笛吹きもぐらは旅をする (original) (raw)

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酷暑の2024年は9月に入っても残暑厳しく、最高気温が35℃に及ぶ日が続いた。しかし、暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、彼岸の雨を境に、少し暑さがやわらぐ。こんな年であっても秋はくるのか。不思議だ。
体調は、悪くない。疲れが溜まるとドンと疲労感が強まることもあるけれど、大崩れすることはなく、牛亀のごとき歩みではあっても確実に改善している。なので、臨界点を超えないように留意しながら、可能な限り負荷をかけつつ、体力の維持向上に勤めた。ただ、なぜか左の膝と足の裏が痛むのでウォーキングは最小限にとどめ、公園に出かけていってトランペットを吹いたりカラオケボックス木管楽器を吹いたりしている。

いやもうとにかく暑くて、楽器の練習のために、数年ぶりにカラオケボックスを利用した。子どもが出来る前はそれなりに頻繁にカラオケボックスを利用していたのだけど、一回一回は少額でも回数がかさむと出費も多くなるので、しばらく使っていなかった。けど、この暑さで公園練習とか、○ぬわ! 早朝にちょっぴりラッパ吹くくらいなら公園でいい。しかしそれでも、30分練習すればたちまちペットボトルが一本あく。そしてシャツはぐっしょり、頭はモウロウ。去年も暑かったけど、それでも我慢すればなんとか練習できていたのだから、今年は去年よりずっと暑かったってことだ。で、シを覚悟する暑さから逃げるために、カラオケボックス。日本にカラオケ文化があってよかった。

こういう気候だし、スマホもテレビも「用がなければ外出するな」と言うので、自然、屋内で過ごすことが多くなる。去年は散歩に使っていたはずの時間を、今年は読書や身の回りの整理にあてた。靴は久しぶりに磨いたなあ。体調が悪かったこの数年、靴を磨く気分にすらなれなくて汚しっぱなしにしていたのだけど、数年ぶりにクリームを塗ったりワックスをかけたりしてやれた。ついでに靴箱の掃除もして、いい気分。原因不明の左足の痛みがひいたら、きれいな靴で散歩したい。

来年の夏は、いったいどんな夏になるだろう。今年みたいな酷暑がまたやってくるのだろうか。ニュースなんかでは、今年は観測史上最高気温だったなんて言っているけど、来年も記録更新の夏になるのかな。それとも今年だけが特別で、来年は少なくとも去年並には過ごしやすいのかな。こんなに暑い夏はもう嫌だけど、嫌と言えばハイそうですかと気温が下がるわけでもないのだから、また暑くなるかもしれないという覚悟だけはしておいた方がいいんだろうなあ。
暑くて何が困るかって、運動不足になることだ。これ、僕だけじゃなくて、子どももそう。あまりにも暑いので日中に屋外で遊ばせられない。子どもの体力低下が叫ばれるようになって久しい我が国である。何とかした方がいいんじゃないだろうか。うちの子はゲームばかりしている。もちろん、そうさせたい訳じゃない。不要不急の外出は控えましょうということになると、他にできる遊びがないのだ。プールには何度か連れ出したけど、親が付き添わないといけないとなると、そう頻繁に通えるものでもない。暑さ対策を施した、子どもが子どもだけで気軽に遊べる場所を作るっていうのは、この国の喫緊の課題のひとつなんじゃないだろうか。

まあ、中学生以上であれば、その対策のひとつが部活動ってことになるんだろう。近頃の中学校は、体育館にも冷房がはいっている。
ただなー、先だってその体育館で吹奏楽部の、文化祭の予行練習のお手伝いをしたけれど、僕は熱中症になるんじゃないかと思ったよ・・・。全然、冷房がきかないんだな。それが、設備の性能不足のせいなのか、設備の性能を上回る酷暑のせいなのかは分からない。でも、練習が終わった後に、軽い頭痛はするし、いくら水分をとっても喉の渇きはおさまらないし、いやいや、あれは多分、軽い熱中症だったね。中学生達は大丈夫だっただろうか。元気な様子で下校していたから問題なかったと思ってはいるのだけど、ちょっと心配だ。

とにかく。
今年は大変な酷暑でした。で、来年はもうちょっと普通に過ごせるような暑さであってほしいし、僕たちも、暑くても普通に過ごせる工夫が必要だね。よく考えましょう。

