあ標高差500mあるから順当なところだろう。

稜線にはシールトラックのようなものはなかったが、二人分の足跡がある。真新しいので今朝のものだ。前方を見渡しても人影は見えない。駐車スペースにいた、山ガールさんのものだろうか。二人連れだったのかな。

絶景のなか歩を進める。シールトラックがあれば、再び板を履こうかと思っていたが、そのままツボ足で進んだ。雪は固く締まっており、ツボ足の方が速いだろう。子至仏山もトラバースせずに山頂を踏んだ。後方に荒々しい上州武尊がそびえる。

至仏山から下り、至仏山山頂への登りに取り付く。山頂直下で、ひょっこりと山ガールさんが現れた。おひとりだったようだ。サングラスと目出帽で、まったくお顔は拝見出来なかったが、山スカでサクッと雪の至仏山とは、なかなかのスーパー山ガールとお見受けした。

山頂には11時着いた。360度の絶景を楽しむ。ここでは電波が取れたので、奥さんに登頂を報告しておく。そして滑降準備。

巻機山方面

尾瀬沼と燧岳

ここから滑ります

ワル沢の滑降は去年成功している。今回も大丈夫だろうと思うが、やはり緊張はする。そろそろと斜面に近づき、まずは斜滑降。行けそうだ。

大回りターンを繰り返して高度を下げる。先週のヤマレコの記事に、ワル沢は縦縞が多く出ていると記載があったが、それほどでもなかった。コケずに滑り降り、右側の尾根上に向かう。ワル沢源頭部は、たぶん大丈夫とはいえ、自分が切ったスラフが気になったが、尾根上に出ればそのプレッシャーからも解放されて、楽しくターンを繰り返した。

去年の方が雪が多かったので、あまり考えずに谷底まで降りられたが、今回は本流の100m手前で板を外し、ワル沢のスノーブリッジを歩いて渡った。もう板をリュックに付けて、そのまま鳩待峠に向かって登り出した。峠まで直線距離で300mほど。新しい鉄骨組の小屋が見えてきた。小屋を建て替えるのかもしれない。

新築中の鉄骨組、つい先日、東京スカイツリープロジェクトXを見たばかりなので、申し訳ないけどチンケに見えた。

雪の壁から砂利道に降りると、山ガールさんが自転車に乗るところだった。さすが速いな。軽く会釈して、舗装路をブーツのまま下っていくと、「さすがにスキーは速いですね~」といいながら追い抜いて行った。結局お顔は拝見出来なかったが、声はキレイな方だった。きっと美人に違いないと、スケベな俺は思ったものだ。

ブーツのまま歩いているのは、スキーで降りる可能性を残したためだ。地図から確認する限り、林道がつづら折りで高度を下げるポイントから左岸を行けば、緩傾斜帯を津奈木橋まで降りられそうだった。そのポイントまで行ってみたが、雪は少なく、樹林は深くでスキーでは無理そう。なので、徒歩で雪面をショートカットした。

次に林道が大きくヘアピンするポイントがある。津奈木橋下流側から、左岸を登ってくるルートはそこで合流するが、その手前で、下方にヘアピン先の道路が見えたので、そのままショートカットした。この先は舗装を行った方が速いので、ここで靴を履き替えた。

あとは舗装をスニーカーで歩いて車に戻った。15時に下山したから、行動時間9時間。距離は25㎞あったらしいが、そのうち17㎞は舗装路である。

無風快晴、絶景の中の春山登山で楽しかったが、やはりちょっと物足りない。今期一番充実したのは、やはり夕方までかかった天狗尾根だ。登り下りともラッセルとなった、西黒尾根~田代尾根も充実した。ピリッとしたスパイスが必要だ。今回、気持ちよく滑れたが、スパイスとしては足りなかったようだ。

今シーズン、もうチャンスは少ないが、ピリッとした山に行けるだろうか。