ノンカフェインコーヒー(物語を聴くと言うこと)海のはじまり第4話から (original) (raw)

2024年7月期、月9ドラマ「海のはじまり」第4話から
7月22日(月)放送

カフェ、またはレストランで
弥生(有村架純
「コーヒーのお代わりください」

店員
「かしこまりました。
(伝票を見ながら)
ノンカフェインコーヒーでよろしいですか?」

弥生(有村架純
「普通ので」

店員
ブレンドでよろしいですか?」

弥生(有村架純
「はい、普通の」

結局、弥生(有村架純)は、お代わりのコーヒーを飲まずに店を後にする。

1杯目はノンカフェインコーヒーを頼んだ弥生(有村架純)は、2杯目は普通のブレンドコーヒーを頼んだものの、結局は2杯目を飲まずに店を後にした。

ドラマを見てない人にとっては、クイズ「ウミガメのスープ」のような展開です。
これでは物語としては意味不明です。(正確に言えば、内容が多義的で、どのようにも解釈できそうです)何か意味があるかもしれないし、極端な話、単なる気まぐれかもしれません。

しかしドラマを見ていた人なら、次のように文脈を補うことが出来ます。

弥生(有村架純)は、産婦人科でエコー検査をうけて妊娠3か月だと分かった。
妊娠している弥生(有村架純)は、カフェでノンカフェインコーヒーを頼んだ。
弥生(有村架純)は、交際相手の男(稲葉友)に妊娠をつげた。
交際相手の男は、現状では中絶するのが当然と考えている。
交際相手の男に同意した弥生は、カフェで仕事の続きをするといって、男を先に帰す。
弥生は、コーヒーのお代わりをする時、ノンカフェインのコーヒーではなく、普通のブレンドコーヒーを注文する。
(もう中絶すると決めたから、カフェインを制限する必要はない!)
しかし、結局2杯目のコーヒーは飲まずに店を後にする。
(胎児に悪影響を与える可能性のあることはしたくない)

このように文脈を補えば、弥生の言動に関する解釈は、ほぼ定まります。
このような時、物語を理解できたとか、物語をちゃんと話せた、ちゃんと物語を聴いてもらえたなどと言えるでしょう。
ドラマなら、視聴者が物語を再構成できるように、前後に理由を説明するような描写が入ります。しかし日常の会話では相手が話してくれなければ文脈を補うことはできません。
今回のケースで言うと2杯目は普通のブレンドコーヒーを頼んだことに対して、ノンカフェインコーヒーは美味しくなかったからとか、弥生は眠くなったのだろうかとか勝手に想像しても、物語を聴いたことになりません。(それは単なる連想ゲームにすぎません。)
もっと酷いのは会話泥棒と呼ばれる状態です。
弥生がブレンドコーヒーを頼んだことに対して、「僕は紅茶派」とか、「ハーブティーもあるし」とか、「やっぱりカフェオレ」みたいに、自分の好みを聞かれていると勘違いするパターン。

物語を聴くと言うのは行間を好き勝手に想像するのではなくて、行間を埋める努力をすること。早とちりをせずに、じっくりと話を聞くこと。細部にまで集中して話を聞くこと。関連知識を上手く活用すること(今回のドラマなら妊娠とか中絶、カフェインの過剰摂取に関する知識)

ドラマ「海のはじまり」は、簡単に他者の物語を分かった気になってはいけないと思い知らされるエピソードが色々出てきます。それは日常の人間関係でも同じなのかもしれません。