2018年5月◯◯日 鮑 (original) (raw)

2018年 05月 31日

2018年5月◯◯日 鮑

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鮑は片貝なので「恋忘貝」とも呼ばれるのだそう。
二枚貝の片方がないのかと思いきや巻貝の種類らしい。
夜行性で暗い海底を泳ぐように移動し、昼間は砂地や岩の間に隠れている。

鮑は高額なため「なお」のような小さな店では仕入れに躊躇する。
小さい物はやはり味が薄く出来れば400g以上のものを仕入れたいし、貝は一度殻から外してしまうと翌日に持ち越すことは出来ないので、特別な注文が入った時に限られる。

今日は渡辺さんの会社の食事会ということで7名の予約が入っていたので貸し切りにする。
「値段は大丈夫じゃけん鮑のいいのを入れといてもらえるかのう」という渡辺さんの注文で、数日前から大谷鮮魚店にお願いをしておいた。
鮑の旬は夏だけれどそろそろ大きいものが出始めているが、400gを超えるものはなくて320gと350gのものを二つ仕入れる。
「刺身は少しでいいけん、あれあれ何じゃったかのう。水の中に入っとるやつ」
「あぁ水貝ですね。ちょうど蓴菜がありますからそれも入れましょうね」

私は自分で食べるのなら水貝か蒸し鮑が好きである。
磯臭いこりこりとした生も美味しいけれどこれは2~3切れで飽きるが、少し手を加えたものは噛めば噛むほど味が滲み出てくる。
けれど多分こういうのは年齢の関係もあるのだと思う。
若い頃はやはり刺身が好きだったような気がする。

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鮑は塩をふり束子で洗って汚れを落とし、貝開けかディナーナイフのようなもので肝を潰さないように殻から外す。
肝の付け根の雑味のある箇所と身の口のところを三角に切り取る。
口の中には二つ歯が入っていて、別段何の味もしないけれどこりこりとした食感が面白いので刺身に添えておく。
肝は生でもいいのだけれど、苦手な方がいらっしゃるといけないので酒蒸しにしておく。

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鮑の縁のびらびらのところは切り離し、締めの鮑ご飯を炊く。

水貝は魯山人の好んだ鮑の食べ方だと言われていて、その白濁した汁の味は一度口にすると虜になってしまう美味しさである。
この白濁は旬の、しかもある程度の大きさがないと出ない。

6時からの予約だったので9時過ぎにはお開きとなり、渡辺さんは「ママご馳走さん。ほんまに旨かったなぁ」と仰って、皆さんと二次会の流川の方に向かわれた。
今日貸し切りにしたのは、偶然この日ひろとの約束が入っていたからである。
お店の片付けを済ませても10時頃には終わりそうで、久し振りに少し早い時間に逢えそうだった。

今日のひと品

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水貝

材料
鮑 1個
水 200cc
昆布 3~4cm一切れ
塩 ひとつまみ

・上記の手順で下処理をした鮑の身の部分だけを少し厚めに切る。
・鉢に昆布と蒸留水、塩、鮑を入れ1時間ほどおくと、鮑の汁で白濁してくる。
冷蔵庫に入れておくか氷を加えておくとよい。
・仕上げに、あれば蓴菜や花穂紫蘇を散らし汁ごと供する。

以前の渡辺さんの話

小説

by syun

メモ帳

人物紹介

奈緒子…ご飯屋「なお」の女将、離婚暦あり、45歳

結子…奈緒子の親友

ひろ…奈緒子の大学時代の恋人

慎介…別れた夫

原田くん…幼馴染み

たみちゃん…大学3年生。月曜日と金曜日のアルバイト

河野さん…保険代理店
小川さん…地元の建築会社の社長

他お客さんいろいろ。

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