2018年5月◯◯日 細魚 (original) (raw)

2018年 05月 15日

2018年5月◯◯日 細魚

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春は終わろうとしている。
何度季節が巡れば、私はひろにさよならが言えるのだろうか。

人は良いことと悪いことの間には1本の線が引かれていて、こちらの世界とあちらの世界に住む人間は別な人種だと思っているけれど、自分がそれを超えてみるとはっきりとした線などは存在しないで、朦朧体のように全ては何の線引きもないことに気付く。
誰でもひとつバランスを崩すと、こちらの世界からあちらの世界に簡単に踏み込んでしまう危うさを持っているものなのだ。

今日は名残の細魚を仕入れる。
瀬戸内は小魚が美味しい地域なので、鮪や鯛、平目などの大物の魚はそれほど有り難がられない。
お店にとっては小魚は歩留まりが悪く手間もかかるけれど、魚好きのお客さんはそれを楽しみにしてくださっているし私もそういう魚料理のほうが好きである。

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塩焼きも一夜干しも美味しいけれど、とりあえず一品はお刺身にする。

開店直後に村上のおじいちゃんが入って来られて細魚を見つけると、にやりとして「なっちゃん、あれ」と仰った。
「はい、あれですね。早いもの勝ちですもんね」
今日は暑かったので珍しく熱燗の注文ではなく、中尾醸造の「幻」の黒ラベルを常温で「あれ」と一緒にお出しする。

今日のひと品

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大人のポッキー(皮の炙り)

・細魚を三枚におろし、手で皮を引く。
・皮を開いて竹串にくるくると巻きつけ塩をふる。
・直火で炙り供する。

小説

by syun

メモ帳

人物紹介

奈緒子…ご飯屋「なお」の女将、離婚暦あり、45歳

結子…奈緒子の親友

ひろ…奈緒子の大学時代の恋人

慎介…別れた夫

原田くん…幼馴染み

たみちゃん…大学3年生。月曜日と金曜日のアルバイト

河野さん…保険代理店
小川さん…地元の建築会社の社長

他お客さんいろいろ。

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