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DV8 台北プライベートアイ2 (文春e-book)

『DV8 台北プライベートアイ 2』 紀蔚然著 舩山むつみ訳を読む。

私立探偵・呉誠(ウーチェン)。以前は劇作家で大学教授だったが、鬱病とパニック症候群を患い、辞めてしまう。ついでに妻とも別れる。前作では、難事件を解決したが、その後、探偵稼業は順調とは言えない。ま、浮気調査とかは断るとかしているし。同業他社のヘルプで日銭を稼ぐ日々。

出だしの「おれ」で語られるモノローグを読むだけで、たちまちハードボイルドの世界へ吸い込まれる。

探偵は台北郊外の新北市北西部、淡水に引越した。「DV8」は、そこにあるバー。ジョニ・ミッチェルジャニス・イアンノラ・ジョーンズなどの楽曲がかかっているごきげんなバー。オーナーのエマ目当てで通っているのは、探偵だけではない。エマはバツイチ。男の子がいる。

「DV8」で呉誠は、安安という若い女性から人探しを依頼される。20年前のことだけに手間取るかと思いきや、鼻が利くのか、尋ね人を見つける。で、一件落着ではない。それが端緒となって呉誠によって「容疑者死亡で解決した連続殺人事件」の真実が晒される。安安は20年前の事件でトラウマを負って、探偵同様、パニック症候群を抱えている。そのトラウマとは。もつれにもつれた糸を丹念にほどいていく。小さな波紋が広がって最後には大きな波紋となる。

事件担当の元警察官や若い頃はチンピラだった人、土地成金の人など、呉誠を取り巻くスタッフが少年探偵団ならぬ中年(老年)探偵団って感じで真相解明に立ち向かう。
芸達者な脇役で固めたミステリードラマのよう。

エマは、呉誠の恋人兼名アシスタントとして、再び、パニック症候群に襲われ、弱った彼を支える。

台湾の街の風景や新しい人気スポットなども紹介され、ストーリーに花を添える。

探偵はディクスン・カーのような本格ミステリは、あまり好みではない。ちなみに、好きなミステリ作家は。
「おれは警察の捜査の過程を丁寧に追うタイプの小説が好きだ。スウェーデンのヘニング・マンケル、アメリカのマイケル・コナリー、それに日本の横山秀夫の三人がお気に入りの作家だ。彼らの小説にならって、おれも調査をするときには一歩一歩進むことにしている」

かような蘊蓄も随所に。元教授ゆえ人文・哲学系のお硬い本も読む。

探偵とエマの行方は。

見出しは、ダリル・ホール&ジョン・オーツの楽曲「プライベート・アイズ」(Private Eyes)の歌詞から引用。

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