DJって楽しいの? どうやって始めたらいい? 島村楽器とui_nyanにDJの魅力とオススメ機材を聞いてきた (original) (raw)

皆さんは「DJ」に、どんなイメージを持っていますか? 「ヘッドフォンしてキュッキュしている人」「後ろの方で音楽を流している人」のようなおぼろげな印象しかない人も多いかもしれません。でも実はDJは、とてもかっこよくて、楽しいものなのです。まずは以下をご覧ください。ベン・クロックという有名なDJのプレイの様子です。

最近は、いわゆるクラブミュージックだけでなく、アニメソング(アニソン)のDJ文化も盛んになってきました。その分、DJを見る機会は増え、実際にDJをする人の裾野も広がってきました。

昔はDJを始めるにも、ひとそろえで10万円以上の高価な機材を買う必要がありました。現在は、その気になればスマホのアプリでもDJが始められます。しかし、少しだけお金を出すと、より「本物っぽい」DJ遊びができるようになります。

今回は多くのDJ機材を取り揃える楽器店の島村楽器さんと、アニソンDJとして活躍してこられたui_nyanさんに「DJってどうやって始めたらいいの?」を伺ってきました。さあ、DJを始めましょう!

島村楽器 新宿PePe店にやってきた

── ということで前半パートは楽器屋さん編です。島村楽器 新宿PePe店にやってきました。

湯村 デジタル楽器全般を担当している湯村です。

── すごいDJっぽい雰囲気。

湯村 島村楽器に入社して、ちょうど10年になります。DJ機材の他、シンセサイザーや音楽制作系の機材も担当しています。

── 10年! これは期待できる。湯村さんもDJをされるんですか?

湯村 いえ、私自身はDJやりません。

── そんな馬鹿な。

湯村 もともとはギターやピアノを個人でやっていて、DTM(デスクトップミュージック)ソフトも触っていたんですけど、DJはやっていない状態で島村楽器に入りました。とはいえ楽器を売っていますので、DJ機材のことは分かります!

── 大丈夫かな……。

そもそもDJとは?

DJとは、簡単に言うと、クラブやパーティーなどで音楽をかけて、場を盛り上げる人です。2つ以上の音源をかけられる機材を用いて、音楽を途切れさせずに「つないでいく(ミックスする)」ことが多いのが特徴です。場の雰囲気に合わせた曲を選び、スムーズに曲をつないでいくのが大事です。その他、ジャンルによってもパフォーマンスは微妙に変わります。例えばよくDJでイメージされる「スクラッチ」は、主にヒップホップのDJのテクニックとして知られています。

かつては、アナログターンテーブル2台にそれぞれアナログレコードをかけて、DJミキサーで音量や音質を調整してパフォーマンスすることが主流でした。しかし近年は、CDJ(DJ用のCDプレイヤー)を使ってCDやUSBメモリに入っている音源を使ったり、音源が入ったパソコンにDJコントローラーを接続してパフォーマンスしたりすることが多くなっています。とはいえ、現在もアナログにこだわるDJもいます。

初心者は、3万円台のDJコントローラーがオススメ

── DJ機材は、どんな人が買っていかれることが多いですか?

湯村 今も昔も、買っていかれるのは若い方が多いですね。私が入社した10年前だと、横のつながりで、DJをすでにやっている人が友達を紹介してくれてというのが多かったです。「こいつにもDJ機材、教えてやってくださいよ」みたいな。今は、DJの友達はいないけど、自分で調べて、この価格から始められるんだ、と飛び込んでくる人も増えてますね。

── どれが良いか、分からないから教えて、という人も結構いるんですね。

湯村 なんとなく興味があるけど分からないので、という人は結構います。最近は昔より安くDJが始められるので、良い時代になったと思います。

── 楽器を売っている湯村さんから見た「DJの楽しさや魅力」って、なんだと思いますか?

