祖母山 (original) (raw)

電波が届かず、更新していなかった分更新します。

昨日の分。

出発の朝は憂鬱

雨は降っていなかった。一応。

空は曇っていて、いつ雨が降り出してもおかしくない。

憂鬱な気分を奮い立たせて、準備をして出発。

雨でぬかるんだ地面はよく滑った。

しかもこの山は粘土質の地面が多く、滑りやすさに拍車をかける。

荷物が重いということは、その分滑りやすくなるということでもある。

そして滑った時自分では制御できない力で転び、斜面であれば命に関わる。

重い荷物を背負うと、重心がブレるのは命取りなのだ。

慎重に登った。

山全体が霞がかっていて雨は降っているのか降っていないのか分からない。

風が吹くと木々が蓄えた水が一斉に落ちてきた。

およそ快適とは言えない登山。

それなのに、山を越えなくてはならない僕の他にも、登山に来ている人は何組か見かけた。

一体何のために山に登りに来ているのだろう、この人たちは。

何が楽しいんだこれの。

ただの苦行じゃないか。

展望は登る前から絶望的なことが分かっている。

そりゃあ、年中暇な僕と違って、お仕事をしている人は休日や休みを取った日しか登山できないのであり、天候が悪くても、じゃあ明日にしよう、とは行かないだろう。

だが、苦行をしに行くのと家でゆっくりしているのの二択なら、僕は後者を選ぶ。

筋肉痛は大分収まっていたけれど、高低差はくじゅう連山の時より大きく、急な坂道が続く。

しかも滑らないように神経を使うので通常以上に疲れた。

登頂

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ぜぇはぁぜぇはぁ息をきらすことはないが、精神的にも身体的にも削られる登山だった。

山頂に着くも、霞をまとった風がとても冷たくてやってられないので、写真だけ撮って、カロリーメイトのパチモンを口に突っ込み、さっさと降り始めた。

展望は360°開けていたが、もちろんどこを向いても真っ白なので関係ない。

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山下りクソたわけ

滑るといえば下りのほうが圧倒的に危険だ。

特に今回選んだコースは急傾斜の上級者向けコースだったらしく、雨で濡れていて非常に危なかった。

なんとか降りてくると、山頂近くですれ違った人がいた。

どうもその人は登りを僕が降りてきたコースて登って、下りは危険だと判断して別コースから降りてきたらしい。

僕も分かっていればそうしたのだけど。

なんにせよ、無事降りられてよかった。

登山者にとっては挨拶のようなものだけど、その人からどこから登ってきたのか聞かれ、近くにあった地図を指差して、

「神原からです」

と言うと、

「ああ、大分側から来たんですね」

と言われ、ああそうか、もう宮崎に入ったんだな、とそこで気がついた。

昼食を済ませ、さっさとテントを張って中に入った。

これでようやく落ち着いた。

まだ時間的には早いけれど、今日は疲れたし、これ以上歩いても水場が見つかるかわからない。

ここにはトイレもあるしテントを張るスペースもあった。

今日はここまででいいだろう。

テントの中で

テントの中でシュラフに入って寝転ぶと、だんだん暇になってきた。

こんな時に役に立つのが酒である。

以前嵐の日にテントの中にいるしかなく、暇で暇でしょうがないのでラム酒をさんざん飲んでへべれけになった時は良い気分だった。

しかし、ザックの中をかき回して見つけたウイスキー瓶には雀の涙程の酒しか入っておらず、一口でなくなってしまった。

どうしてこういうときのために酒を買っておかないんだ馬鹿野郎!

僕は酒がなくても生きていける人間なので、無駄遣いしないよう酒はあまり買わないようにしたかったが、酒がなくなると新しいのを買いたくなるので、微妙に残しておいたのがこのウイスキーなのであった。

うぅ……確かに普段はいらないけどこういう日は要るんだよぅ。

酒がないと分かると腹が減った。

食べられるものといえばカロリーメイトのパチモンぐらいのもので、こいつを二袋食べた。

ああ、うみゃい、うみゃい。

もっともっともっと食べたいなあ。

腹が減ると原始人に戻っていく。知能指数はたぶん5くらいだ。

まだキモチは収まらないがあんまり食べるといざという時の非常食がなくなる。

電波がギリギリないのも痛かった。

たまに一本立つのだが、基本はバツ印がついている。

電波があればradikoでラジオが聴けたのだ。

仕方がないので本を読む。

といってもこれもすでに読んだ本だ。

古本屋で売って新しい本を買わなければ。

椎名誠『わしらは怪しい雑魚釣り隊』。

面白いなあ。

書き方も面白いし、やってることも面白い。

この本は知能指数の下がった大人が集まって雑魚を釣ったり釣れなくてもスーパーで魚や野菜を買ったりして大釜に入れて飯を作って酒を飲んで食うキャンプをする、というのを日本各地でやった記事をまとめたものだ。

焚き火で大鍋沸かして色々入れてみんなで酒飲んで、なんてのはさぞ楽しいだろうなあ。

僕もやりたい。

でも、一人なんだよなあ。

大体いつも一人が好きで、勝手に一人でどっか行って、今もこんなことをしている僕だけど、みんなで焚き火囲んで酒のんで飯を食うなんてのは大好きで、またやりたいなあ、と思う。

毎年河川敷で七輪で焼いてた秋刀魚も、今年は一人か。

一人も良いんだけど、ずっと一人だと誰かと何かをしたくなるなあ。

オカリナでも吹こうか。

オカリナを吹いても静かで、その音をかき消すように歌う邪魔な声は聞こえてこないけれど。

夕食はにゅーめんにした。

そうめんがたくさん余っていて重いので、消費したいのだ。

歩いた距離:7km