2024年1月に読んだ本 (original) (raw)
新自由主義の廃墟で
ザッと読み通した。ポスト・トランプ時代を分析する筆者の論調は左翼の巻き返しにかなり悲観的。が、それは現状を冷静にみつめる真摯さの現れである。とにかく正確に時代の風潮を記しておくのだという気概にうたれた。あとハイエクはやっぱクソ。ニヒリズム(脱昇華というタームで説明される、解決より破壊を指向する自滅的衝動)極まりつつある現在のふゆかいななかまたちの一角には当然ながらインセルやネトウヨも含まれている。
穏やかな死者たち シャーリイ・ジャクスン・トリビュート
もっとタイトに人選、編集しても良かった気もするアンソロジー。嫌な怖さが有名な短編『くじ』のジャクスンへのトリビュートなだけに、家や特定の場所・集団にまつわるテーマが多い。直截的には描写しなくとも登場人物の人となりや生活環境を想像させるエリザベス・ハンド「所有者直販物件」の筆力の高さ、ジェフリー・フォードのジェンダー問題という視点をより鮮明に換骨奪胎しながらもジャクスンの主題を正統に引き継ぐという離れ業を見せた「柵の出入り口」(非常に切実なストーリーだがユーモアさえ漂うのがもはや貫録の仕上がり)、ジョシュ・マラーマン「晩餐」もまたジャクスン作品の放つ鋭さから数世代をこえた者としての返歌として昇華を感じた。