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ピッコロを使う機会があり、ここ半月ほど練習をしている。
ピッコロで人前に出るのは何年ぶりだろう。ちょいちょい吹くことはあったけど、がっつり使ったのは、15年くらい前になるんじゃないだろうか。それから基本、ピッコロをほとんど使わないオケで演奏してきたので、ピッコロは箪笥の肥やしになっていた。それを今、楽器の加湿をしながら自分の腕のサビ落としをしているわけだが、うーん、本当に久しぶりだな。
使ってなかったけど、楽器の調整は数年おきに診てもらっていて、問題ない。問題は僕の方だ。すっかりピッコロの吹き方を忘れている。ピッコロの演奏に要求されるのは、フルートよりもコンパクトなアパチュアと、スピードの速い息。分かってはいるけど、体が完全に鈍っているのだ。Hi-F以上の音が全然鳴ってくれない。鳴らない、というのが、いい音がしないなどというレベルではなくて、本当に当たってくれない。打率75%ってところか。何とかしなければ。

最初は、アンブシュアと脱力を意識して、低音域からひたすらロングトーン。それから、跳躍とスケールとアルペジオ。基本中の基本のトレーニングを地道にやる。金管だろうが木管だろうが、練習って結局これなんだよね。練習する音域が高音域までのぼってくると、自ずと体が力んでくるのを、強制的に緩める感覚に、自分をなじませていく。
普通、こういう練習を4、5日続けると楽器が鳴ってくるのだけど、今回はよほど腕が錆びついているのか、なかなか思うように吹けてこない。おっかしいなー、と思いながらもさらにトレーニングを続ける。やはり、うまくいかない。

練習を続けているうちに、耳がピッコロの音域に馴染んでくる。すると、音程がおかしいことにやっと気づいた。あれ、高い? なんか、ピッチ高いな。頭部管を差し込みすぎか。そういや、イントネーションも悪いかも。以前と同じくらいの抜き幅にしていたつもりだったんだけどなあ。まあいいや、ちょっと抜こう。
そしたら、はい出ました、Hi-Fもそれ以上も。イントネーションもOK。奏者側のコントロールで何とかなる範囲内。最後に残っていた問題は、楽器の調整でもなく、奏者でもなく、楽器のチューニングでした。いやあ、チューニングって大事だね。

部活など若い人の演奏している現場に行くと、この楽器のチューニングが適正にできていない場面をよく目にする。フルートやピッコロについて言うと、頭部管の抜き差し幅が楽器の設計に対して限界を超えているような組み立てがそれにあたる。
これは僕の考えだが、ピッコロの頭部管の位置というのは、厳密に言うとほんとうに一点しかなくて、気温などの条件に合わせてその位置から±0.5~1mm程度の抜き差し幅というのが許容範囲なんじゃないだろうか。いや、1mm抜き差ししたらもう、やりすぎかな。でもまあ、そんな感じ。フルートだと±1~2mmがリミット。とにかく、楽器のチューニング幅の限界って、あまり広くない。
これ、フルートとピッコロに限った話ではなくて、金管木管とわず、すべての管楽器のあてはまると思う。金管木管に比べると、多少融通はきくように感じるが、トランペットのように2番管の抜き差し幅が調節できない楽器に対しては特に、極端なチューニングは好ましくないと僕は思う。

チューニングは、管の全調が短い楽器ほどシビアだ。ということは、吹奏楽で使う管楽器の中で一番短いピッコロが、チューニングに関してはもっともシビアだということになる。中高の部活でたまに、ジョイントのコルクが見えるほど頭部管を抜いているようなチューニングを見かけるが、あれはダメだね。イントネーションは乱れるし、音色も悪い。で、そういうチューニングをしている奏者に話を聞くと大抵「これじゃないと合奏でピッチがあわないんです」と宣うが、それはね・・・申し訳ないけど、奏者の問題だよ。では、奏者の何が問題化というと、口腔内の容積が狭すぎることじゃないかな。もちろん、スピードの早い息を得るためにある程度は狭くするのだけど、狭すぎるとピッチが上がりすぎる。高い音でも、適度に顎の緊張を緩めておくことで豊かな響きと正しいイントネーションを得られるので、奏者は注意をはらうべきだろう。
あとは、ピッコロとフルートでは楽器のサイズが違うので、唄口の位置をアパチュアの正面にもってくるのが難しい。ピッコロが小さいからといって、あまり小さく構えたのでは唄口が左に寄りすぎる。唄口をどれくら外にふってセッティングするかというのも重要だ。楽器のメーカーや機種にもよるが、僕の考えでは、フルートよりは外にふってアパチュアとポイントの距離をとるイメージでセッティングするのがよい。楽器が小さいので、セットした角度の大きさほどには距離は離れないように思う。むしろ、フルートと同じ角度でセットすると近すぎるんじゃないかな。初心者はピッコロのサイズ感にあわせた構え方やセッティングをよく研究した方がいいね。

