DISC REVIEW (original) (raw)

GRAPEVINE
「NINJA POP CITY」

ー僕らとバインのこれからー

雑誌のインタビューでどうやらこれはバインのシティポップ批評から始まったとのこと。すでに「実はもう熟れ」で現代のシティポップへの揶揄は表現としてはあったのだが。ここ数年のボカロやシティポップの泡沫のような一過性の盛り上がりに少し影が忍び寄ってきた今日この頃。結局は膨大な音楽ライブラリがあったとして選ぶ側の日本人DNAに在る一定のフィルターがかかっている限り同じ物を選ばされてしまっていたのだ。

歌詞の中でまず1発目に飛び込んでくるのは《仮想現実》イコール「NINJA POP CITY」ということなのだろう。視聴率の様に大量の白玉に少量の黒玉を混ぜて掬うと黒玉の割合はどこも同じ。ネットという広大な街と思っていたものがすべての場所は、ほとんどが似た様な街の羅列に騙されていただけ。バインが音楽評論家に揶揄されていた言葉を借りるなら、踊り場でグルグル回っていただけだった、みんな。

でもそれでいいんだと思うみたいな軽さがこの曲にはある。確かにタイトルネーミングの面白さから見ると「ねずみ浄土」や「雀の子」の延長線上にあるけど、歌詞の持つ意味合いは「ナポリを見て死ね」「MISOGI」みたいなほんとはヘヴィな事をタイトルの面白さで隠してるのに近いと思う。楽曲としては「FLY」や「EVIL EYE」の『déraciné』以降『新しい果実』以前の、最もバインらしいロック感を、それも密かに放出した楽曲だと言える。

バインが何故忍者を擦ってきたのかは知らんし、どっちでもいい。忍者の世間一般のイメージは悪者、だからシーンにおいてバインはやっぱりワルモノ確定です。でもある人にとってはイイモンでもある。それでいいのだ。あとこれからのバインとの関係性もどうなるかわかってきたね。《刃物になって行け》これがバインです。そして"忍"という漢字の成り立ちは心の上に常に刃物を乗せている状態を表しているらしい。バインとのこれからは常にスンドメですね。これでいいのだ。