雪渡り (original) (raw)

E-bike_c0074164_10442081.jpg就寝前にスモーキーを連れ出し、おしっことウンチ、加えて公園の芝生を自転車で2回並走させる。突如、ウサギを見つけて一気にスピードを上げるスモーキー、方向転換で逃げ切ろうとするバニー。ペダルを漕ぐ力がスッ抜けたとおもったら、後輪が横滑りし、横転した。大谷の盗塁よろしく左足を曲げ右足を伸ばし、滑りながら倒れ込んだ。が、ペダルが左足のくるぶしにガッン。深呼吸をしながらしばし動かずに星空を眺めた。遠くでバイクの猛スピードで走り去る排気音が聴こえる。スモーキーがボクの顔の鼻を舐めに来た。訓練の一環で、不意に引っ張られて、3回ほど転んでいる。盲導犬の訓練を真似てスモーキーも分かるかな? いまのところ気にかけて並走するようになってきている。🔷家の改装でよくホーム・ディポ(日本ならホームセンター)などに行く。まだ暑さの照り返しがアスファルトから立ち昇る午後、駐車場で若者2人が中年女性と話しをしていた。「この自転車、ほらここがいいんですよ」「へぇそうなの?」E-Bikeの説明をしている。見ると確かに高い電動自転車ようだ。だけど、見栄を張る必要もなし、ボクには無用の長物。🔷RVパークには、長期と短期滞在の人々が居て、短期滞在の人は1日から数週間が多い。朝食を摂っていると、道路の向こうから一人の男性が来てドアをノックした。挨拶を交わして彼曰く「いやぁまいった、昨日来たばかりなのに、電動自転車、盗まれてね。まだ新品の1500㌦2台、その1台持って行かれてね」「チェーンか何かしていましたか?」「もちろんさ、ボルトカッターで一瞬だよ。警察呼んだけど、難しいみたいだね。あなたも気をつけたほうがいいよ」「そうでしたか、どうもわざわざ」件の話を管理人のケニーに話すと、「時々あるんだよ」「防犯カメラは?」「前のゲートはあるけど、後ろのゲートはないのさ、あんたも気をつけてほうがいいよ」二日おいてまた盗難事件が発生。「裏口ゲートの防犯カメラ設置を会社に要請できないかね?」ケニーに訊ねると「俺からは言えないよ、それより個々の防犯対策さ」「GPS追跡装置とモーションセンサー、オーダーしたから、あと2~3日。それまで車内に格納するかな」「うん、それがいい」二日後、道路を隔てたカップルが、フェースブックのMarketplaceで同じ型の自転車を発見、売主にコンタクトしたという。警察に連絡をし、ホームセンターの駐車場で待ち合わせることに。パトカー2台が両方の出口で待機。合言葉は「That’s it」ゆっくり見て自分たちの物であることを確認し、合言葉を発しパトカーの挟み撃ちで、めでたく犯人検挙と相成った。管理人のケニーはその昔、保安官をしており、警察との連携で逮捕に貢献したのだ。彼が携帯の画像を見せてくれて、そこに痩せぎすの長い髪を頭の頂上に丸め腕は入れ墨だらけの男と、女も。どこかで見たような・・・、あっ、ホームセンターの駐車場で見かけた顔だった。彼らのトレーラーには電動自転車や子供用自転車などいっぱいあったそうな。最初に盗まれたカップルも、自分たちの自転車を見つけて、裁判に訴えるとのこと。ボクの自転車もフルサスペンション、程々のマウンテンバイク仕様だが、泥棒たちはこのバイクに目もくれない・・・、さすが目利き。傷や錆がちらほら、商品価値が薄いのだ。私にとっては安物でも実用に耐えればそれでよし、実用本位でいいのだ。若い時分は物への拘りはあった。けれども、リタイアも相まってその関心は薄れ、“程々に生きる心地良さ“を味わっている。やれ新車の傷・流行りのファッション・ハリケーン・竜巻・水害・窃盗などなど、心配事は最小限に留めたい。背筋を伸ばし、深呼吸をして雑念をゆっくり吐き出し、目の焦点を開放し、また深呼吸をして空気をゆっくり吐き出す。心の中が一瞬でも空っぽになれば、気は楽になる。仔犬の学校とトレーニング風景 昔あれこれ_c0074164_01285610.jpg陽はまだ浅く、広大な貯水池に下りる鴨の群れを見ながら、土手に沿ってスモーキーを4㍄ほど走らせ、RVパークに戻りPCのスイッチを入れる。YouTubeが立ち上がり、懐かしい曲が流れ始めた。その昔、同僚として働き、彼からもらったサザン・オールスターズのカセットテープが一生涯の思い出の曲になっている。反面その曲を聴くと、当時の思い出とともに不義理をしてしまった記憶も甦ったりする。9.11以後、経営難に苦しみ、知り合いとはいえ雇用する余裕もない状況だった。