今の自分の心の奥深くに刺さった回 [NHK ドキュメント72時間 / 長野 伊那谷] (original) (raw)

今週も癒しを求めて観た『ドキュメント72時間』

ドキュメント72時間。もはや説明は不要だろうけれど、簡単に言うと日本（極稀に海外もある）のさまざまな場所で72時間にわたって人々の日常を映し出すドキュメンタリーだ。わたしにとって、この番組は毎週の癒しであり、今回はその中でも特に心に刺さる回だった。今回の撮影場所は「長野 伊那谷の産直市場」。この市場では、生産者登録をすれば誰でも自分の作物を出品できる仕組みになっている。伊那といえば、伊那食品工業。新卒での就活のとき行った場所。

刺さったリモートワーカーの女性

わたしが特に心を動かされたのは、リモートでWebデザイナーをしている女性。彼女は合間に畑仕事をしており、今度はレモンの苗木を育てて、実がなったら市場に出品したいと言っていた。「自分でもお酒とかに入れて使いたい」と、楽しそうに語る姿が印象的だった。

リモートワークの利点を最大限に活用しつつ、仕事とは別に自分の大切なコミュニティや暮らしを育てている姿を見て、わたしも思わず「ああ、わかる！」と共感した。実はわたしもガジュマルを買おうと思っていて、彼女の丁寧な暮らしに憧れを抱いた。こういうライフスタイルって、多くの人が理想とする「スローライフ」そのものだと思う。

だったら自分も真似すればいいじゃないかと思うかもしれないが、現実はそんなに簡単じゃない。わたしはハイブリッド型の働き方が合っているし、彼女のような「パソコンさえあればどこでも働ける」スキルは持ち合わせていない。さらに、完全にリモートだと逆に仕事がやりづらい。業務の温度感をつかむのが難しかったり、キャッチアップが遅れがちになるので、やはりフルリモートで能力を発揮できる人は本当に凄いと思う。

そんな彼女が、「今日から生産者です、売れればですけど（笑）」と笑顔で言う姿が眩しかった。ONとOFFをきっちり分けて生活しているのが本当に素晴らしいと感じた。

自分の時間を持つ。

今のわたしに必要なこと、きっとこの方もこういった生活を掴むためにたくさん調べて、家族と相談して、悩んで、メリット・デメリットを天秤にかけて、決意したのだろう。そういう行動力、ほんとうにすごい。わたしはなにからはじめるようか。

矜持を持つ農業者

もう一人の印象的な人物は、上司のパワハラで安定企業を退職し、今は農業に従事している男性。「どこの企業にも中途入社できるゴールデンチケットが手に入ったとしても、使わない。この仕事をやる。」と力強く語っていた。

わたしには今のところ、彼のような矜持を持って働いているという感覚はないからこそ、彼の生き方には本当に感服した。農作物についた虫と会話しつつ、すぐに駆除しない彼の姿からは、自然との共存を感じられたし、「この土地とともに生きる」という彼の姿勢に、わたしも憧れを抱いた。

わたしが住んでいる場所は、都心へのベッドタウン。なぜそこに住んでいるかというと、出社に対応するため、それだけだ。今の環境や土地が好きで住んでいるわけではない。正直、海の見える場所に住みたいと思うことがよくある。だからこそ、自然とともに生き、愛せる環境に身を置いている彼のような暮らしは、非常に羨ましく感じた。

今が忙しさのピークといってインタビューに答える彼の目は、優しさに溢れているように見えた。誇りを持つ。

「自分の人生」、「自分の時間」これをどう使うか、見えている人の目だった。自分にはないもの。そして目を背けずにきちんと向き合わなければならない大きな課題だ。

「都心は人間が怖いんじゃないですかね？」

番組では、自然が多い環境ならではの苦労も語られていた。例えば、クマが出ることへの恐怖だ。その中でもとある男性の「都心は人間が怖いんじゃないですかね？」と言った一言が深く刺さった。これには思わず考えさせられた。たしかに、都会では自然の苦労は感じにくいが、人間関係が一番のストレス源だと感じることも多い。自然が多い場所では、そういったストレスから解放される部分があるのかもしれない。

人の集団から少し距離を取る。あまり考えていなかった。田舎暮らしとか、そういう側面があることは知っていたものの、単純に「都会」という雑踏から離れるものとして捉えていた。

人中心のコミュニティの比重を見直す。そういう言葉としてわたしは受け取った。たしかにそうだ。都心（ベットタウン）には人が多い。でもそれぞれの結びつきは感じない。だからこそ息苦しい。

自然にふれる大切さ

この回を見て、なんだか心が晴れた気がする。自然にふれることが、モヤモヤした気持ちを整理してくれるんだなと感じた。最近は自室にこもってあれこれ考え込むことが多かったけれど、外に出て自然の空気を吸う、イヤホンを外して自然の音に耳をすますことで、自分の中のバランスが整うような気がした。

自然の中で過ごす。今の自分には合う気がした。ありがとう、ドキュメント72時間。

------ 追記 ------

この気持ちなんだろうなと思ったら「人間愛」だ。普段人の言葉で一喜一憂していたので、人の温かさに触れて安らげた。