【台風の知識】台風が温帯低気圧になるってどういうこと?熱帯低気圧とは違うの??気象予報士解説 (original) (raw)
台風は日本の近くまで北上したり上陸したりすると、台風は低気圧に変わることが多いです。
そのとき、ニュースで「台風は温帯低気圧に変わりました」と言われる場合もあれば、「台風は熱帯低気圧に変わりました」と言われる場合もあります。
これらは何が違うのでしょうか。そもそも、台風が低気圧に変わるってどういうこと…?気象予報士が解説します。
台風はもともと熱帯低気圧
台風はもともと、熱帯低気圧が強く発達したもののことで、熱帯低気圧の仲間です。
熱帯低気圧が発達して中心付近の風速が17.2m/sを超えると台風になり、逆に衰退して17.2m/sを下回ったら熱帯低気圧に戻ります。
つまり、台風と熱帯低気圧の関係は、構造は同じで強さが違う、ということになります(この「構造」については、のちほど説明します)。
熱帯低気圧と温帯低気圧の違いは?
2024年8月30日18時の実況天気図(気象庁HPより)。「低」のマークが温帯低気圧、「熱低」のマークが熱帯低気圧。後述するように、温帯低気圧は発達すると前線を伴う。
熱帯低気圧は、文字通り熱帯の性質を持った低気圧。つまり熱帯の暖かく湿った空気の塊のようになって渦を巻いている状態です。
一方で温帯低気圧は、暖かく湿った空気だけでできているわけではありません。
南から来た暖かい空気(暖気)と北から来た冷たい空気(寒気)が混じり合ってできるものです。
ちなみに、2種類の空気が一旦混ざり合ってしまったら、当然ながら元通りに分けることはできません。
そのため、熱帯低気圧に冷たい空気が入り込んで温帯低気圧になることはあっても、温帯低気圧が熱帯低気圧に変わることはありません。
なお、私たちが普段の天気予報で見る「低気圧」は、特に説明がなければ基本的にすべて温帯低気圧です。
「台風が温帯低気圧になる」とは?
台風が暖かい空気だけの状態で衰退した場合は熱帯低気圧になりますが、衰退する際、同時に冷たい空気と混じり合うということが起きると、熱帯低気圧ではなく温帯低気圧になります。
たとえば、温帯低気圧は寒冷前線などの前線を伴うことが多く、前線付近で強い雨が降りやすくなります。
また、台風や熱帯低気圧は主に中心付近で強い風が吹きやすいですが、温帯低気圧はより広い範囲で風が吹く傾向にあります。
つまり、「台風が温帯低気圧になりました」と言われた場合は、前線の位置や広範囲での強風に気をつける必要があるのです。
(なお、逆に熱帯低気圧になった場合は、冷たい空気が入らない分、暖かい空気が大量にあることになるため、大気の状態が不安定になりやすいという特徴があります。)
低気圧に変わったら「何に注意すべきか」注目しよう
熱帯低気圧と温帯低気圧では性質が異なるため、台風が低気圧に変わった際は、どちらに変わったかによって注意すべきポイントが異なってきます。
天気予報では、「台風は熱帯低気圧に変わりましたが、引き続き大気の状態が不安定で雷雨がありそうです」とか、「台風は温帯低気圧に変わりましたが、広い範囲で強風に注意が必要です」などとコメントされます。
そういったコメントを逃さず聞くことで、台風が低気圧に変わったあとで被害に遭うことがないよう対策しましょう。