2019年1月◯◯日 鹿肉 (original) (raw)

2019年 01月 28日

2019年1月◯◯日 鹿肉

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鹿背肉のロースト(雌2才半)

「おたんやまでは魚が動かん」と広島では言われている。

「おたんや」とは親鸞上人の命日。
広島は浄土真宗が多いので、その日は漁師さんも漁を休みお精進で過ごす…ということになっている。
加えて今年は13日が日曜、14日が成人の日で祝日、15日がおたんやということになる。

本格的に魚が揃い始めるのは16日以降なので、それまでは肉料理をメインに献立を考える。
ちょうど送っていただいた鹿肉がかなりあるので、それと金沢から抱えて帰った野菜を仕込む。

今月からたみちゃんの代わりのアルバイトの双子の女子大生が入ってくれている。
早紀ちゃんと麻紀ちゃん、予定を摺り合わせて一人ずつ毎日通ってくれるので、私もずいぶん楽になるなぁ。

「なっちゃん、おめでとうさん。やっと店が開いてほっとしとるで」
「すみません。いつも長いお正月休みをいただいて」
6時半頃、小川さんと村上のおじいちゃんが連れ立って来てくださり、それに前後して主婦の山根さんが友達と二人で来てくださった。

「麻紀ちゃん、お飲み物お聞きして」
「はい」

「おう、新顔の若いお嬢さんじゃな。可愛いのう」と小川さんは言ってビールを、村上さんは竹鶴の燗を注文された。
山根さんは「麻紀ちゃんていうのね。時々お邪魔するから宜しくね。悪いおじさんがいるから、あんまり耳年増になったら駄目よ」と言って篠峯の冷やを頼まれた。
「そのおじさん言うのはわしのことかいな」
「はい、あたり」
村上さんは、いつものように静かに手酌で飲んでいらっしゃる。

「16日まではお魚が少ないので、今日は鹿肉をご用意しているんですけど大丈夫ですか?」
「ママの料理なら何でもええで」

鹿の背肉のローストを椎茸ソースで、芹のジェノベーゼを添えてお出しする。

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箸やすめは
・春菊のパンチェッタかけ
・あさつきの芽の酢味噌和え
・中島菜とちりめんの胡麻油炒め

「そうじゃ、あのちょっと気障なお兄さんはママをちゃんと口説いたかのう」
「小川さん、もう冗談はやめてください。あの方とはあれっきりですよ」
「そうかぁ、まぁええわ」と小川さんはガハハと笑って「麻紀ちゃん、もういっぱい生」と言ってグラスをさしだした。

ひろの時は別れた翌日にはもう逢いたくてたまらなかったけれど、木嶋さんに対する思いはもっと静かで穏やかだった。
それはひろに較べて思いが深くないというわけではなく、逢いたいと思えば誰かに遠慮することなく、いつでも逢えるという安心感からなのだと思う。
たぶん…

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締めは芹ご飯。
炊きたてのご飯に刻んだ生の芹を混ぜ込み塩を少々。
小さく柔かい芹は火を通さなくても大丈夫。

今日のひと品。

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・椎茸の軸のソース

材料
椎茸の軸
玉葱
オリーブオイル
バター

胡椒
醤油かくし味

玉葱はみじん切り。
椎茸の軸は手で縦に裂きみじん切り。
玉葱をオリーブオイルで炒め椎茸を加え、塩、胡椒、ひたひたの出汁で椎茸が柔かくなるまで炊く。
最後にバターを少し加え、かくし味に醤油を少々。

☆金沢から抱えて帰った「能登115」は普通の椎茸の5~6倍の大きさ。
軸も立派なので捨てない。

小説

by syun

メモ帳

人物紹介

奈緒子…ご飯屋「なお」の女将、離婚暦あり、45歳

結子…奈緒子の親友

ひろ…奈緒子の大学時代の恋人

慎介…別れた夫

原田くん…幼馴染み

たみちゃん…大学3年生。月曜日と金曜日のアルバイト

河野さん…保険代理店
小川さん…地元の建築会社の社長

他お客さんいろいろ。

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