裸の男が額に汗を浮かべて戦っている (original) (raw)

・バイク乗りっぱなしの週末。土曜日は昼から大菩薩ライン、日曜は熱海へ。

道の駅たばやま、に隣接するのめこい湯がめっちゃ良かった。まず、サウナにテレビがないので目も耳も静かで、落ち着く。あったらあったで時間潰しになるから助かる側面もあるけど、「山あいの温泉」に求める静謐さや素朴さに求めるものではない。

・まあ知らん土地のサウナで見るローカル局街ぶら番組の良さもあるけど。以前東北で入ったサウナでは大相撲中継が流れていて、おじさんたちがじっくり見入ってる姿が印象に残っている。相撲特有の仕切り直しでやきもきして、取り組みが終わったら皆そそくさとサウナを出ていく。取り組み時間的に、相撲とサウナは波長が合うのかもしれない。両方裸だし親近感もあるか?

・外湯に29℃のぬる湯があって、これがずっと入ってられる。マジで暑い日に海水浴して2,30分経ったあとの、冷たさに慣れてきたな~、っていう感じを味わえる。気持ちよすぎて皆長居するので、なかなか空かないところはやや欠点だけど。

・あとは何より、人が少なかった。というかこれが大事で、なんならこれだけでいいまである。関東は関西よりも人が多い(これは当然)けど、実際それは人気観光地の話で人口密集地や高速道路から離れていけばそんなに変わらない印象。なんでやりよう次第で週末でも普通に快適性を得られる。いい発見ですね。

・で、『ブレードランナー』も観ました。仕事終わりの平日に家で一本映画が観られる、そういう生活を大事にしていきたい。

・街並みのウソ日本感は2049へしっかり引き継がれている。ウソ日本とは書いたけど、ちょうど同時期のAKIRAもこんな感じの街並みが描かれているあたり、当時の人が思い描く21世紀トーキョー像がある程度共有されている感じがある。

・調べてみたら、サイバーパンクの代表作として見なされているらしい。とすると、海外作品のウソ日本の感じが全部納得がいく。輝くネオン、夜、雨、様々な人種と機械、いわゆるアンダーグラウンド、退廃的な都市の姿はこっちが源流だったんだ。

・ラストの1vs1、あれはロイの復讐だったのだろうか。延命という目的は潰え、共に生きようとした仲間は全員死んだ中、彼は残された寿命をどう生きようとしたのか。

・初動は復讐だったと思う。でも彼の振る舞いを見るに、すぐにデッカードとの殺し合い=残された時間を楽しむ方向へシフトしたように見える。釘で手を貫いたのも、気つけもあるだろうけど生の感覚を痛みによって味わおうとしていたのではないか。

・そして最後、

「おまえたち人間には信じられないようなものを私は見てきた。オリオン座の近くで燃える宇宙戦艦。タンホイザー・ゲートの近くで暗闇に瞬くCビーム、そんな思い出も時間と共にやがて消える。雨の中の涙のように。死ぬ時が来た。」
(原文:I’ve seen things you people wouldn’t believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate. All those moments will be lost in time, like tears in rain. Time to die.)

命は限りあるもので、思い出や記憶はすべて儚く消えて残らない。

ロイはなぜデッカードを助けたのか。見殺しにして、自分が誰にも覚えられずに死ぬよりも、自分の生きた証=思い出を遺したい、という気持ちがあったんじゃないかな。何とも人間臭い、人間らしい感情だ。

・この後のデッカードの行動が、明確にロイとの対比、アンサーとして描かれている。余命いくばくのレイチェルを連れ、逃走する。思い出は儚く消え、命は限りあるとしても、それは今を精一杯生きない理由にはならない。やっぱいいね、人間賛歌は。