今井絵理子、生稲晃子だけじゃない! 世襲議員も多数で非難の嵐…第2次石破内閣“トンデモ人事”の裏事情(2024年11月16日『集英社オンライン』) (original) (raw)
なんてったって元アイドル
「どこが適材適所なんだ」。石破茂首相が13日の閣議で決定した副大臣26人、政務官28人の顔ぶれに対して、SNSには有権者の怒りの声が渦巻いている。とりわけ集中砲火を浴びているのが、ともに政務官に起用された元SPEED今井絵理子参院議員と、元おニャン子クラブ生稲晃子参院議員の「元アイドルコンビ」だ。「とにかく人がいない…」関係者もそうぼやく自公政権の厳しい台所事情とは。
(画像)元アイドル、世襲…批判が集まる第2次石破内閣の副大臣・政務官の面々…
“エッフェル事件”を蒸し返される今井議員
「2回目の内閣府大臣政務官を拝命しました。担務は沖縄及び北方対策や防災、復興をはじめとする20の分野にわたります。 現場第一主義で様々な課題に向き合ってまいります」
今井絵理子参院議員は13日、自身の写真が掲載された首相官邸公式Xのポストを引用しつつ、こう綴った。
2016年に比例区で初当選を果たし、現在2期目の今井氏。政務官を担うのは、安倍政権下の2019年に続いて2度目だが、沖縄県出身の議員として「沖縄担当」の肩書きを得たことに感慨もひとしおのようだ。
「全国比例での選出である今井さんにとって議員活動を送るうえでのネックになっているのが、地元の県連に入れていないこと。前回、2022年の選挙でも県連入りを目指しましたが実現しませんでした。
タレント活動を通して全国的な知名度もあるだけに、選挙のたびに応援演説に駆り出されることに本人は不満を感じている。客寄せパンダのような扱いを受け続けることを良しとせず、『地元の沖縄に腰を据えたい』という思いが強いのです。
そんなこともあって、内閣府政務官として『沖縄担当』の担務を得られたことは大きい。県連や地元へのアピールにも繋がる、と意気込んでいるようです」(自民党関係者)
永田町で順調にキャリアを積んでいるようにも見える今井氏だが、世間の評価ははかばかしいとはいえない。政務官就任を報告した前出のX投稿にも、さっそくネガティブな反応が相次いでいるようだ。
〈1回目、なんか仕事してました?〉と実績に疑問を持つ声が上がるほか、炎上騒動に発展したパリ視察参加の過去を揶揄する投稿も目立っている。
「いわゆる『エッフェル事件』とは、松川るい参院議員が昨年7月のパリ視察で訪れたエッフェル塔の前でポーズをとる写真を投稿したことがきっかけとなりSNSで大炎上した一件です。
今井氏もこの視察に参加し、現地での写真を投稿。松川氏とともに批判を浴びましたが、〈無駄な外遊ではありません〉とX上で反論したことが火に油を注ぎました。〈追って活動報告します‼〉と宣言したにもかかわらず、今に至るまで何の活動報告も出ていないことも炎上を長引かせる結果を招いてしまっている形です」(全国紙政治部記者)
かくして、今井氏のXには政務官就任の報と同時に、〈フランス旅行の報告書を提出できない奴を政務官にするなんて〉〈おって、報告します…と言いながらバックれ〉〈現場第一主義なら報告はちゃんとするべきでしょ?〉などと辛辣なツッコミを受ける事態となっているわけである。
答弁がしどろもどろの生稲議員
今井氏のようなSNSでのアピールはなかったものの、政務官への起用について「特に力を入れていきたいことは?」と報道陣から問われた際のしどろもどろなやり取りが広く拡散され、「国民をバカにしている」などと世論への反発を招く事態となっている。
「当選した当初から、演説や答弁の不安定さが指摘されてきた生稲さんですが、政務官就任後の受け答えを見ると成長の跡はあまり感じられないというのが正直なところです。
ただ、生稲さんに対する批判的な声が多いのは、出馬時の後ろ盾となった萩生田光一元政調会長の存在も大きい。2022年の出馬に前後して旧統一教会の問題が発覚。萩生田さんに連れられる形で、教団側の集会に参加したことも明らかになりました。
萩生田さんは裏金問題でも渦中の人となり、関係が深い生稲さんにも飛び火した。議員として独り立ちできるまではシビアな評価がつきまとうかもしれません。
そういう意味で今回の政務官起用は、結果を残し評価を覆すチャンスとも言えます」(同前)
生稲氏の場合は、登用のタイミングも批判の種になった側面もあるようだ。
大臣、副大臣、政務官の「政務三役」ポストは、慣例的な「適齢期」があるとされている。キャリアの「登竜門」である政務官は、衆院当選1回、参院2回が就くのが通例だ。参院では当選1回での起用もままあるが、生稲氏もこのケースに当たる。
党内での「時期尚早」との意見に加え、人事で追い抜かれた同期議員からのやっかみや嫉妬が生稲氏への風当たりをより厳しくしているようだ。
批判殺到の人事の裏に人材難
ちなみに政務官の上の副大臣ポストは、衆院当選4回、参院2回が適齢期とされる。そこからさらに大臣に駆け上がるためには衆院当選6回、参院5回を重ねるのが「永田町の常道」とされている。
今井、生稲両氏に加え、登用が疑問視される議員もいる。岸信千世氏のデジタル大臣政務官への起用も評判が悪い。
岸信夫元防衛大臣の息子で安倍晋三元首相の甥という政治家一族のサラブレッドですが、世襲議員に対する有権者の反発をもろに受けている印象です。彼の場合は、演説の不安定さが際立っており、直近の衆院選でも野党候補の猛烈な追い上げを食らってギリギリの戦いを強いられたほど。
いい意味でも悪い意味でも、その一挙手一投足が目立つ岸氏をはじめとする世襲組には厳しい視線が向けられ続けるでしょう」(同前)
日銀の行員を経て国連職員に転じた国際性が評価されたとみられるが、ネット上ではこの人事に異論を唱える者が少なくない。
「ワクチン対応を巡って一部のネットユーザーと論争になることが多い河野太郎前デジタル担当相と近い関係にあることがアルフィヤ氏への反発を招いている面もあります。
河野氏は、アルフィヤ氏が自身の母校であるジョージタウン大学の出身だということもあり、積極的に選挙応援に駆けつけるなど特に目をかけている。
ただ、河野氏は反ワクチン勢のみならず、対中政策のスタンスでネット右翼界隈とも対立することが多い。アルフィヤ氏もそのあおりを受けて言動が炎上しがちです」(同前)
総裁選での勝利を受けて10月から新政権を発足させた石破首相は、衆院解散前の第1次内閣では閣僚人事には手を付けた一方、副大臣・政務官については前任の岸田政権からメンバーを引き継ぎ、独自色を出すのは封印した。
今回の人事で「石破カラー」を本格的に押し出した格好だが、世間の反応を見ると新政権の船出は順風とは言いがたい。なぜ、こんな顔ぶれになったのか。
ある自民党議員のベテラン秘書は、「一言で言うと、人材難。石破首相は今回の人事で『裏金議員』の排除を打ち出し、旧安倍派の多くが選から漏れた。加えて衆院選では与党過半数割れという結果となり、副大臣・政務官候補になり得る中堅議員の多くを失った。少ない手駒の中で見繕ったのがあのメンツというわけさ」とため息をつく。
枯れ木も山の賑わい……といったところか。いずれにしても、円安・物価高への対応や、米国でのトランプ政権の誕生と内憂外患の「石破丸」を下支えするには、なんとも心許ない布陣であることは間違いなさそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班