ふれる。 (original) (raw)

監督・長井龍雪×脚本・岡田麿里×キャラクターデザイン・田中将賀による作品。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』の秩父三部作では「超平和バスターズ」名義を使っていた。
秋、諒、優太の「島出身の幼なじみ3人組」が、ひったくりからバッグを取りもどしたことをきっかけに奈南、樹里と仲良くなるが、不思議な生き物「ふれる」の力でお互いに聞こえていたはずの心の声が聞こえなくなって……というお話。
どいつもこいつも、良くも悪くも絶妙に「等身大」。岡田麿里の考える「男と女のこういうところがイヤなんだよ」発表会なのだとすると「岡田はん、さすがですわ」の一言。
男3・女2の配置の時点で恋愛関係泥沼化の様相かと思ったが、作中では「優太→奈南→秋→樹里←諒」と、割とシンプルで、優太と奈南に対するサプライズパーティー絡み以外はそれほど泥らないのが意外でもある。本質的には友情物語だからか、ということは感想をまとめていて気付いた。
見ているときは「ああー、辛い」「そうなるわな……しんどい」という気持ちで一杯だったのだが、見終えて脳内反芻すると、1人1人のキャラクターについて、細かなところできっちりと「こういう人です」とわかる描写が重ねられていて、後々の展開への納得感が強く、それだけにしんどい。
ツダケン演じる副担任は登場した瞬間、あるいはそうでなくても優太と仲良くなっていく過程で「絶対こいつやべーやつ」とわかるようにできているけれど、そのやべーやつがまだやべー感じを出していないうちにシェアハウスに来てアロマの香りに気付いたとき、瞬時に「趣味のお香っす」と釘を刺したできる男、諒。カッケーっす。
諒は不動産営業職で、先輩から「この1年でできるようになったのは土下座だけだな」なんて言われるけれど、その言葉を聞いた秋がキレるのを止めた上に、先輩をフォローしたぐらいの出来る男。そりゃ、いつの間にか樹里と付き合ってるわ。仕事柄、押しが強くないと成功せんだろうし。だからこそガサツなところもあり、サプライズパーティーではやらかし言動もある。でも、男友達としてはいいヤツでしょうよ。
優太は服飾専門学校通いで、1年後輩から島育ちをイジられている感じ、どうも溶け込めてる感じはしない。序盤のダイジェスト内で、優太が一時的に丸々として、そこから痩せたような描写があったはず。同じく、諒だけ告白されたかフラれたかみたいな描写があり、秋と優太はあんまり女性と関わってきてないフリがあるので、学校の元先輩の奈南にコロッと行くのがよくわかる。なお、優太がなぜ同班の後輩3人からあんなにナメられてたのかは不明。最後にクラスに戻れた絵があったけど、その3人とは和解できないと思うなあ……優太もちゃんと言葉にするようになったからコミュニケーション取れるようになった?いやあ……。
秋が、キッチン系バイトじゃなくてバーテンダーをしている理由はよくわからないが、たぶんマスターがいい人だからだ。マスターとは、料理を生業にしていきたいような話もしてるっぽいし。口下手な秋くんが「ふれる」の力で親友になった諒と優太にべったり頼り切りではなく自立できた、とまとめると成長ストーリーっぽいが、「でも秋くんのキレやすさが治ったわけじゃないよな……?」っていう、後味の悪さというか、解決してなさというか、なんかそういうのもある。
それにしても『秩父三部作』をはじめとした作品群、本来は「長井龍雪監督作品」と呼ぶべきだと思うのだが、どう考えても岡田麿里カラーの作風で「岡田麿里脚本作品」という印象。はて、長井龍雪の独自色ってどういうところなんだろう……?岡田麿里以外の脚本家と組んだの、花田十輝の「アイドルマスター XENOGLOSSIA」か原作モノで水上清資ヤスカワショウゴの「とある科学の超電磁砲」だから全然わからん。