寿司を提供していたサウスパークのケータリング場は倒産し、貸し倒れの憂きめに遭う。経営の傾いたその宴会場の売掛金6ケ月分が回収不能に・・・、どこもかしこもレストランは火の車だった。調理場は繁盛時10数人、調理士連中の友人が来店すると、腕自慢やモテナシのサービスをする。それは目こぼしした。飲食店は仕入れから製造・販売までが商。日本から空輸直送の鮮魚や野菜など高額品も多い。出来上がった料理は商品、材料費・人件費・家賃etcが含まれる。順風満帆時はいいが逆の状況になると、一言いいたい気持ちが芽生える。だが、それを言ったらこの商売も“終わり”。調理士が自腹を切るわけではなし、友達もそんなゆるさに乗っかって来店を繰り返す、礼を一言も聞いたことはないが、異国の狭い日本人社会、大目にみなければ息抜きはできない、福利厚生費だ。ある時、調理人のふる里から来たという若者は一宿一飯の恩義などどこ吹く風、仮眠ベッドを定宿に、“まかない”を食べ、日本ローカル紙に名を出したが、その後どうしただろう。ダイニングホールの主任は和太鼓と演劇集団を主催していた。夜10時半以降、ニューヨーク在住の役者志望のメンバーが集まり、別室で演劇の打ち合わせや、宴会場で・演出・演技の練習をよくやっていた。たまに顔をだすと真剣に演劇論を戦わせていた。当時、名を馳せた中国の映画監督と似た内容の戯曲を書き、宴会場に舞台を作り上演まで漕ぎつけたのだが、ニューヨークの土地柄、オフ・ブロードウェイとはいえ評論家の目は厳しく、サポートした親心から「批評家は気楽な仕事」と毒づいたものだ。和太鼓と演劇グループのコラボはまさに戦場シーンに融合し、歌舞伎の見栄を切るシーンなど、コンセプトは良かったと今でも思う。ただ戯曲の愛憎など心理描写場面をバレーか「能」の「動と静」で際立たせるか、加えて衣装や舞台装置の未熟さは否めない。彼はその後日本に戻ったのだがどうしただろう、気になるところだ。その知人が会場を使いたいと打診してきて、使わせたところ、後かたずけ掃除、まして礼の一言もなく数か月後、注意すると、それっきり。一時期、アメリカTV番組司会者の一人?という記事を日本ローカル紙で見たが、その後も分からない。とにもかくにもニューヨークは希望に胸を膨らませて若者が集い、世界に冠たるビジネスの中心であり、夜も眠らない街である。 爽やかな風がジャージ・フードを膨らませ、スモーキーは自転車のボクに寄り添い、小走りで駆けている。貯水池の土手まで一往復。生後10か月、まだ成長過程だが、お互いコミュニケーションが取れるようになってきた。それにしてもこのサイズなるとは思わなかった・・・今ではフェンス越しに背伸びをするとカミさんを凌ぐ。アニメのスクービードゥーに近いづいている。その大きさにビックリだが、性格はおっとり、クークーと鳴く甘えん坊。体力はそうとうなもので、グレイハウンド系がどれだけ疾(はや)いのかよく解る。DNA検査を誕生日のお楽しみにとっている。生後間もない子犬達をジョージア州の森にお置き去りにし、保護団体に救われて我らの家族なったわけだが、「竹取物語」や「桃太郎」を凌ぐ成長速度じゃないか、我ら爺さん婆さんはビックリ仰天だ!!(笑)🔷どうかね、調子は?_c0074164_11290058.jpgサン・ルイス盆地とホワイト・ピークスコロラド州・中央南端Alamosa。人口約1万人、ロッキー山脈4番目に高いホワイト・ピークス(4374m)を背に、全米一広大なサン・ルイス盆地の北端に位置する。海抜2290m、寒冷砂漠地帯のため昼夜の寒暖差は20℃になる。南の州に下るルートとして利用している。今回の滞在は3度目。昇る朝日が逆光となり、遠く霞むホワイト・ピークスが眩しい。朝食を済ませ、カミさんがキルトショップで買い物をしたいというので、市内に出かける。3本の主要道路(160/17/285号線)が交差する盆地の要衝地として発展し、大学や鉄道駅もある。キルトショップは市内中心から少し外れた西寄りのモールにあった。どうかね、調子は?_c0074164_15095854.png駐車場でカミさんを待つ間の風景「どうだね、調子は」「なんも変わらん、もう歳だから」「ほら、息子がいい薬くれたとか」「いやいや、薬なんかじゃだめさ」とかなんとか、15分以上カミさんを待つ間、彼らの世間話は続く。砂漠地帯は地下水が硬水のため、飲料用ステーションが所々に点在する。アリゾナ州でもよく見かける光景だ。ある時コインを入れても水が出ず、電話したら給水車が10分ほどで着くという。