ルピシアさん、嘘はいけません (original) (raw)

読者の皆さんはよくご存じかと思いますが、このブログでは世界のお茶専門店ルピシアの話題を繰り返し取り上げてきました。しかし、ここ数か月で**ルピシアという会社の誠意や倫理観を疑わざるを得ない事態**が2つも起こりました。

中国の国家標準に適合しない龍井茶を「西湖龍井」として販売している

ルピシアは龍井(ろんじん)茶をはじめとする中国緑茶を通年商品として販売していませんが、今年(2024年)の春に数量限定の商品として「明前西湖龍井 極品 2024」を発売しました。

www.lupicia.com

この商品説明によると、鳩坑種(きゅうこうしゅ)という品種が使われているそうですが、実はこの鳩坑種の緑茶を西湖龍井と販売することは認められていません。中国では、有名なお茶の銘柄に関して、国や地方自治体、あるいは業界が「標準」と呼ばれる規格を定めており、龍井茶一般であれば鳩坑種の使用が認められています。しかし、中国茶アナリストのあるきちさんによると、西湖龍井茶の現行標準で指定されている品種は、龍井群体*1、龍井43、龍井長葉の3つだけ。西湖龍井茶協会の団体標準では、さらに中茶108という品種も認められているそうですが、いずれにせよ鳩坑種の使用は認められていないのです。

西湖龍井茶の現行標準は杭州市の『地理标志产品 西湖龙井茶』DB3301/T 1135-2023で、使用可能品種は龍井群体、龍井43、龍井長葉のみ。もう1つ、西湖龍井茶協会の団体標準もあり、こちらは上記3品種に加え中茶108もOKになってます。3品種限定は2015年の業界標準『西湖龍井茶』の時点で確定してる。

— あるきち (@arukichi) 2024年6月18日

中国茶に馴染みのない方のために、日本のお米で喩えるとしたら、「これは佐渡ヶ島で穫れた魚沼産コシヒカリだよ」と言って販売するようなものです*2佐渡ヶ島が魚沼地域に含まれないことは、ちょっと考えれば(あるいは調べれば)わかるはず。それと同じように、鳩坑種で作った龍井茶を「西湖龍井」と呼んではいけないことも、ちょっと調べればすぐにわかります(中国茶の素人である僕ですらすぐに気づいたくらいですから)。上記の標準が制定されてから10年近く経っている以上、このようなミスは裏取りの努力を怠っているとしか思えません。

動画の誤りに関する視聴者からの指摘を「なかったこと」にした

とはいえ、人は誰でも間違いを犯すものですし、単なる事実誤認であれば酌量の余地があるでしょう(まあ、「世界のお茶専門店」を名乗るブランドとして恥ずかしくないのか?とは思いますが)。なので僕も百歩譲って大目に見ていたのですが、これとは別にどうしても看過できない別の所業に気づいてしまいました。

上の西湖龍井の発売と同じ頃、ルピシアスリランカ紅茶(セイロンティー)の定番商品のリニューアルも行いました。その際に特設サイトや新商品の解説動画を公開したのですが、この動画に非常に初歩的なミスが含まれていました(下の引用では該当箇所がすぐ表示されるようにしています)。

youtu.be

ご覧のとおり、キャンディ紅茶の説明として、17:23前後から「blisk」という単語が表示されます。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、これは「brisk」の誤りです。日本語話者がよくやりがちな、LとRの混同ですね。

この間違いに気づいた僕は、動画のコメント欄で「bliskではなくbriskが正しいのでは?」と指摘しました。それから数か月後の今月下旬、改めて動画を見てみると、ミスが修正されず、概要欄での訂正もないまま、コメント欄が閉鎖されていたのです。

「大した間違いでもないんだからそう目くじらを立てることもないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、大した間違いではないからこそ、簡単な訂正を入れれば済む話です。にもかかわらず、敢えてそうしなかったルピシアは、

と考えられるでしょう。これは茶小売業界の大手企業として、あまりにも卑怯で不誠実ではないでしょうか? 大きな怒りと呆れを感じずにはいられません。

今回の件を受けた処置や今後の方針について

以上の経緯を踏まえ、このブログで過去に投稿した「カテゴリ:ルピシア」の記事をすべて非公開とし、それ以外の記事でも**ルピシアに言及している部分を可能な限り削除しました。写真の撮り直しが必要な記事もあるので、まだ全部は修正しきれていませんが、遅くとも今年中には終わらせるつもりです。また、今後もルピシアに関する新規の記事を投稿しない**ことにします。これらの対応や方針は、ルピシアが誤りを認めて訂正するまで継続します。

個人的にもルピシアの商品を購入することは(余程のことがない限り)もうないと思います。ルピシアは僕が紅茶好きになるきっかけをくれたブランドであり、10年以上にわたって利用し続けてきたので、非常に残念です。とはいえ、紅茶業界の健全な発展のために、ここに今回の出来事を記録しておきたいと思います。