Fall Of Serenity 『Open Wide, O Hell』 (original) (raw)

前回のCD感想にて、DARKNESS EVERYWHEREという、国内盤の出てない比較的マイナーどころのメロデスバンドの新譜を取り上げたので、その流れに乗って同様のアルバムについて書いてみます。

ドイツのメロディックデスメタルバンド・Fall Of Serenityの、今年発表された5thフルアルバム。

このバンド、僕は全然知らなかったのですが、キャリアは結構長いらしくてですね。前身バンドの結成は1995年、今のバンド名に改名したのが1998年と、もう30年近く前から存在するバンド。

しかし音源のリリースは長いことされなかったようで、本作はなんと17年ぶりの新作らしい...。どこの大御所バンドだよ。

渋谷のタワーレコードにて本作を見つけ、「メタルコア黎明期から活動していて、メロデスの要素もある」みたいなポップが書かれており、「メロデス色濃いメタルコアなら、きっと僕好みの音なんだろう」と思って手を出してみた次第です。

そして聴いてみて、事前に思っていた音と違いました。てっきり北欧メロデスから影響を受けたリフを主体とする、メロディックメタルコアなのかと思っていたのですが、こりゃ完全にデスメタルの音では。

少なくとも僕が聴いた感じでは、コアと名のつくメタルにあるような、縦ノリを感じさせるヘヴィなグルーヴ感は希薄。ズンズンと響く低音よりも、ザラっとした質感のあるアンダーグラウンド臭を漂わせるギター、重さより速さを重視したドラムも相まって、メタルコアらしいと感じることは、少なくとも僕はなかった。

アルバム中ずっと不穏なで不気味な空気感を醸し出すギターに、低音が強調された恐ろしげなデスヴォイスが畳み掛ける構成で、「地獄」とか「邪神」とか、そんな言葉を想起させるような作風。明朗さや透明感はまったくと言っていいほどない。無骨で恐怖感たっぷり、アングラなデスメタル

ただ、高速のドラムビートに乗って刻まれるトレモロリフや、なかなか出番の多い退廃的な雰囲気のリードギターには、なかなかキャッチーというか、哀愁の含まれた旋律が聴けるのがポイント。ただ恐ろしいだけではない、悲しみの感情表現がちゃんとされている。陰鬱なまでの暗く、悲しい音世界がず〜っと広がっていきます。

M2「Darkness, I Command」なんかは、これだけダークで危険なムードをプンプンに放っておきながら、アップテンポなリズムとリフのコンビネーションは、もはや「キャッチーなメタル」とすら言えます。リードギターが目立つパートも、もの悲しさが充分に表現されていて良い。

続くM3「I Don't Expect I Shall Return」も、雄大であり悲しくもあるようなギターフレーズが良いし、ブラストビートとメロウな高速リフの突進が、メロディックブラックメタルすら想起させるM6「Chaos Reign」、本作の中ではザクザクとした攻撃性を増したリフと、泣きの哀愁リードが舞うM7「A Winter Song」の並びも、たっぷりと悲しみが湛えられている。哀愁派にはたまらんでしょう。

アンダーグラウンドの邪悪な空気感はプンプンで、ヴォーカルも極悪、それでいて刻まれるリフには哀愁たっぷりで泣きの美学がある。デスメタルに邪悪さも、悲壮感も求めている人の感性に充分響くのではないでしょうか。ホント今年はメロデスの新作が良いな。

個人的に本作は

"コアなグルーヴ感は無い、ダークでアングラな高速デスメタル。邪悪な中に哀愁をたっぷり含んだリフの存在が大きい"

という感じです。

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