がらんどうイミテーションラヴァーズ 感想 (original) (raw)

2024.10

今回は、がらんどうイミテーションラヴァーズです。

ガガガっぽい青春ものかなーと思いつつ、確かに著者はスニーカー文庫のほかガガガ文庫でも出版されている方でした(しかも終盤ちょっとガガガ文庫発のラノベ弄りしてたので笑いました)。

導入からその理屈や展開おかしくない?という所もありましたが、読み易くて徐々にガサツで不器用なヒロインが可愛く思えてきたので、不思議な感覚でした。

あらすじ

ありのまま生きる事を信条とし、周りに迎合してヘラヘラする他人の輪に馴染めないでいた鷲谷相馬。そんな相馬は美術の授業をきっかけとして、ノーマスクでありのままを受け入れてくれた百瀬由衣に恋をする。

「────ごめんなさい」

由衣に告白した相馬はすげなく断られてしまう。何でも、学校一の人気者である藤峰幸太郎と付き合っているのだという。

時を同じくして、幸太郎に想いを告げて玉砕した女子生徒がいた。美術室でバットを手に暴れ回るその鳩羽彩音は、相馬と同じくありのまま生きる少女だった。

「オレたちが運命の相手じゃないなら、オレたちが運命の相手になればいいんだ」

こうして、2人の戦いが幕を開ける。

感想

振られた者同士、言わば奇妙な運命共同体の2人が理想に向けて手を取っていく内に、お互いが惹かれあっていく、そんな物語でした。

こう振り返ってみればよくあるストーリーラインではありますが、二転三転あった分、楽しく読めたのかなーと思います。特に、相馬が仮面で取り繕う自分と彩音を気に掛けたい自分との間で葛藤して、何だかんだ彩音の家に行くシーンは良かったです。

ただ、冒頭で述べた通り引っかかる部分がいくつかあったので一応纏めておきます。

・普通、美術室で暴れ回っている彩音に話し掛けにいくか?というか、八つ当たりも甚だしい彩音の暴動は学校で問題になるのでは…(それも2回やってるし)

・ありのままで自分を偽らないがモットーなのに、仮面を被って幸太郎(あるいは由衣)になりきるのは、自分を偽っているのでは?

スクールカーストが高く、幸太郎とのデート(しかもプール!)に逸れ者の相馬と彩音を誘う由衣

1点目については、ラノベだからフィクションだからと言われてしまえばそれまでなんですが、粗暴なヒロイン像を植え付けておきたかったというのがあるのかなーと思います。本来は停学ものの蛮行ですけどね笑。

2点目については、結構致命的な矛盾だと思うのですが…。まぁ、取り繕う事が一定の成果を上げる様子の描写を入れる必要性があったし、寧ろ人間社会でまともに生きていく為には必須スキルとも言うべきものとして、ストーリーを進める為には目を瞑る部分かなと。

それに、他と違う生き方をしたがったり、悩んで迷走したりするのが、アイデンティティの定まってない思春期の特徴とも言えなくもない。

3点目についても、強引だと思わずにはいられないものの、後で分かる由衣の本性からすると、ありのままに生きる2人をどこか気に掛けてた可能性があるので、無くはないのかなぁ。振った相手に水着を見せるメンタルは中々ですが…。

話を戻しまして、ストーリーは相馬が幸太郎を模倣する事で由衣に好かれようとして、彩音は由衣を模倣する事で幸太郎に好かれようとする話でした。

文中でも触れられてましたが、普通は真似てもそれは本人以上になる事は無理で、さらには既に付き合ってる間に割り込もうとするのはかなりチャレンジングなんですよね。

それから、ほぼ初対面だった相馬と彩音が、このままごとみたいなやり取りで心を通わせ始めているのも少々強引なような。とは言え、彩音は消しゴムを拾って貰った出来事で幸太郎を好きになるくらいのピュアさですから笑。バットを振り回す姿とのギャップ凄い。

プールで彩音が溺れかけたシーンでは、すわとらドラ!かと思いきや、普通に幸太郎に助けられてたのは面白かったです。でも、相馬も助けには行ってたし、先に相馬を気に掛け始めたのは彩音の方な気がします。

スクール水着で来る彩音もある意味可愛い。いや、世のオタク達の需要を理解していらっしゃる。ハーフマラソンで最終的には応援に来てくれるのもポイント高い。恋敵?に対して身を引いてしまう部分はマケインの素質もあり。

彩音にプールで勝負を仕掛けた少年が屑過ぎw

その他、完璧美少女が仮面でその裏には冷めた面も持っていた由衣さんや、無意識に周りを下に見るとか黒い部分もあったアミーゴ幸太郎などもあり。

運命なんてものは思い込みでしかないのかなーとも感じつつ、それでも、ありのままを受け入れてくれる、自然体でいても良いと思わせられる存在って大事なんだなーというのが、この物語を読んで思いました。

今回のbest words

由衣になれば幸太郎とあんなことやこんなことができるアミーゴ (p.43 鷲谷相馬)

→煽り性能高い

あとがき

百瀬由衣さんの生き方が不器用過ぎて心配です笑。あれだけあらゆる事を器用に熟せるのに勿体無い。

模倣を、自分のありのままを隠して生きる事を、この作品は否定しているようで、諦観しているような感じもしました。ただ、模倣だけではがらんどうなのも事実。生きるって難しいねーみたいな。