で、それでもチューニングしきれなくて、けどどうしてもチューニングを合わせなきゃいけないということであれば、設計の異なる楽器を試すしかないだろうなあ。ピッコロにそういう楽器があるのかどうか知らないけど、フルートだと確か、ナガハラフルートにはA=442Hz以外にA=440Hzの楽器がラインナップされていたっけ。あとは、古い楽器だとハイピッチやローピッチの楽器が存在するようなので、中古を漁るとか。個人的な印象の話になってしまうが、古いアメリカの楽器は音程の落ち着いているものが多いような気がする。知り合いの持っていた中古のゼントナーは合奏でピッチがハマりやすくて好印象だった。僕も、自分のハンミッヒを買う時には最後までゼントナーと迷って、結局、非常に鳴りのいい個体のハンミッヒが見つかったらこちらにしたけど、ひょっとしたらゼントナー買ってたかもしれない。

さてさて、とにかく練習しましょう。
9月に入って、世間を騒がせたわりには関西での影響が少なかった台風10号も去り、真夏の頃よりは朝夕が過ごしやすくなっている。しかし、この季節の変わり目が僕には大変。慢性疲労症候群の症状が強く出やすい。去年までよりはかなりマシだけど、それでもやっぱり、体の重さを感じるようになってきた。破綻しないように気をつけながら、うまく乗り切っていきたい。

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去年ご縁があって演奏会に参加した高校の吹奏楽部に、今年もお邪魔することになった。
1年生がたくさん入ったという話を聞いていたので今年はもうお声はかからないと思っていたのだけど、演奏会は聞きに行こうと思っていて、そう顧問の先生に伝えたら「じゃあ、のってよ」とお誘いをいただいた。OBってわけでもないのに声をかけて頂けるというのは有り難い。頑張ります。

今回の出番で使う楽器はフルートとトロンボーン
この、フルートとトロンボーンという持ち替えの組み合わせ、僕には時々発生する。以前、横浜で金管バンドに混じっていた時にもあった。あの時は「イパネマの娘」をフルートで吹いたんだっけ。多分それが、僕のフルート⇔トロンボーンの持ち替えのある初めての本番だったんじゃないかな。
管楽器の経験のある人には「そんなことできるの?」と驚かれるが、曲と曲の間に少し時間をいただければ、そしてシビアな要求のある譜面でなければ、不可能ではない。ただ、フルート⇔ピッコロとかトランペット⇔フリューゲルホルンのような、同属楽器同士の持ち替えほどイージーではないのもまた確かだ。「イパネマの娘」をやった時には曲間に2~3分くらい時間をとってもらった。確か、金管バンドの団長にトークでつないでもらって、その間にアンブシュアを切り替え、ちょっぴり音出しをさせてもらってから曲の演奏をしたように記憶している。

どんな楽器であれ、管楽器同士の持ち替えを経験したことがある人なら分かると思うのだけど、いかに素早く持ち替えた楽器のアンブシュアに慣れるかが持ち替えのキモになる。運指とか指の開き具合とかキィタッチとか、他にも素早く切り替えなければいけないことはあるが、アンブシュアが切り替わらないことには音が出ない。
そして、金管楽器木管楽器の持ち替えの場合には、金管楽器のバジングのために感覚の麻痺しているアンブシュアを、木管楽器アンブシュアを形成するために、麻痺をぬくための時間が少し必要になる。
トロンボーンの持ち替え先の楽器がフルートではなく、マウスピースを咥えるクラリネットやサックスなら、バジングによる麻痺感はあまり問題にならないのかもしれない(それでも、マウスピースに対する締め付けの力具合をコントロールする感覚を回復する必要はあるけど)。しかしフルートは、アパチュアを楽器に頼らずに自力で形成しなければならず、感覚が麻痺していると、自分のアパチュアがどれくらい開いているのかがつかめないので、音が出ない。だから最低限、フルートの演奏が可能なアパチュアの開き具合を調節できる程度には痺れをぬく時間がとれないとダメだ。
その時間がやっぱり、僕の場合、最低でも2、3分は必要かな。これは、技術というより、身体的な生理の問題のように思うので、短縮が難しいと考えている。バジングによる痺れを素早くぬく方法ってあるのかな? 誰か知ってたら教えて。

さて、本番は近い。両方の楽器の技術的なウォームアップができていなければ、持ち替えどころの話ではないので、フルートもトロンボーンもしっかり練習しましょう。