#31 【2024J1第32節 サンフレッチェ広島×FC町田ゼルビア】 (original) (raw)

はしがき

毎度お世話になってます!今回は天王山の町田戦。Jサポ注目度マックスの一戦ですね。両チームともに休養もばっちりで万全の状態で臨む一戦、スタメンは以下。

町田は前節から望月仙頭相馬藤尾の4人が変更。前回対戦時は3-4-2-1ミラーで入ってきたが今節は4-4-2スタート。
広島は大勝した前節の11人から変更なし。引き続き中野がWBスタートとなった。

押し込みを継続しやすい広島の保持

試合は開始早々に広島が右サイドを攻略し先制。このシーンでもサイド奥へのロングボールが起点だったが、前節と同様に広島はSBの背後を使おうとする意識が強かった。

町田は広島の右サイドのビルドアップに対してはナサンホと林がスライドして比較的強めにプレスをかけてきたが、広島は前節同様に加藤が林の背後を取って前進を試みていた。
町田もこれに対して無策ではなく、DHにここをカバーする、あるいはCBが釣り出されたら最終ライン真ん中に入るというゴール前守備はしっかり構築してきていた。

しかし、その結果として中盤が空いてしまうため広島のDHにこぼれ球を拾われやすく、押し込まれる展開を中々脱却できず。広島にサイド攻撃の試行回数を稼がれやすい状況となり、さらに広島側のクオリティが早めに炸裂したことで早々に2失点することになってしまった。

得点シーンは2つともニアで合わせる形で、町田にしてはやや淡泊な守備に感じた。前節にファーとマイナスからの得点を見せている分、つぶれ役になることが多いニアサイドへの警戒は薄くなったかもしれない。

広島はクロスに対してニア、ファー、マイナスに人をしっかり配置することを続けていたので(2点目はマイナスに人いなかったが)、こういうご褒美をもらえたという形だろう。

また、広島の左サイドは比較的プレスが緩かったので、こちらは佐々木が運びつつトルガイと松本のポジションチェンジからフリーの選手を作り出していた。

このあたりで中盤にフリーの選手を作り出してボールを落ち着けることができたのも広島がペースを握れた要因だろう。佐々木は2トップ脇にボールを運び、松本とトルガイはDHでもシャドーでもプレーできるうえに東も中に入っていけるのでバランスを維持しつつも流動性が高い。可愛げがないというか、咎める隙の少ない保持ができるようになってきているのは素晴らしいの一言だ。

個人的には町田は広島の右サイドからプレスを仕掛けに行った方がいいのでは?という気もした。広島は前節も加藤をサイドの奥には知らせる展開を多用していたので、どちらかといえばアジリティの厳しいトルガイに走られる方がマシなような気がする。その場合には東も含めたポジションチェンジで何とかできるのかもしれないが。

縦に速い町田の前進だが……

一方町田がボールを持った時には長いボールを使うことも厭わず、広島のゴール前まで素早く迫る手立てをいくつか用意してきていた。

地上戦としてはSB→SHへの早い縦パスを通すチャレンジが何度か見られた。対面のCBをスピードで一気に置いて行ってしまおうという狙いだろう。右利きの相馬が右サイド、左足も使えるらしいナサンホを左に置いたのはカットインでなく縦に速い前進からクロスを考えていたからかもしれない。

空中戦のターゲットになっていたのは最前線のオセフンと右サイドの望月。オセフンは荒木相手にも何度かボールを収めて広島CB陣の背後にボールを通していたし、望月は対面の東と競り合えばほとんど勝っていた。
ただし、望月についてはボールを持たせても背後にいいボールを蹴ってくることがあまりなかったようで、次第に東は競り合いをせず下がって対応するようになっていた。この辺は相手を見つつうまく対応していたと言えるだろう。

総じて町田の前進方法は縦に速いものが多く、単発で広島に脅威を与えることはできていたが押し込んで攻撃を継続するような展開には持ち込めなかった。堅い守備が基盤の町田はイーブンやリードした状況でこうした速い攻撃を中心に試合を進めることが多かったのだと思うが、この試合では強みである守備で後手を踏んでしまったために保持で良いところを出せなかったという印象だった。

身に着けた試合のコントロール

町田は後半から3-4-2-1に変更、広島の保持に対して噛み合わせてプレスをかけてきたが、広島はシャドーがDH脇に逃げて受けたりドウグラスのキープ力を生かすことでボール保持の時間を減らさないように対応することができていた。

また、前回の町田戦で見られた中盤の予測の早さを活かしたセカンドボール回収という強みも引き続き披露。

鹿島戦では相手に並びを噛み合わせられてハイプレス&放り込みが効かずににっちもさっちもいかなくなってしまっていたので、ミドルプレス+ショートパスも織り交ぜてのビルドで自分たちの時間を作りつつ試合を進められていたのは収穫だろう。
エンタメとしてはやや見どころに欠ける後半だったが、勝つための取り組みとしてはこれ以上ないほどの安定感を見せられていたと思う。

雑感・次節に向けて

終始試合のペースを握っていた広島が首位キープに成功。鹿島戦や横浜FM戦のような殴り合いだけではなくこういった試合巧者ぶりも発揮できるのはお見事だった。それも鹿島戦で痛い目を見てから数試合で。
勢いの差を見せた首位攻防戦の味としては2013年のホーム大宮戦が近かったかもしれない。

ACL2はおそらくターンオーバーで臨むだろうし死角の少ないチームになっていると思うが、逆転勝ちのないチームだけにどこかで事故って先に失点したときに反発力を発揮できるかは課題かもしれない。

町田はやはり強みである守備が早々に決壊したのが痛かった。リーグ戦の長丁場ではやはりどこかで得意でない展開と向き合う必要が出てくるが、それが大一番で来てしまったということだろう。
細部にこだわることで勝ち点を積み上げてきたシーズンという印象だが、まだまだ取り組むことは残っているのかもしれない。

それではまた次回。