気まぐれ感想文 (original) (raw)
原作クラッシャーは原作者の心クラッシャー
2024年 02月 02日
漫画家の芦原妃名子さん死去の報から重い気持ちで日々を過ごしています。
揉めている経緯をSNS上で見ていたので最悪の結果になったことにショックを隠せません。
世間の怒りはある方向へ向いていますが、攻撃が酷すぎるようであちこちから諫める声が出ました。
私も本来ならその声に与したいところですが、正直感情がついていきません。
発端が脚本家の不用意なインスタ投稿なのは間違いないので、それを今更スルーすることは難しい。
どう取り繕おうと彼らに原作と原作者に対するリスペクトは見られませんでした。
それが根源である限り、攻撃はしていなくても怒りを鎮めることは簡単ではないです。
芦原さんは自身の投稿で事があそこまで大きくなるとは予想していなかったのではと思います。
芦原さんの苦悩は彼女だけのものではなく、漫画家や作家といった世の原作者だけのものでもなく、程度の違いはあれ漫画を好きな数多の読者のものでもあった、ということなんでしょう。
原作クラッシャー、原作レイプ、読者に愛された作品を酷い形で改変することをそのように言いますが、それに苦しんできたのは作者読者に関わらず漫画が大好きな多くの日本人だった。
昨日今日始まった問題ではなく、何十年と積もり積もってきた漫画大好き日本人の怨嗟が今回の件で呼び覚まされた。
現状を言い表すならそういうことではないかと思います。
その怨嗟は漫画家個人が到底背負えるものではありませんから、早い段階で代理人なり出版社なりが表に出てくるべきだったんでしょう。彼女一人に戦わせるべきでも抱えさせるべきでもなかったですし、この成り行きには辛い思いしかわいてきません。
同じように考えている方は多いようですし、件の脚本家、プロデューサー、日テレ、その他のテレビ局、結果的に芦原さんを守れなかった出版社、それらに向かう批判が収まることは当分ないのではと思います。
少なくとも日テレは何らかの対応をとる必要がありますが、原作と原作者に敬意を払わない元凶であり、当分はひたすら叩かれるしかないでしょう。
テレビ局が傲慢さを改めるだけしか道はないのではと思います。
それにしても、なんで打ち合わせ通りのドラマを作ろうとしなかったんですかねえ……。
なんで毎度作者の指摘が入っていたのに、その指摘から作品のテーマを読み取らず、最後まで自分勝手な話を作ろうとしたんだろう。
脚本家はプロデューサーから原作者の意向を聞かされてなかったのでは、という意見を見たけれど、自分の書いた脚本を毎度手直しされるのだから作者の求めるものが何かは理解できたはずです。
それなのにそうでない脚本をあげ続けたというなら、嫌な憶測になりますが、作者が修正に音をあげて諦めて泣き寝入りするのを待っていたということでは。
当初の約束通りとはいえまさか本当に自分で脚本を書く決断をされるだなんて、プロデューサーも想像していなかったんでしょう。
泣き寝入りせず最後まで戦った芦原さんの作品に対する思いを感じずにはいられませんが、果たしてプロデューサー、脚本家の方達はそこまでの覚悟でこのドラマにあたっていたのかどうか、芦原さんへの対応を見る限り怪しいと思わざるをえません。
今回の件で感じたのはドラマ制作の現場のあまりの貧しさで、予算が少ないとか時間が短いといった物理的な貧しさもそうだけど、なんかもうとにかく心が貧しいなと。
ゼロから作品を作り出した原作者への敬意のなさ、約束事を簡単に反故にする誠意のなさ、それでも自分達に非はないとする傲慢さ、ドラマにしてやっている、テレビに出してやっている、そういった心根の卑しさ、そういうのひっくるめてもうあまりに貧しいなと。
素晴らしいドラマがいくつもあることは承知してるし、現場のスタッフはいいものを作ろうと頑張ってるのだろうし、原作者・脚本家どちらも満足といったドラマだって普通にあると思いますが、それでも今回のような悲劇を生み出すのがドラマ制作というのも現実で、もう前から原作破壊については言われていたのだから、業界の方々には真剣に改善していってもらいたいです。
人死にが出てすら変われなかったとか、そんなことはあってはならないと思います。
とりあえず「ミステリと言う勿れ」はもうこれまでのようには見れないかな。
もともとドラマの改変部分は気に入らなかったし、続編がありそうな雰囲気ですが、ここまでの騒動を起こして同じ脚本家を起用されたらこっちも反応に困ります。
そもそもこういうのが嫌で原作を知ってる漫画のドラマはほぼ見てこなかったし、個人的には「ミステリ~」も漫画があるなら基本それでいい。
脚本家も一から話を作る脚本と原作が存在する脚色をしっかり分けて、自分の色を出したいならオリジナルで脚本を作る、原作があるなら原作者に敬意を払う。
「セクシー田中さん」はドラマも原作も見てないけど、SNSの投稿が話題になった時に作者が芦原妃名子さんだと知り、「今もドラマ化されるほどの漫画を描いてるんだー」と嬉しくなったんですよね。
以前このブログで彼女の「砂時計」をとり上げたことがあって、そこでも書いたけど、人の感情の繊細な部分を丁寧に描く漫画家さんなんです。
作風からご本人も繊細な方だろうと想像していて、だから騒動を知ってご本人にはかなり辛い状況なのではないかと心を痛めていました。
心配していた矢先の訃報だったんです。ショックでしたよ。
前後関係を知れば知るほど感情を理性で抑えるのが難しい。
多くの批判が当該脚本家に向けられていることではありません。
発信力のある名のある脚本家があんな投稿をするという、その軽々しさにです。
あれで自尊心は回復したのかもしれませんが、結果的にこの事件の発端となりました。
下手に文字を操れる分、書かずにいられなかったのだとしたら、それこそ物書きのプロとして罪深い。
なるほど、繊細な感情を表現する芦原さんの作品には合わない脚本家だったのでしょう。
お亡くなりにならなくてもこの件は取り上げるつもりでしたが、こうなってしまっては本当に強く業界の改善を願うばかりです。
あと、出演していた俳優さんのケアもしっかりしてあげてもらいたい。
芦原妃名子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。
by teri-kan
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