【KNOCK OUT】石井宏樹&紗綾が語る決勝戦見どころ「両国のメインとして最高のカード」 - スポーツナビ (original) (raw)

「いま行かないと負ける」気持ちが激しい打ち合いの理由

――勝次選手は続いての準決勝、前口選手との試合も再び激しい打ち合いとなりました。

石井 前口選手とやる前から「もうあんな打ち合いはしたくない」って勝次は言っていました。前半は打ち合わないようにして、本人は終始それをやりたかったんだと思いますが、やっぱりもらってしまって“行かなきゃ負ける”っていう気持ちに結果なってしまったんでしょうね。最終的には行って勝てたのでよかったし、勝次はそれで今いい結果が出ているのですごく流れは来ていると思います。たぶん格闘技人生で今が1番流れが来ているんじゃないですかね。だからトップになるチャンスは今だと思います。

――先輩である石井さんから見て、勝次選手は打ち合わず冷静に戦うのと、危険を冒して打ち合いに出るのと、どちらがより良さが出るのでしょうか。

石井 結果論ですけど、行った方が彼の味が出ています。目がいいので、どうしても今までは見てしまうというか、引いてしまう試合が多かったんです。相手をよく見てテクニックを使って勝っていくタイプだったんですけど、今回のトーナメントが始まったらその良さも出しながら、自分から行くスタイルに変わってきたと思います。行った結果、自分も倒れていますけど、起き上がってさらに前へ出て倒しに行っているので、その気持ちの強さ、姿勢というのはトーナメントですごく良い収穫になっていると感じます。

――涙したという勝次選手と前口選手の試合について、紗綾さんもう少し聞かせてください。

紗綾 もう最後の打ち合いは映画を見ているようでした。すごく感動しましたし、こういう打ち合いはこれから見られるのかなっていうぐらいの衝撃を受けました。ああいう打ち合いってどういう場合になるんですか? やっぱり意地ですか?

石井 もちろん意地のぶつかり合いなんだけど、“いま行かないと負けちゃう”ってお互いに思っているからああいうことが起こりうるんだと思います。

――石井さんの現役時代は、どういう場合に打ち合いへ出ていたのでしょうか。

石井 僕はどちらかというと殴られたくなかったので(笑)、よけて当てるようにしていたんですけど、キャリアの後半は行くようになりました。行くとやっぱり自分も倒されるんですけど、倒せるようになったんです。やっぱり引いてしまうと判定勝ちはできるけどKO勝ちは少なかったりする時期があって、なんでだろうって考えた時、やっぱり行かないとKOって勝ちでも負けでも生まれないんです。
もし自分から行って倒されてKO負けになっても、その場合は納得がいくんです。でも行かないで見て倒されると、もう悔いが残ってしょうがないということを現役の終盤で気付きました。それで集大成になったゲーオ戦(14年2月「NO KICK NO LIFE」)は行った結果、ハイキックで2ラウンドKO負けをしてしまいましたが、あれは悔いも何もありません。だから戦う同士が“いま行かないと負けちゃう”と思ったタイミングでああいう打ち合いが起こるんです。

紗綾 そういえば勝次選手が試合の後で、前口選手のお見舞いへ行っていましたね。

石井 やっぱり戦った者同士にしか分からないものってあるんです。憎くて殴っている訳ではないし、戦ってあれだけのお客さんに喜んでもらえてプロとしての仕事ができて、それが終わると友情が芽生えたりするんですよね。

紗綾 スゴいなぁ。

石井 戦った者同士というのは戦友ですよね。打ち合っている時って楽しいんです。その相手だからこそ打ち合いになるし、この競技をやってきて良かったなって思う瞬間でもあります。それは戦友が生まれるタイミングなんです。