まだまだあります!(たぶん)知られざる日本映画を12本観る!「誰が心にも龍は眠る」(2005年)の巻 (original) (raw)
S原:今回はこちら。意味深なタイトルです。
Y木:ほう。
(あらすじ)
幼い頃、湖で溺れたショックで記憶を失くしたテルミ。幼馴染みのユキオと共に、溺れた原因を調べ始めた彼女は、湖にまつわる不思議な伝説を知る。やがて、その伝説とテルミの過去との関係が明らかになる。
S原:これは、主役の女性を麻宮美果が演じています。その主人公の幼馴染が中田裕二。この人は、ロックバンド椿屋四重奏のボーカリストらしい。
Y木:悪いけど知らん。
S原:僕も知らんかった。ファンの人には申し訳ない。2010年解散して2023年に再結成したようです。
Y木:そういうファン向けの映画ではないやろ?
S原:違います。ちゃんと「役者」として扱われてます。演技も自然体でよかったで。主役(麻宮美果)もなかなか良かった。監督・脚本は堀江慶という人で、製作総指揮の喜多一郎から「今回はホラーを撮りませんか」と言われて、この作品を手掛けたみたい。
Y木:へえ。で、観た後の感想は?
S原:普通に面白かったで。ただ、ホラーかと言われるとどうなんやろ。
Y木:怖くない?
S原:うーん。というか「怖さ」を強調していないような気がする。個人的には、ミステリー/サスペンスの方がしっくりきます。主人公は記憶喪失の時期(小学生の頃)があるねん。それは、地元の湖(昇龍湖)で溺れたのが原因です。解説では、「それまでの記憶の一切を失ってしまった」と書いてるけど、このへんは観ていてはっきり分からなかった。
Y木:なんで溺れたの? 事故?
S原:はじめは理由はわからないけど、後半になって真相がわかってきます。自分が記憶喪失になった真相と昇龍湖にまつわる謎(伝説)がだんだんと分かっていく……という話です。
Y木:謎解きがメインか。
S原:そうです。そんな主人公を助けるのが幼馴染(中田裕二)で優しい男やねん。調べていくうちに、怪しげなおじさん(西岡徳馬)が絡んできます。そのおじさんは「昇龍湖で多く事故が起きているが、死亡事例はない」と話します。実は、その湖は……
Y木:実は?
S原:内緒です。ここから先は言いにくい。ただ、クライマックスの場面はなかなか凄かった。
Y木:それも内緒か? 「凄かった」と言われても、どんな場面か説明しないとわからんぞ。
S原:うーん、そうやな。ここだけ説明するのを許してほしい。クライマックスは、街の人々がゆっくりと湖に向かいます。中田裕二は声をかけるが、誰も反応せずゆっくりと歩き続ける。湖につきます。そこから、次々と湖に入っていきます。ある人は、桟橋からドボンと飛び込み、ある人は湖に入っても歩くのを止めない……たくさんの人たちが湖にすいこまれていく……
Y木:おお、気持ち悪いな。
S原:ここが静かで異様な雰囲気でな。お金がたっぷりと使えたら、すごい場面になったかも、と思うわ。なんというか、無表情な人々が静かに湖に入っていくのがすごいねん。ここはエキストラも撮影も大変やったと思う。
Y木:へえ。
S原:ただ、全体の印象としてはやや薄いかな。きちんと作られている分、かえって大人しい印象になったかも。
Y木:あー無茶苦茶やけど、印象に残るタイプの映画じゃないんやな。
S原:そうそう。あと、謎解きの部分が意外にストレートやったかな。変なキャラクターや思わせぶりなエピソードもあるけど、最後はわりとまともに終わった。
Y木:ちゃんと出来てるなら十分やろ。いつもツッコミ前提で観るから、性格が歪んでしまったんとちゃうの?
S原:申し訳ない。でも、素直に感想を言ってるんやけどな。こうやってレビューを書くよりも作る人の方が偉いと思う。実際に作るのはすごく苦労するやろうしな。というわけで、みなさん。これは独特の雰囲気をもった作品です。椿屋四重奏のファンはもう観ているかもしれませんが、それ以外の人も機会があればぜひどうぞ!