車から降りた男性は、素早く給水の準備をしながら、「この仕事を始めてもう2年さ」リタイア後の仕事に満足していると言っていた。そう、この国は至る所で砂漠地帯を灌漑により農耕地帯に変容させて発展してきた国なのだ。それにしてもハリケーン・ヘリーン、中東情勢、大統領選など、世間は目まぐるしい。 Santa Barbara 3 尾根に隠れる夕日_c0074164_17400160.png移動用汚水タンク公共インフラに頼らず独立独歩のRVキャンプを英語でBoondockingまたはDry Campingという。一般に馴染みのない言葉だ。いわゆる電気・ガス・上下水道なしの砂漠や渓谷などでの単独キャンプをいう。日常を抜け出し自然の空気で心をリフレッシュ。尾根に隠れる夕日に向かって「バカヤロー」とは言わない。何故なら「あんたこそ、あんたこそ・・・」とコダマが返ってきそうだから。おそらく「ありがとう」ぐらいは心でささやくかな。さてさて冗談はさておき、これが日常となると話は異なる。普段はAll Hookups の施設に宿泊し、たまに米国有林のキャンプ場に行くわけだが、トイレと水場があるのみ。そして携帯電話も繋がらない。ちなみにRV車には飲料・トイレ・調理やシャワー用の排水タンクが備え付けてあって、自分で作業を行なえば文化的暮らしは可能なのだ。いざ景色よし・空気よしであったとしても、日々いかに楽な生活を送っているか再認識させられる。ましてや能登半島地震のような被災者の方々の暮らしは如何ほどか判るというものだ。一例を挙げると作業内容はこんな具合だ。本体タンクから移動用タンクに汚水を移し、トラックの荷台にその100㌔弱のタンクを引き上げ、近場の汚水処理場で下ろして排水し、自前のバキュームカーサービスが完了する。携帯電話が繋がるようなら、週間天気予報やニュースその他の情報を手短に視聴。さらに飲料水を100ℓほど専用タンクに入れ(キャンプ場でもいい)、RV車の飲料水タンクにポンプで給水。最近100㌔超の上げ下げは限界を感じ、ウインチで引き上げる方式に改善した。ところで、普段の生活で日本人はどのぐらい水を消費するのだろう。各調査にばらつきはあるが、一人当たり一日200ℓ以上の水を消費している。興味深いのはTOTO調査。1965年の使用量が30年後1995年には倍増し、バブル後の環境意識・節水の高まりからだろうか、その後は1割減の横這い状況が続いている。水洗トイレやウォッシュレットの普及は、水の使用量増加と重なるように見えるのは偶然だろうか。使用内訳は風呂が4割弱、トイレ2割、洗濯1割半、炊事1割半、その他となっている。欧米では考えられない豊富な水資源の国なのだ。ウォッシュレットついでに捕捉すると、アメリカのウォッシュレット状況はまず皆無なので、携帯を持参している。ボトルを握るとノズルから水を噴射する手動タイプ。使い勝手はいい。ただし、アメリカ人で持っている御仁を見かけたことがない。^^話しを戻そう。山奥深く限界集落も電波塔もない地域は、キャンプホストの電話すらなく、予約が出来ない。とはいえ、この1~2年、スターリンクス(衛星携帯電話網)の普及で、専用アンテナをよく見かけるようになってきている。旅行者のみならずキャンプホストも利用するようになって、今回のキャンプホストもその一人、スターリンクスのアンテナを出していた。🔷その妙齢の女性は公職をリタイア後、キャンプホストに応募してこのキャンプ地にやって来たという。ジョージア州だったか南の州出身、キャンプ場は年中無休なので「大丈夫かな?」と冬の寒さ対策が心配になる。ワンちゃんを見失った若者にメッセージを遺したものの、丸一日返事がないという。その晩、雨が降ったり止んだり。翌朝、スモーキーの散歩に同じ場所に行ってみたが、ワンちゃんはみかけなかった。午前中、発電機のキャブレターをオーバーホール、やっと快調なエンジン音に戻る。特殊なプラスチック製のノズルは未使用期間が長いと詰まってしまうのだ。孫2人連の老夫婦が犬の散歩がてらお礼にやってきた。前日、村で買い物の際マシュマロを購入し、彼らのテーブルに置いてきたのだ。「エンジンがかかるか試しましょうか」と車を持っていく。ジャンプケーブルを繋ぐと一発でスタート。充電のため村までドライブに行くらしい。午後4時ごろ雨が止みかけて、カミさんがスモーキーの散歩に出かけた。戻ってくるなり「例のワンちゃん見たわよ」息を弾ませながらいうではないか。「スモーキーが邪魔しないように遠くから一部始終」。