イーロン・マスク氏、183億円献金で“第2のキッシンジャー”になる! 「政府効率化省」トップ就任で手にする強大な権限 (original) (raw)
11月15日、トランプ氏の邸宅でおこなわれた祝賀会には、マスク氏の姿もあった(写真・AP/アフロ)
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11月13日(日本時間)、実業家のイーロン・マスク氏(53)は、Xにこう投稿した。
マスク氏は、ドナルド・トランプ次期米大統領(78)のもとで新設される「政府効率化省(DOGE)」のトップに就任することになったのだ。
政府の歳出削減や規制緩和などを進めていくという政府効率化省とは、どんな組織なのか。元NHKワシントン支局長で、外交ジャーナリストの手嶋龍一氏が語る。
「じつは、政府効率化省は正式な政府の機関ではなく、表向きは大統領への助言機関にすぎません。ただトランプ氏は、この組織を、よくあるような政府の諮問機関にするつもりはない。“トランプ革命” の推進エンジンにすべく、強大な権限を与えるのでしょう。そのために国務省、国防総省といった権威ある省に匹敵する重厚な名前をつけたのです」
マスク氏は、大統領選で約1億1800万ドル(約183億円)をトランプ氏の支援団体に献金している。日本のメディアは、今回の起用を「論功行賞人事」だと報じるが、手嶋氏は、次期大統領のさらなる意図を指摘する。
「アメリカでは、大統領選での献金や票集めに功績のあった支援者に、政府の要職を与える“腐敗システム”が常態化しており、中小国の大使ポストがそれに充てられます。しかし今回、トランプ氏はマスク氏を『政権の目玉』となる組織のトップに起用しました。2億人のXフォロワーを持ち、経済界で数々の革新を巻き起こしたマスク氏の力を、ブルドーザー役として利用する狙いでしょう」
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マスク氏は大統領選挙中、連邦政府の支出を「2兆ドル(約308兆円)削減できる」と主張していた。マスク氏は、本当に大鉈を振るうことができるのだろうか。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が語る。
「トランプ氏もマスク氏も、アメリカ政府の官僚が多すぎると考えており、政府職員を削減することがメインの仕事になると思います。トランプ氏に言わせると、『官僚は選挙で選ばれていないのに、アメリカの政策を仕切っている “闇の勢力” (ディープステート)』。なにより、その権力を奪いたいのです。社会保障や福祉、国防にも手をつけるほか、教育省も撤廃する予定です。マスク氏は、Twitter(現X)の買収後に、社員の数を8割削減しました。トランプ氏は、このときと同じことをしてほしい、と期待しているのです」
■政府との契約で10年間で2兆3000億円超を稼ぐ「スペースX」
マスク氏が率いる電気自動車メーカーの「テスラ」や、宇宙開発企業の「スペースX」にとっても、政権入りは多大な利益をもたらすことになる。
「マスク氏がアメリカ政府との契約で稼いでいる額は、宇宙開発企業のスペースXだけでも、10年間で150億ドル(2兆3000億円)を超えています。Xも、バイデン政権でアカウントが凍結されていたトランプ支持者たちが戻ってくるでしょう。さらに、マスク氏のビジネスは米政府機関の調査対象になっています。マスク氏がトランプ氏に接近することで、司法省、証券取引委員会、全米労働関係委員会などがおこなっている調査を、今後は回避できる可能性も高くなるでしょう」(山田氏)
マスク氏が政治権力を手にしたとき、どんな存在になるのか。手嶋氏が語る。
「彼は『アメリカのありようを変え、世界のありようまで変えていく』という、燃えるような野心を秘めた人物です。そのためには、権限が明確に定められている国防長官や国務長官といった既存のポストより、まったく新しい機関のほうが、大胆な改革にはよほど腕を振るいやすいのです」
政府効率化省は政府機関に属さないが、そのほうが改革の推進力は大きいという。
「国務長官に就くには、上院の外交委員会の承認を得なければなりません。しかし、今回のマスク氏の起用は、そうした議会の承認は不要です。正式な省ではないので、『政府効率化省設立法案』を議会に提出して通す必要もありません。トランプ氏の独断で、6兆5000億ドル(1000兆円)といわれる膨大な政府支出を “効率化” する役割をマスク氏に委ねたのです」
そして手嶋氏は、20世紀外交史に名を残し、2023年に100歳で逝った人物の名を挙げた。
「ヘンリー・キッシンジャーは、ニクソン政権の国家安全保障担当大統領補佐官として、ニクソン外交のすべてを取り仕切りました。彼も、今回のマスク氏が就くポストと同様、ホワイトハウスが直轄する組織に属し、議会の意向に伏する必要はありませんでした。では、影響力が限られていたのか。実態は真逆でした。米国の外交史上、もっとも大きな影響力を発揮したのです。ニクソンの権限を存分に利用し、中国との電撃的な和解を成し遂げた実績が、それを物語っています。彼を快く思わず、国務省や連邦議会に報告しろと当時の国務長官は抵抗しましたが、そんな人物の名前など、いまや誰も覚えていません。大統領制にあっては、最高権力者との距離の近さこそがすべてなのです」
11月15日、緊張関係が続くイランの国連大使と突如、会談したと報じられたマスク氏。
“第2のキッシンジャー”となり、世界を変えていくつもりなのか。