【源氏物語614 第19帖 薄雲45】君もさは 哀れをかはせ 人知れず わが身にしむる秋の夕風🍂 by 源氏の君 (original) (raw)
君もさは 哀れをかはせ 人知れず
わが身にしむる秋の夕風
斎宮の女御に by 源氏の君
〜あなたもそれでは情趣を交わしてください、
誰にも知られず
自分ひとりでしみじみ 身にしみて感じている
秋の夕風ですから
【 第19帖 薄雲45】
お言葉尻《じり》の
しどけなくなってしまう様子などの可憐《かれん》さに、
源氏は思わず規《のり》を越した言葉を口に出した。
「君もさは 哀れをかはせ 人知れず
わが身にしむる秋の夕風
忍びきれないおりおりがあるのです」
宮のお返辞のあるわけもない。
腑《ふ》に落ちないとお思いになるふうである。
いったんおさえたものが外へあふれ出たあとは、
その勢いで恋も恨みも源氏の口をついて出てきた。
それ以上にも事を進ませる可能性はあったが、
宮があまりにもあきれてお思いになる様子の見えるのも
道理に思われたし、
自身の心もけしからぬことであると思い返されもして
源氏はただ歎息《たんそく》をしていた。
艶《えん》な姿ももう宮のお目にはうとましいものにばかり見えた。
柔らかにみじろぎをして
少しずつあとへ引っ込んでお行きになるのを知って、
「そんなに私が不愉快なものに思われますか、
高尚《こうしょう》な貴女《きじょ》は
そんなにしてお見せになるものではありませんよ。
ではもうあんなお話はよしましょうね。
これから私をお憎みになってはいけませんよ」
と言って源氏は立ち去った。
しめやかな源氏の衣服の香の座敷に残っていることすらを
宮は情けなくお思いになった。
女房たちが出て来て格子《こうし》などを閉めたあとで、
「このお敷き物の移り香の結構ですこと、
どうしてあの方はこんなにすべてのよいものを
備えておいでになるのでしょう。
柳の枝に桜を咲かせたというのはあの方ね。
どんな前生《ぜんしょう》をお持ちになる方でしょう」
などと言い合っていた。
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