校長ってどんな仕事してるの? 「校長の一日」を振り返る(第3部) (original) (raw)
どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。とともに。地元熊本でサッカー解説の仕事もしています。
さて、先日のブログ「校長ってどんな仕事してるの?『校長の一日』を振り返る(第1部、第2部)」で日頃、私が「校長」としてどんな仕事をしているかというお話をしました。
今日は「第3部」として、「熊本市立高校」の「校長」ならではの仕事についてお話しします。
それは、「熊本市議会教育市民委員会・分科会・予算決算員会(以下、教育市民委員会)」への出席です。
テレビで国会中継を観ていると例えば衆議院であれば、全衆議院が一堂に会して行う「衆議院本会議」と常任委員会の一つである「衆議院予算委員会」がありますよね。
その「衆議院予算委員会」の熊本市版をイメージしてもらえば良いと思います。
ただ、国会の「衆議院予算員会」には、総理大臣をはじめ各省庁の大臣が出席していますが、熊本市の「教育市民委員会」には、市長は出席しておらず、そこに出席する行政のトップは「教育長」です。以下、教育次長、学校教育部長、教育総務部長、各課の課長が参加します。その他に教育関連施設長として、教育センター所長・副所長、図書館長、博物館長。そして、市立専門学校・高校の校長が参加します。
「教育市民委員会」には、市長は、出席しませんので、議員の質問には、教育長以下の出席者が答弁します。
国会の「予算委員会」では、議員が質問をし、その質問の内容によって、総理大臣が答弁したり、各省庁の大臣が答弁したりします。ただ、時には各省庁の官僚が答弁したりするシーンがありますよね。あんな感じです。
そもそも、そのような場に「校長」が出席するというのは、非常に珍しいケースだと思います。
これは、熊本市が政令指定都市であり、教育行政が独立しているということ。にもかかわらず、熊本市立の専門学校は1校、高校は2校と学校数が少ないことに依拠しているのだと思われます。
ですから、予算の要求も熊本市に対してそれぞれの学校が独自で行っており、事務室の職員の立場は全員が「学校事務職員」ではなく、「熊本市役所職員」です。
そんなわけで、「校長」が出席し、時には議員の質問に対して答弁するということがあるわけです。
ちなみに、「熊本県立高校」の校長が「県議会」に出席するということはありません。
先日の「教育市民委員会」の出席したときのことです。
その日は、「報告」として「熊本市立専門学校・高校改革」についての議題が上がっていましたので、その点について議員からの質問があるかもしれないと想定して、出席していました。
すべての「報告」が終わり「総括質疑」の時間となりました。
「熊本市立専門学校・高校改革」についての質問もいくつか出ましたが、それらの質問には、担当課である「学校改革推進課」の課長が答弁してくれて、私が答弁する場面はありませんでした。
質問項目は、次へ移り「就学援助費・奨学金」の話題に変わりました。この件でおもに答弁するのは「指導課副課長(学務担当)」です。
いくつかの質疑を終えたところで、議員から次のような発言がありました。
「今のコロナの状況で、経済的に苦しくなられている保護者の方は多いと思います。高校の授業料を払うのも苦しいご家庭があると想像しますが、昨年度の授業料を滞納されている人は何人おられますか?2校の校長にお尋ねします。」
てっきり質問を受けるのは「高校改革」についてだけだと想定していた私は、思わず隣に座っている必由館高校の校長と顔を見合わせました。お隣さんも唇をきゅっと結んで渋い顔で首を横に振っています。
二人ともそんな質問を受けるとは想定しておらず、その数字を把握していませんでした。
そこで、年齢的にも年上で指導主事(教育関係の行政職)経験もある必由館高校の校長が先に挙手してくれました。
「はい。委員長。」
「必由館高校・校長」
と委員長が指名します。
「申し訳ございません。今、手元にその資料がございません。後ほど答弁させていただきます。」
続いて私が挙手します。
「はい。委員長。」
「千原台高校・南校長。」
委員長の指名を受け、
「はい。同じく今、手元に資料がなく、把握できておりません。」
議員からは、
「わかりました。では、後ほど報告してください。」
と言われ、質疑は次の話題に移りました。
私は、冷や汗をかきつつ、次にするべきことを考えました。
各課の課長が同様の答弁をした際には、庁内に中継されている画面を観ていた各課の部下たちが大急ぎで資料を調べて、その結果のメモを課長の元に届けます。そして、課長がその会議の中で挙手し、指名の受けて、
「先ほどのご質問にお答えします。」
とやるわけです。しかし、千原台高校は車で20分ほどの距離にあり、そんなことは出来ません。
とその時、お隣の必由館高校の校長が挙手しました。
「先ほどの質問にお答えします。昨年度の滞納者は0です。」
おいおい何でこんなに早くわかるの?
私の冷や汗の量は倍増です。そこで、
「何で?」
とお隣さんに小声で尋ねると、
「YouTubeを観ていた事務長がラインしてくれた。」
という答え。
そうです。この日から「教育市民委員会」の様子がYouTubeでライブ配信されていたのでした。そんなことは、事務室に指示していない私は、慌てて教頭との管理職ラインに「大至急調べて、返信してほしい」というメールを送りますが、待てど暮らせど「既読」がつきません。事務長にもショートメールを送りますが、反応なし。
そこで、思い出したのが教務主任のライン。その旨をラインしてみると、ようやく「既読」がつき、「すぐに対応します!」と返信が来ました。
その後、事務長から「今、指導課に連絡しています」とメールが届き、「千原台高校の滞納者も0です。」という待望のメールが届いたのは、終了直前の11時57分でした。
そこで、
「委員長。」
と挙手し、
「先ほどのご質問にお答えします。昨年度の滞納者は、千原台高校も0です。」
と答弁して、委員長から、
「ほかにありませんか?なければ、これで教育市民員会予算決算委員会分科会のすべての質疑を終了します。」
となりました。
この冷や汗経験を活かして、次回からは、事務室と職員室でYouTube配信を観ておくように指示しておきたいと思います。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。素敵な日曜日をお過ごしください。