湯村 簡単なDJプレイなら、少し操作を覚えれば比較的簡単に楽しめる、という点が魅力のひとつだと思います。新しく楽器を始めるより圧倒的に、すぐに楽しめるようになるのではないでしょうか? あと、自分が好きな曲を大音量で流して、つなげて、みんなが盛り上がってくれるときが、やっぱり一番、面白いポイントだと思います。

── ありがとうございます。では、DJ初心者にオススメの機材を教えてください。パソコンにDJコントローラーをつなぐタイプが多いのかなと思いますが。

湯村 はい。昔はアナログターンテーブルとミキサー、あわせて最低10万円くらいかかるものでしたが、現在はパソコンにつないで使う「DJコントローラー」が売れています。エントリーモデルだと1万円代もありますが、人気があるのは3万円前後のものです。特に売れているのが Pioneer DJ さんの「DDJ-RB」です。

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湯村 DJソフトウェアの「rekordbox dj」の製品版も付いてきて約3万円ということで、パソコンをすでにお持ちの方であれば、あとはこれを買えば基本的にはDJができます。音も、パソコンの内蔵スピーカーから出せますので。

── 体験版ではなく製品版のDJソフトがちゃんと入っているのは良いですね。

湯村 他には、Pioneer DJ さんの「DDJ-WeGO4-K」も人気です。スマホやiPadにもつなげられるDJコントローラーです。最近はスマホ用DJアプリもありますからね。

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オモシロ機材、光るDJコントローラーとUSBライト

── 個人的に気になる機材などはありますか?

湯村 クリスマスプレゼントコーナーにあるんですけど……。

── クリスマスプレゼントコーナー!

湯村 Numarkさんの「Party Mix」です。DJコントローラーなんですけど、前面にLEDライトがついていて、光るんですよ。

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── 光るのはずるい! 結構コンパクトですね。これは売れてますか?

湯村 売れてますよ。約1万円いう価格も魅力です! あとはこちら、RolandさんのDJコントローラー「DJ-808」も話題ですね。

── Rolandさんというと、TR-808などの電子音楽の機材を作ってきたメーカーさんですよね。そこがDJコントローラーを作るとこうなるのか……。

湯村 はい。リズムマシンなどの電子楽器とDJコントローラーが融合した新しいDJツールです。

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湯村 このDJ-808に今付けているのが、ION AUDIO さんの「Party Ball USB」。音に合わせて光るUSB接続の小さなライトなんです。

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── これは盛り上がりますね!

湯村 これは1,980円です!

── 安い!

湯村 本体内蔵マイクが感知して、ビートに合わせて光るんです。

── これは欲しい。

「DJがもっと身近になってほしい」

── 今後、DJ機材を売る島村楽器さんとして、DJの世界がこうなっていくといいな、などありますか?

湯村 「DJって何をやっているのか分からない」とか「なんとなく怖い人が多そう」というイメージは、まだまだあるかもしれませんが、皆さんにとってDJ文化がもっと身近になっていくといいなと思います。

── 多くの人にDJをしたり、聞いたりする楽しみを感じてもらえると良いですよね。

湯村 いきなりクラブに行くのが怖かったら、楽器屋さんに来てください(笑)。島村楽器は、専門店ではなく楽器小売店としては、業界でもかなり早い段階でDJコーナーを展開したお店です。これからも頑張っていきます!

── ありがとうございました!

アニソンDJ ui_nyanさんに聞いてみよう

── 楽器屋さんに話を聞いた後は、実際のDJにもお話を伺おう! ということで、本日はアニソンDJとして有名なui_nyanさんにお聞きします。

ui_nyan こんにちは! 現在DJ活動休止中のui_nyanです。

── そんな!!!

ui_nyan 大丈夫です、DJについての情報発信はこれからもしていきますから!

ういにゃん|フリーランスUnityエンジニアDJ Youtuber (@ui_nyan) / Twitter

── 助かった……。ちなみに、どうして休止されたのですか?

ui_nyan 理由は結婚です! 2016年11月21日に結婚しまして、本業の仕事と家庭に専念することにしました。

【おしらせ】
本日 平成28年11月22日、
わたくし @ui_nyan@icedoll_MA と入籍いたしました!
今後とも変わらぬお付き合いのほどを! https://t.co/YsqsqEiZan pic.twitter.com/UralITmIeY

— ✨私がういにゃんだ✨ (@ui_nyan) 2016年11月22日

── おめでとうございます!

