Review: 食観光のボリュームゾーン (original) (raw)

佐藤淳(2021)『國酒の地域経済学』文眞堂,p121-134,第7章 國酒と観光

一億総中流の時代は去り,市場は階層化しつつある.
人口も減りつつあり,よほど生産能力がない限り薄利で多売じゃ儲からない,というかそもそもできない.
マス層と富裕層で提供する価値を差別化し,需要調整することが必要だ.

限られた生産能力で高い利益率を挙げようとするなら,単価の高い客に濃密な体験をさせることが有効だ.
酒は,農業や食や工芸,そしてその背景にあるその地域の歴史風土を繋ぐハブになり得る.
客を地域に呼び込めば,地域を感じてもらいやすいし,流通コストは抑えられるし,他の多くの業種にも波及する.

しかし,ここからは私の個人的な考えだが,客とは他所から呼び込むもの,なのだろうか?
地元の人間が地域のことをあまり知らず,「味わい忘れている」ということもしばしばあるのではないだろうか.
各地域のエスタブリッシュメント層は,都市部のそれらともつながりがある.
彼らに濃密な体験をさせ,それを都市部をはじめとした他の地域にも伝えてもらうことが,
最も効率の良い手法であるように思われる.

次は,各地域のエスタブリッシュメント層が地元の文化をどう捉えどう消費しているか,
他地域からの客人をもてなす際にどうしているのかを調べてみたい.