とうとう出た! 超面白いゲーム×モキュメンタリーな作品『失踪した友人の部屋に残されていたゲーム』感想 (original) (raw)
「ゲームならではの体験」+モキュメンタリーという媒体の相性の良さを見せつけられ、文句なしの面白さでした。
現在1200円(セール時960円で購入)、完全クリアまで4時間ほど。
これは一大ブームが来るのではないか。そんな感覚すら覚えるモキュメンタリーホラーゲーム『失踪した友人の部屋に残されていたゲーム』をクリアしました。
タイトルの通り、失踪した友人を心配に思った主人公が、友人の部屋でとあるホラーゲームを見つける……というストーリーになっています。
モキュメンタリーテイストのホラーゲームというと、『原枝恚子さん怪死事件』などが存在し、こちらもボリューム少なめのアイデア一本勝負のようなゲームでありながら非常によくできたショート作品で、モキュとゲームの相性の良さを感じさせるものでした。
『失踪した~』は主観での探索に写真やテキストなどのロアや、複数のゲームをまたいだストーリーの展開など、現在YouTubeで人気のホラービデオ『フェイクドキュメンタリーQ』やテレ東の大森時生プロデューサー、梨さんなどが展開するホラー作品のような「複数の媒体の別々の話が、やがて1つに繋がる(かもしれない)」という面白さを内包しています。これを実現したゲームは自分の知る限りだとこれだけで、「とうとう来たか!」という喜びがあり、実際ストーリーや語り方もかなりキレッキレで面白いです。
「モキュとゲームの組み合わせが面白いのを知っていた」というとイキりかと思われるかもしれませんが、おそらくホラー好きが求めているホラーゲームとは、大きな音でビビらせてきたり、デカい顔面が追ってくるものではなく、先を見たいのに自分の手を動かしたくないという相反する感情を呼び起こす作品だと常に感じていました。
小説や映画、ドラマとは違い、ゲームでは自分の手を動かしているうちに恐ろしく気持ち悪い物体が手に入り、自分の脳が勝手にストーリーを繋げてしまう。これがモキュメンタリーとは非常に相性がよく、自分もこの物語の一部なのかもしれないという怖さが楽しさを増幅させてくれるのです。
近い作品に梨さんの『瘤告』という作品があり、これは物語を読んでいるとローソンのネットプリントコードが手に入り、それを印刷することでもっと怖いものが手に入る……というギミックになっていた作品です(現在は終了しています。最近だと『つねにすでに』で似たギミックがありました)。また、『忌録』という小説の考察をすると、何者かにnevarまとめの一部にされてしまうという試みもありました(自分もまとめられています)。
『失踪した~』もそんなゲームで、プレイヤーは5本にまたがったゲームを遊んでいくことになります。遊ぶことを選択したのはプレイヤーですから、何があっても自己責任なわけです。
最初はFPS、次にシンプルなルールのおにごっこゲーム(ここが死ぬほど怖いです)、3番目はお使いウォーキングシミュと、それぞれ30分にも満たないようなボリュームのゲームが展開されていきます。正直「素人が作った」という設定通りのかなりチープなゲームですが、プレイ時間の短さによりギュッと体験が詰まっているので全く退屈することはありません。
問題はどのゲームでも感じる目的の不気味さです。1面のFPSでは、BGMもSEもないアセットで構成されたフィールドの中で、音もなく近づいてくる「女の写真」を撃ち倒しながら目的地を目指すことになり、2面でも同様に「何でこんなことしてるのよ」と突っ込みを入れたくなる目標が設定されています。
もちろんこれは「読み手が興味本位で物語を楽しんでいくうちに、恐ろしい物語に足を踏み入れていたことに気づく」というモキュメンタリーにはありがちな設定ですが、ゲームにしてみると1面でどう考えてもヤバい女の写真に引き金を引いているのは自分であるということに嫌というほど嫌悪感を沸かせられるのは新しい体験になると思います。
モキュメンタリーという性質上あまりゲームには触れずにご紹介してきましたが、このゲームは前半の新しさもさることながら、後半からが非常に面白いです! これはかなり予想できない体験になると思うので、プレイヤーの気づきによって新たな面白さを生み出すゲームフェチの方にぜひおすすめしたいと思います(ホラーが平気ならですが)。
クリアした人へ、全部集めてから髪の毛を調べましょう。
【追記】
ジャンプスケアありますか? という質問をいただいたのですが、デカい音は出ないけどちょっとゾッとするものが急に出てくるみたいなシーンは2か所くらいあります。不快感はありませんでした。
怖いか怖くないかでいうとめちゃんこ怖いので、苦手な方は友達召喚しましょう。