2018年 年越し (original) (raw)

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閉じ込める。
思い出を、こんな風にクリアーに閉じ込められる日がくるといいのだけれど…

私の人生にもう明日という日はないのだと思ったあの夏の終わり。
それでも今こうしてお店の厨房に立っていられることに感謝をする。

「なお」は28日まで営業をして29、30日でお節の仕込み、いつもお野菜を届けてくださる村上のおじいちゃんや小川さんたちにお届けをして暮のご挨拶をする。
たみちゃんや結子、原田くんにも取りにきてもらい、後は実家に持って帰って母と最後の仕上げをする。

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「ママ、毎年ありがとうございます。両親も楽しみにしているの」
「たみちゃん、来年から寂しくなるわ。ほんとうに今までありがとう」
「あっ、1月も新しいアルバイトの子が出る時に付いてきますから。さよならはまだ言いません」

たみちゃんは春から市内の優良企業に勤め先が決まっていて、その代わりに双子の友達を紹介してくれていた。
家はすぐこの近くで歩いてこれる距離、4月から大学2年生で二人でスケジュールを合わせて毎日来てくれることになっている。

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「奈緒子、お父さんがお待ちかねよ」
お節のあれこれをタッパーに詰めて実家に帰ると、母がくすっと笑いながら小さな声で言った。

母の顔を見るのが躊躇われたあの日から数ヶ月、こんなに静かな年越しが迎えられるなんて思ってもみなかった。
結子や原田くんや涼くんに助けられて、両親に見守られて今日の日がやってきたのだと思う。

そして木嶋さんの優しさに触れて、私は新しい一歩を踏み出す勇気を持つことができた。
ひろのことは、まだ思い出の箱に閉じ込めることはできないけれど、いつの日かきっと…

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お重に詰める前の数品を取り置いて、父のお酒のアテにする。

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巻き寿司も少し。

・syunからのご挨拶

年末の慌しい日常に取り紛れ、なかなか「なお」に心が切り替わらず、更新が滞ってしまいました。
なおを励まし見守ってくださった皆様に心から感謝を致します。
2019年は新しい一歩を踏み出したいと願っている「なお」をどうぞ宜しくお願い致します。

明けましておめでとうございます。
皆さまの新しい年にたくさんの幸せが待っていますように…

小説

by syun

メモ帳

人物紹介

奈緒子…ご飯屋「なお」の女将、離婚暦あり、45歳

結子…奈緒子の親友

ひろ…奈緒子の大学時代の恋人

慎介…別れた夫

原田くん…幼馴染み

たみちゃん…大学3年生。月曜日と金曜日のアルバイト

河野さん…保険代理店
小川さん…地元の建築会社の社長

他お客さんいろいろ。

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