日本映画プロフェッショナル大賞 (original) (raw)

■個人賞
主演女優賞:さとうほなみ
主演男優賞:嶺豪一
監督賞:髙橋正弥
新人監督賞:鈴木宏侑
■ベストテン
1位 Love Will Tear Us Apart
2位 あずきと雨
3位 渇水
4位 花腐し
5位 はこぶね
6位 まなみ100%
7位 放課後アングラーライフ
8位 ほかげ
9位 春に散る
10位 めためた
■コメント
ベストテン
1, Love Will Tear Us Apart
愛だの、涙だのと訳の分からない英語タイトルで損して尚且つ、勘違いしたラブストーリーを思わせる売り方で本来のファンを遠ざけたが、これこそが、スラッシャーホラーコメディの快作だった。小学生の時にいじめにあった少年と少女。「ずっと守り続ける」と少年の誓いを忘れて大人になった少女。が、何故か、彼女の周りでは謎の連続惨殺事件が続出、唯一の友達も殺した彼女を狙うストーカーに復讐するために自身も訓練を受け戦いを決意するが…。えぐ過ぎて、笑えるスプラッター描写に大興奮。人間寿司、殺人ミキサー、やたら柄の長いチエンソーとか、その面白さは『黄龍の村』『カメ止め』を超えてる!私がタイトルをつけるなら「守ってあげたい!愛と復讐のチェンソーマン」にします。『黒い暴動♥』『転がるビー玉』ほか、自主映画には珍しくジャンルムーピーにこだわってきた宇賀那健一監督。やっと、楽しい居場所を見つけたようだ。

2,あずきと雨
別れても同居を続けるカップル。男は引きこもりがち。女はうまく出ていかせる理由がみつからない。説明セリフを控えて、お互いに、違う方を向きながら解決策を探る男女の関係性がモラトリアムな雰囲気を抱えながらもダラダラと続くのが今風だ。しかも、まったく、性の匂いもしないのもある意味、現代の男女なのか。性も存在しない生活でも生活は成り立つ。おじさんは性を生活に求めがちだが、今の男女には必要ないようだ。隈元監督の新たなる視点は他の作家より達成感がある。

3,渴水
水道を止めたらお母さんにも捨てられた幼い姉妹の部屋。ベタなな演出なら汚らしく荒廃した部屋に仕立てたであろうが、きちんと片付けられたおしゃれな飾りの部屋で、ここを見ただけで、この姉妹の絆や失踪したは母への想いが伝わる。高橋正弥監督なりの映画への向き合い方に畏敬を感じます。

4,花腐し
最初のお通夜のシーンにエキストラで呼ばれて、行徳の斎場にチャリで行く。ちゃんと映ってたし、タイトルやパンフにも名前が載ってて、良かった。昔だったら母に自慢したとこだった。2人の男がセックスしたり、喧嘩したりと、女との過去の話をしながらも、ノスタルジックな世界に浸る所で安易に終わらないのが良い。シナリオを書き換える男、ハーフ女子との幻想的なセックス、作られたかのような過去と不確かな現実に迷い込む。『身も心も』に帰るのか、と思いきや、新たな深遠なる世界に挑んでる。荒井さん、ますます若い。

5,はこぶね
盲目の元漁師。それも、いささか、性格が曲がってるのがいい。木村友貴の善人ぶらずに非健常者のいやらしい部分も含めて、映画の器量の豊かさに才気を感じる。内田春菊の嫌味な叔母さんのキャラが活きてる。

6,まなみ100%
やっぱり、青春映画の男の子は3人組に限る。ヒロインまなみといつもエッチしたくとも断られてばかりで、だからと言って、一途でもない。そんな、いい加減な主人公のキャラって、今までなかった。もちろん、ヒロインとは良い所まで行ってもいつも不発に終わる。そう、少年にとってまなみは永遠のヒロインで決して付き合う事はかなわない。

7,放課後アングラーライフ
城定監督のホームグラウンドは女子高生。難しい事はない、転校生が釣り部に入り、友達と仲良くなる。それだけだが、『アルブススタンドのはしの方』に通じるチーム女子の瑞々しさが嬉しくなる。

8,ほかげ
中野武蔵野ホールにいた時に、塚本晋也監督の『鉄男』に出会った。中野で上映できなかったら、Vシネマとしてピデオレンタルに回される所を劇場公開にこぎつけた。あれから、30年、今だに、ぶれてない世界を構築してる。

9,春に散る
瀬々監督、久しぶりに正当な娯楽映画に復活。生と死、勝者と敗者、強さと弱さ、各々対立の構造の中で真摯に人生と向き合う。佐藤浩市、相川翔、鶴太郎の中年3人組がかっての「アナーキーいんじゃばんすけ」の下元史郎、諏訪太朗、佐野和宏の甦りと見たのは私だけではないようだ。

10,めためた
ホンサンスとウッデイアレン好きにはたまらない映画だ。しかも、3つの物語を繋ぐ仕掛けが面白い。パソコンの一押し、人生が変わっていく何て伏線の回収の仕方に感心した。