コスプレ系のパーティーからDJへ

── 大変めでたいところではございますが、今回は「DJってどうやって始めたら良い?」という企画でして、まずはui_nyanさんがDJを始められた時期や経緯を教えてください。

ui_nyan DJとして活動するようになったのは2007年です。クラブに行き始めたのはそれよりも前で、1990年代からです。

── 早い!

ui_nyan 僕はコスプレから入りまして。コスプレ系のパーティーに行ってみたら楽しくて、そこでDJをしているのを見て、やってみたいなと。もともと音楽が好きで、ドラムはやっていたんですけど。それで2000年ごろ、20歳くらいのときに、初めてCDJを触ってみたんです。ただ、当時はまだCDJが出始めで、高いし、まだ今より扱うのが難しい機材だったので、一度諦めてたんです。

── まだ過渡期でしたね。

ui_nyan それからしばらくして、Native Instruments の「Traktor」というPCDJ(編注:パソコンでDJをすること)用のソフトがあることを知って、触ってみたらすごく簡単で。これならやれる、DJやろう!となったんですよね。

DJソフトウェア

ui_nyan よく遊んでいたイベントでVJをやらせてもらっていたんですけど、そのつてでDJもさせてもらって。気付いたら「アニゲのん!」というアニメ・ゲーム系のクラブイベントでもDJをやってみないかと言われ、最終的には「アニゲのん!」の主催もすることになりました。

アニゲのん! AnigenoM!

── すごい……。

DJは、曲の背景や文脈を伝えられる

── ui_nyanさんが考える「DJの楽しさや魅力」は何だと思いますか?

ui_nyan 言葉にするのは、なかなか難しいのですが、自分の選んだものを、ものすごく効果的に伝えられる表現手法だという部分ではないでしょうか。曲単体で聞くよりも、こういうつながりで聞いていくと新しい魅力が見える、という側面がDJにはあると思います。この曲とこの曲は似てるとか、このアニメの曲と別のアニメの曲は実は同じ人が作曲しているとか、そういったつながりや文脈もみんなに伝えられます。「音楽にはこういう聞き方もあるんだな」と思ってもらえるのが魅力だと思います。

── ただ曲をかけるというより、その背景や文脈を踏まえてつないでいって、伝えるということですね。

ui_nyan そうですね! 曲の歴史を伝えられるというのも良いところだと思います。例えば『ウィッチクラフトワークス』というアニメがあるのですが、エンディングテーマの「ウィッチ☆アクティビティ」という曲は、YMOが元ネタになっているんですよね。

── ジャケットも、クラフトワークのアルバム『人間解体』のパロディですね。

【楽天市場】 ウィッチ☆アクティビティの検索結果

ui_nyan そうそう。他にも『まりあ†ほりっく』というアニメのエンディングテーマは「君に、胸キュン。」という曲で、YMOの同名曲のカバーだったり。そういう同じ元ネタの曲をつないだりとかすると、面白いですよね。

YMOとクラフトワーク

YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)は1978年に結成された、細野晴臣・高橋幸宏・坂本龍一による音楽グループです。テクノポップのブームを作り出したグループで、日本はもとより世界中のテクノやクラブミュージック、DJカルチャーに大きな影響を与えたと言われています。

クラフトワークは1970年にドイツで結成された音楽グループ。電子音楽をポップミュージックに昇華した存在として、テクノやテクノポップなどの神様的存在とされることが多いグループです。

ui_nyanが語る「初心者オススメ機材」

── 初心者がDJを始めるにあたって、どのような機材がオススメだと思いますか?

