【食堂のおばちゃんの人生相談】51歳・会社員のお悩み (original) (raw)

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

【お悩み/勿忘草さん(51)会社員】

若いころは初めて会った人の名前と顔をよく覚えているほうだったが、50代に入り、職場で一緒の部下の名前さえ出てこなくなって困っている。「キミ」とか「アナタ」と呼ぶのは避けたいのですが……。

関連記事:【食堂のおばちゃんの人生相談】52歳・会社員のお悩み

【山口先生のお答え】

……ぐっ。一言もありません。同じです。私も、人の名前をしょっちゅうど忘れします。一年間会わないだけで、長年一緒に働いていた人の名字が出てきません。あなたは50代から名前が覚えられなくなったそうですが、私は40代初めからダメでした。

所属していた脚本の勉強会で、モチヅキ君という新しい会員に「山口さんて、人の名前、全然覚えないですよね」と指摘され、あわてて隣席の人に「そんなことないわよ。ねえ、ヤマダ君?」と言ったら「僕、カワイです」と返され……。ヤマダ君もカワイ君も、10年近く一緒に勉強した仲間なのに!

そう、だからかつての丸の内新聞の新年会でも、顔は覚えてるのに名前が出てこない人ばっかりで、ホント、焦りまくってましたよ。

それで、最後の手段ですが、部下の方の名前を紙に書きましょう。受験勉強の英単語を思い出して下さい。目で見て覚えた単語はすぐにスペルを忘れるけど、書いて練習した単語は結構忘れないでしょう? あの要領で部下の顔を思い浮かべて、何度も書くんです。そうすれば手が思い出してくれます。

まあ、とっくに受験も終わったのに、今更漢字の書き取りなんてしたくないですけどね。それでもやっぱり、訊くは一時の赤っ恥。お互いに頑張りましょう!

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中