例の渓流のほとりのトイレ前、男性の髪はボサボサ、ヨレヨレの服装。ワンちゃんは彼の前にお座りをして動かずじっとしているところを、彼がさっとワンちゃん抱きかかえてだきしめ、顔を舐めはじめるところを、すかさず車のドアを開けケージに入れて、カミさんが話しかける間もなく、渓流脇の道を一目散に下り去ったという。その晩ドアをノックする音がした。開けると、ホストが「今電話があって、見つかったそうよ、連絡しなきゃって。昨日は夜遅くまで山の中を探し回ったんだって。携帯が繋がらないから、ワタシの留守電にも気がつかなかったのね。ウイスコンシン州からっていってたわ」「そうですか、カミさんも見たそうです」「えっそうだったの?」「連絡わざわざありがとうございます」「早くおしえなくっちゃって、急いで来たの」。その後、再度ドアをノックする音が。「このケーキ、よかったらどうぞ」「えっ、どちらで買われました?」カミさんが訊ねると「村のレストランで」「あそこ、教えられて一度入って、ケーキが見あたらなくて出たんですよ、アハハハ」スポンジ生地はもっちり重く、甘さ抑えめのチョコレートケーキを食べながら、「ローハイド」のDVDをデッキに差し込む。半世紀前の西部劇ドラマは第3シーズンに入る。山に抱かれたキャンプ地のささやかな交流と、その夜の雨音が心地よく、深い谷間に眠りは吸い込まれていった。 Santa Barbara 2_c0074164_15384330.jpg高山独特のヒンヤリした空気が体を包み込む。初夏と秋の中間、すがさわだ。薄明かりの差した空が明るさを増し、天頂に青空が見え始めて、今日も天気は快晴か。(ひょっとして見間違えたかな・・・)、2軒先の老カップルもボーダーコリーを連れている。そんなことを考えながらキャンプ場に戻りかけると、さき程見かけたワンちゃんがこっちに向かって走って来た。我らの脇をやり過ごして走り去っていった。時刻は6時ちょっと前。キャンプ・ホストを起こすには早すぎる。朝食後に話すことにして車に戻った。隣りの女性3人組は早々とトレッキングの準備をしている。ストックを持った女性に「おはよう、Have a nice day」と挨拶を交わす。目指す山は富士山頂ぐらい。近くの老夫婦とも挨拶。甥っ子(小学年の子供2人)連れで、昨夜キャンプファイアーをしようとして、「マシュマロを忘れて」と笑った。車のバッテリーが上がって村にも下りられないのだという。「ジャンプケーブルしましょう」と約束を交わす。朝食を済ませてキャンプホストにワンちゃんの件を伝えて下山。スマホで発電機の修理方法をチェックしたい。それと軽油の給油、食料の買いもの。村の目抜き通りの外れに、ガソリンスタンドはあった。給油ボックスにキャッシュカードを差し込んでも受けつけず、店の軒先から声をかける。人のよさそうなメキシコなまりのおばあちゃんが、暗めの店内から「あっ、ごめんね。こっちでやるから、何ガロン?」入り口の窓には鉄格子、真ん中に10センチほどの開きスペースがあってカードを手渡す。満タンにして、目抜き通りを引き返すと、壊れかけの廃屋が目に入る。通り沿いの一区画は、錆びたトタン屋根の小さな古い家が何件も連なっている。「あのガソリンスタンド、鉄格子のドアだよ」、「治安対策ね」とカミさん。1930年代のBonnie and Clyde「俺たちに明日はない」の映画を想いだす。銀行強盗や窃盗が車で逃亡する際、立ち寄るガソリンスタンド側の安全対策もあったのだろう。田舎だけに、この小さな村は半世紀以上、時が止まっているようだ。蛇足だが、彼らを日本の五右衛門のように英雄視する風潮も当初あったとされる。蛇足ついでに、昨日2024年大統領候補の討論でトランプが取り上げた移民問題は、デンバー市内のある住宅地区が移民でスラム化し、少年集団がライフルや拳銃・機関銃を持ち住民を脅かす犯罪が横行しているという。ローカルニュースでも取り上げられ、危険な状況だ。(この件はファクトチェック済み)大統領選に関してはまだ予断をゆるさない。次回に続きます。Santa Barbara Campground and Smokey ニューヨークらしく冷え込んだ冬のある晩、「冬渡り」を目の前にし、その記録を徒然なるままに・・・ by tanatali3 S M T W T F S 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
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