ui_nyan 一番手っ取り早いのは、スマホに無料のDJアプリをインストールすること。「djay」というアプリがオススメです。

DJ Software and DJ Apps | Algoriddim

ui_nyan まずはこれでDJを体験してみると良いと思います。ただ、あんまり「DJをやっている感」が出ないんですよね。

── たしかに。

ui_nyan はたから見ると、単にiPadで遊んでる人に見えてしまう。なので、やっぱりDJ用の機材を買うと良いと思います。オススメはやっぱり「DDJ-RB」かな。

── やはりDDJ-RBですか。島村楽器さんも同じことを言っていました。

ui_nyan パソコンは必要ですが、DJソフトの rekordbox dj の製品版が入っているのはすごく良い。単体で買うと1万5000円くらいするんですよ。DDJ-RBは3万円くらいで、1万5000円のDJソフトがついてくるので、お得です! 僕はDDJ-RBが出る前に、ソフトを単体で買ってしまいましたが……。

DJは動け!

── DJを始めて、実際にイベントなどに出ることになった場合、クラブなどに置いてあるのはCDJ-2000とDJMであることが多いわけですが、どうやって練習したら良いのでしょう?

ui_nyan 持っている友達がいるといいんですけどね。クラブで、練習用のレンタルブースのサービスがあるところに行くといいかもしれません。渋谷の「nagomix」や秋葉原の「MOGRA」、川崎の「月あかり夢てらす」は、DJブースレンタルデーがあるので、予約して行ってみてください。

https://nagomix.co.jp/
MOGRA 秋葉原
https://tsukiyume.com/

ui_nyan PCDJの人も、ぜひレンタルブースで音を出してほしいんです。聞こえ方とかも違うし、クラブで音を出すときに「音量はここまで」とか「ここに線をつなぐ」とかいったルールもあるので、練習しておくと良いと思います。

── アナログDJの時代は、耳で聞いてピッチ(曲の速さ)を合わせるということをしていたわけですが、デジタルDJはSyncボタンを押すと曲の速さはそろってしまうし、じゃあ何をする人なのか、という話があると思います。ui_nyanさんはデジタルでDJをする際に、気にかけていることはありますか?

ui_nyan ひとつは、さっきDJの魅力で話した「選曲」のこだわりです。もうひとつは「動き」ですかね。

── 動きですか!

ui_nyan PCとDJコントローラーだと、ずっとPCの前から動かずに、画面を見ながらDJしちゃうことがあるんですよね。もっと、DJ自身が一番踊らないと、フロアにいる人も踊ってくれないですよ。自分がDJするときは「自分が一番踊っている!」というくらい動きます。やっぱりちゃんとしたDJミキサーでプレイすると、動きがつきやすくて良いですね。人がダイナミックに動くと音もガラッと変わる、というのは視覚的にも楽しい。やっぱりDJも「演奏」なので、そこを意識していますね。

── たしかに、ツマミいじりとか。

ui_nyan 重要ですね! ジェフ・ミルズ(編注:世界的にも著名なテクノDJ)なんて、常にツマミをいじってるじゃないですか。「ばばばばば!」って。あとは、僕はやらないですけど、コスプレしたり、マイクで叫んだり、曲を止めて漫才を始める人もいたり。DJ+何かのパフォーマンス、という人もどんどん出てきていると思います。

── 最後に、DJに興味を持った人、これからDJをやってみたい人に向けて、メッセージをお願いします。

ui_nyan とにかく手を動かして、前に進んでみてください! 失うものはちょっとのお金と時間だけなので、興味をもったら、まずはスマホにアプリのdjayを入れるとか、1万円出して Party Mix を買ってみるとか。絶対に楽しいので!

── ありがとうございました!

おわりに

ということで、島村楽器さんとui_nyanさんにお話を伺いました。

記事中でも何度か出てきましたが、昔に比べて、DJを始めるにあたって、金額的にも、環境的にも、ハードルはかなり下がったと思います。

DJを始めるのは簡単になりました。しかし同時に、とても奥が深いものでもあります。まずは、ぜひ機材をそろえて、あなたの好きな曲をかけて、みんなと楽しんでみてください!

文と写真・岑康貴