【食堂のおばちゃんの人生相談】51歳・自営業のお悩み (original) (raw)

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

【お悩み/PNルート66さん(51)自営業】

数十年ぶりに中学の同窓会に参加したら、昔はそれなりに格好よかった級友たちが完全にオヤジ化し、「これからは歯と髪の毛、どっちを取る?」という話題で盛り上がっていた。楽しいけど、哀しい。この気持ちを、どうしたら?

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【山口先生のお答え】

実は私も来月高校の女子会(とは名ばかりの全員還暦オーバー)をやるんですよ、地元の錦糸町で。まあ、我々の場合は年に何回か集まっているので「あの人、誰?」みたいな事はないですが。

う〜ん、そうですか、男性は「歯か髪か」ですか。女性は「シワか脂肪か」で悩むんですよ。人間、一般的には35歳までは足並み揃えて老けて、その後は個人差が出るらしいです。確かに当年齢の俳優さんを見比べると、35歳までは同年齢に見えても、50、60になると老ける人と若い人の差が広がりますね。

それと、現役の人は若いです。70歳の現役組とリタイア組は明らかに雰囲気が違います。母方の叔父は今年87歳で、日本最高齢現役社交ダンス教師なのですが、この年で背筋は真っ直ぐだし、いまだに1日何時間も踊ってます。1歳しか違わない母が棺桶に片足どころか両足突っ込んで縁に腰掛けてるのとは大違いですよ。

ルートさんが老いにやるせなさを感じる気持ちは良く分かります。10年前に出来たことが出来なくなるのは寂しいですよね。でも、段々年取って死ぬ方が幸せじゃありませんか? これが逆に段々若返って、青年から少年、幼児、赤ん坊、胎児になって死ぬとしたら、きっと辛いですよ。

年を取るということは、避けられない死に向かって1番マシなルートをたどっているのだと思って、どうぞ良い旅をして下さい。

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中