競馬雑学:スローペースなのに前が残らないレース=瞬発力勝負 (original) (raw)

ちょっと知ってるだけで玄人っぽい会話ができるようになる雑学。

今日はスローペースなのに、なぜ差し・追込みが台頭するのか、と言う点を考えてみます。

スローペースは基本「前残り」

通常1000mを60.0秒程度で推移するレースを平均ペース、これ以上時間が掛かるとスローペースと分類されます。ただ二歳戦では多少タイムが遅くなり61.0秒くらいでも平均ペース、62.0秒くらいからスローペースという分類になることもあります。また下級条件でもこのペースをはかる秒数は多少遅めになります。

スローペースというのはレースに出走する馬全体がゆっくり走っているということを意味します。そのため先頭を駆けている逃げ馬も余裕のあるゆっくりめのペースで走っていることになりますので、レース終盤まで楽に走っているということを意味しています。
このため、逃げ馬の逃げ切り、先行馬の押し切りと言った具合に、前を行く馬は最後まで脚が止まらず、後続の差し・追込み馬が前を捕まえることができない、「前残り」というレース展開になることが一般的です。

スローペースなのに差し馬が台頭する

スローペース=前残り、という関係性は前述の通りです。
しかし、レースを観ていると、スローペースだったレースが全て前残りで決まっているわけではないことに気づきます。

例えば2020年のスプリングS、コントレイル世代の皐月賞前哨戦でガロアクリークが勝ったレースですが、逃げ馬アオイクレアトールが序盤からペースを握って1000m通過63.2秒とスローペースに持ち込みました。二番手に付けたシルバーエースも仕掛けてくるわけでもなくゆったりとした流れでレースは進んで行きます。

序盤で逃げたアオイクレアトールだけでなく二番手以下シルバーエース、三番手エン、四番手ココロノトウダイと前に行った馬が楽なペースでレース前半から中盤までを引っ張ったのに、最後に上位を占めたのは(早目の仕掛けをしてきたとはいえ)中団から後方待機をしていたガロアクリークにヴェルトライゼンデ、サクセッションにファルコニアといった中団から後方待機の馬でした。
また、このレースは上がり三ハロンのタイムが(ほぼ)速い順に上位を占めており、「上がりの脚が速い馬が上位だった」ということが見て取れます。

これが、スローペースからの瞬発力勝負、と言われるレースです。スローペースでも前が残らないレースというのは、この「瞬発力勝負」になっているレースがほとんどです。

上がりの脚が重要

スローペースからの瞬発力勝負は速い上がりの脚が使えることが勝利の条件となってきます。

上がりとは、以下を参照
競馬雑学:上がりってなに? - SpecialなWeekを目指す競馬日記

つまり上がり三ハロンでどれだけ速く走ることができるかという競走になるということです。

これは、レースの出走馬全体が楽なペースで序盤から中盤を走ることによって、勝負所から最後の直線、ゴールまでのスパートでどれだけ速く走れるかだけが問われるレース展開になることがある、と考えておくと良いかもしれません。

つまり、スローペースが見込まれる出走メンバーだった場合、スローからの前残り(逃げ切りや前め押し切り)だけで狙うわけではなく、スローからの瞬発力勝負になる場合、どの馬が台頭してくるか、と言う点も検討するといい、ということです。

前述の2020年スプリングSの他にも、春のヴィクトリアマイルの前哨戦である阪神牝馬Sはコース形態からスローペースからの瞬発力勝負になることが多いレースです。
もちろん、前行ったもん勝ち(つまり前残り)の年も多いですが、上がり三ハロンのタイムが速い馬が上位を占める(今回の瞬発力勝負)ということも多い、という傾向が見て取れるレースです。

馬の能力比較で予想的中できるのはミドルペースだけ、そう考えると、スローペースになったときのレースはどこに注目すると的中に近づけるかというのが少し分かってくるかもしれません。