路線バスに乗って思ったこと (original) (raw)
ある日、地元の市営バスに乗りました。長い話です。
自宅からバス停までは遠いので、バスを利用して出かけるという事は、たくさん歩く、という事になります。
普段、車ばかり使っているので、都会の人より足腰弱いかもしれません。
だから「歩く」ために、バスに乗ってどこかに出掛けよう、と思ったのです。
何もない近所を歩くのは、少々飽きましたので…
こんな風にバスに乗るのも、年に数回あるかないか、ですが。
よく晴れた、暑い暑い日でした。
気まぐれで出発が午後になってしまいましたが、特に目的地も無く、駅前に着いたらカフェでゆったりするだけでもいいや、気分転換にもなるし…くらいのつもりで、バスに乗りました。
そして、行きのバスで「ありがとう❗」と私が言いながら降りていく時、後ろから運転手さんの「ご乗車ありがとうございました❗」という声が聞こえました。
何も言わず、無視する運転手さんもたまに居ます。
でも、いつもと違うのは、帰りのバスの中でした。
駅前のカフェなどでゆるりとした後、バスターミナルの乗り場に行くと丁度、私の乗る路線バスがドアを開けて待機中でしたので、急いで乗りました。
「グッドタイミング❗」と思いながら着席すると、その後から誰かが乗って来て、ドアが閉まったように思います。
でもその時は、何か考え事を始めてしまって見えていませんでした。
バスが走り出して少ししてから、ふと顔を上げると、バスの中、中央付近に車イスの人が居ます。
「ああ、そうなんだ❗」さっき何かガチャガチャ、音がしていたなあ。
これが、「ノンステップバス」だったのだと、やっと気づいたのです。
私は滅多にバスを利用しないので、車イスの人と乗り合わせたのは、これが初めてでした。
そうして、何番目かの停留所で、その車イスの人が降りる時のことです。
今度はちゃんと見えていました。
運転手さんは慣れた手つきで、中央ステップ下からスロープを引き出し、停留所の歩道に据え付けると、車イスの固定を外し、車イスをバックさせる形で降ろしていました。
ここで降ろして終わり、かと思いましたが違ったのです。
運転手さんがひと言、「どちら方向に行かれますか❓」と車イスの人に声を掛けたのです。
車イスの人が答えると、その方向に車イスを方向転換してあげていました。
そのあと、テキパキとスロープを収納し、車内の車イススペースにしていた場所の座席を元に戻して、バスはまた動き出しました。
待たされても、他の乗客で文句を言う人は、もちろんいません。
こんなのは当たり前の景色でしょうか❓
運転手さんにしてみれば、職務上の責務、普段通りの「ルーティーン」をこなしただけかもしれません。
四十歳になるかならないかの年齢だとお見受けしましたが、この運転手さんの声掛けは優しく、とても親切で礼儀正しく、私が前に勤務していた病院で見かけた、MR(製薬会社の医療情報提供者)の方々に雰囲気が似ていました。
MRの方達は、たいてい企業で接遇を含めた専門研修を受けていますから、スマートな営業担当、といった感じの良い方が多いのです。
仕事だからと、割り切ってウラオモテを使い分ける事のできる人も居ますが…
バスの乗務員としても色々な研修を受けているのだとは思いますが、このバスの運転手さんの態度には、まごころがこもっていたように感じます。
私が降りる時もやはり、「ご乗車ありがとうございました❗」という声を聞きました。
市内のゴチャゴチャした道路を走りながら、色んな客への様々な対応や接遇、道路の渋滞などにイライラする日もあるでしょうに、大型バスの安全走行に配慮しながらも、淡々と業務をこなしている乗務員の方々には、アタマが下がります。
さらに、帰宅してから気づいた事があります。
以前、市バス運営は赤字続きだと、ニュースで見たので、その後どうなんだろうと思い、Webで調べてみたところ、運営している交通局が、あと数年で廃止されるという事でした。
近年の乗客数減で運営は困難を極め、路線や便数を減らし、できる限りの改善策を講じてはみたものの、◯年後には民間事業者に委託する方針となったようです。
全く無くなる訳ではないようですから、まだ少しホッとしましたが、ちょっと考えてしまいました。
例えば自分がもし、赤字続きの、数年後につぶれてしまうと判っている会社で働いているとしたら、どうでしょう❓
あの運転手さんのように、客に親切にできるでしょうか❓
優しい言葉をかけることができるでしょうか❓
やさぐれて、つっけんどんになるかもしれません。
で、帰宅してから家族に八つ当たりするかもしれませんね。
どんな態度にするかは、その人の選択です。自分が「選ぶ」のです。
ふてくされた顔をして嫌々働くのは、接遇面ではアウトです。私の過去の職場では特に…
ですから、医療機関の受付や電話などでの患者や家族への対応では、強烈なストレスを感じていました。
無理を言うクレーマーも居ましたし、投書されるので、どんな時にもにこやかに優しく対応しないといけない…とプレッシャーが掛かりました。
いろんな所でサービスを受ける側になると、過去の経験から気になることも出てきますが、親切な接遇を受けると、こちらも本当に嬉しくなります。笑顔が笑顔を、呼ぶのです。
やっぱり、「優しい声掛け」と「にこやかな態度」に勝るものは無いようです。
あの運転手さんが、皆に示してくれているものについて考えた一日となりました。
(長くなってしまいました💦)
ソイラテ+スイートポテト&バニラシフォンケーキ(駅前のカフェにて)