「SHOGUN 将軍」浅野忠信、独自のセリフ回しにこだわり「まず自分の言葉に置き換える」 ─ 反響に驚き「今度は日本が受け入れ体制を」【インタビュー】 (original) (raw)

2024.4.23 12:22 Feature | Tv/Movie

SHOGUN 将軍

© 2024 Disney and its related entities

ドラマ「SHOGUN 将軍」がいよいよ終幕だ。最終話となる第10話が2024年4月23日に配信されたこのシリーズで、一際存在感を放っているのが、浅野忠信演じる樫木藪重。真田広之の吉井虎永に仕える家臣だが、裏表の顔を持ち、劇中では出世や保身のために裏切りを繰り返す男だ。

浅野といえばマーベル映画『マイティ・ソー』(2011)ホーガン役など日米を股にかけて活躍する俳優だ。真田とは、『47 RONIN』(2013)や『モータルコンバット』(2021)『MINAMATA-ミナマタ-』(2021)といった海外作品で共演する旧知の間柄。

劇中でもとりわけ個性的な藪重は、どのようにして生まれたのか。現代的にも聞こえるセリフ回しの理由とは。「SHOGUN 将軍」の先に浅野が見据える、日本の未来とは。THE RIVERは、浅野忠信に単独で話を聞いた。

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樫木藪重役 浅野忠信 単独インタビュー

──浅野さんが演じた藪重は、現代的なセリフ回しであることが印象的でした。時代劇の言葉ながら、一人だけ違った喋り方をされています。ふとしたところで、「はぁ」や「ふぅ」と、吐息のリズム感を作られている。真田広之さんに尋ねてみたところ、「“裏切り”の象徴として、あえてフリーダムを与えた」との意図を話していました。藪重の作り込みついて、浅野さんにはどのような考えがあったのでしょうか。

ひとつは、実際にその時代に生きた人間が誰もいない、ということは常に考えています。皆さんの頭の中にある「時代劇っぽくない」というイメージは、時代劇を見すぎたからこそ生まれる言葉だと思っているんですよ。もしかしたらこうかもしれない、ということを、本当に何度も考えました。

それから、英語のセリフもやる時もそうだし、関東の人間として関西弁などの方言を喋る時もそうなんですが、「まず自分の言葉に置き換える」というのを、役者を始めた10代の頃からずっとやっています。自分の言葉に置き換えないと、セリフが入ってこないんですよ。

例えば、「拙者はそなたの事をとても愛おしく思うておりまする」というセリフがあったときに、字面のままで言うと、何を言っているのかわからない。もちろん意味はわかるんですよ。私はあなたのことをとても大切に思っております、愛しています、ということなんですが。

これを自分の言い方に置き換えると、「オレ、お前のことホンットに愛してるんだよ!ホントに大好きなんだよ!」ってことじゃないですか。そのプロセスを一回やることによって、リアリティや、本当の息遣い、呼吸が出来上がってくるんです。「拙者、そなたのことを本当に愛おしく思うておりまする」という言葉が、初めて生きてくる。それは練習の段階で、徹底的にやっていました。

ただ表面的に言葉をなぞっても、型にハメただけにしかならない。藪重って、そういう人間じゃないんですよ。もちろん他の役は、表面的、建前で虎永様と向き合わなきゃいけない部分がきっといっぱいあるから、それでいいと思うんだけど、藪重は常に自分の言葉で喋っているから。空気も読まないし、虎永様に嫌われるようなことも平気で言うキャラクター。そうすると、「おっ」とか「あぁ……」とか、そういう言葉はどこで出てくるのか。生の言葉でやらないと出てこないんですよ。

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──その塩梅は調整されるのですか?他のキャストとのバランスを取る必要はありましたか?それとも、突き抜ける?

一人で練習してきたものに対して、相手の役者さんが全く違うアプローチで来る時もあります。実際にやってみたときに「こう来たか」というものがある。そうすると、さらにリアリティを増していくというか、まさに“塩梅”がその場で生まれてくるんですよね。「あっ、じゃあもっと反応しちゃおう」「じゃあここは、何も考えていないフリをして静かにしちゃおう」とか。相手のセリフによって生まれるものがたくさんあります。

──「SHOGUN 将軍」は配信が開始されて以来、海外でも大絶賛です。特に、海外記事では浅野さんを絶賛する声も本当に多いです。浅野さんが意図した通りに伝わったという手応えや、逆に「海外でこう受け取ってもらえたか」と、意外な喜びを感じたことはありますか?

これはギャンブルに近いというか……、賭けなんですよね。僕は、自分という観客に向かって演技をしているんです。現場では、白い目を向けられることも多いんですよ。本当にうざったい俳優だと思うし……(苦笑)。その場の空気に呑まれないようにしているからです。

ただ、お客さんはいつも味方なんですよね。だから作品が公開された時や、ドラマが放映された時、本当にお客さんが喜んでくれる。なんなら、さっき言ったように、僕は自分という観客を喜ばせるために演技プランを徹底的に作っているから、他のことに縛られないようにしていて、その戦いをしています。

現場にいる間や、役作りをしている間は、本当に恐怖でしかないんです。現場や共演者から「そうじゃない!」って思われたりとか、「なんでお前だけ一人はみ出すんだ!」と思われるようなことは多々あるけど、俺という観客はこれを観たがっていると思うから、それを貫くわけです。

「SHOGUN 将軍」のように、(自分の思いが)本当に伝わってくれたと思えたら、それは自信に変わります。「良かった!俺とみんな、同じこと考えてるじゃん!」っていうことは、よくありますね。

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──「SHOGUN 将軍」の反響を、共演者や製作陣とお話しされていますか?

阿部進之介さん(戸田文太郎広勝役)とたまたま短編映画を作る機会があって、阿部くんとは「すごい反響だね!」という話をしていますね。本当に、一緒に仕事をした人たちみんなビックリしていますし、とても喜んでいるので、ありがたいですよね。

僕は不安と恐怖しかなかったです。本当にヒットするんだろうかと、最後まで怖かったんで。それが大ヒットとなった時には、本当に救われたなと思いました。自分の現場での無礼な振る舞いが恥ずかしいなと思いましたよ(笑)。

──そんなことがあったんですか?(笑)

僕は本当に面倒臭い男だったと思いますよ。現場では、常に藪重になりきっていたと思います。ドラマですから、ずっと同じ監督が来るわけではない。その都度(新しいエピソード監督が)来られるので、前話で作り込んだものを理解していない場合も、しょうがないことなのですが、あるんです。そうすると僕は、「いや、今までこういうプランで作ってきたし、この先もあるから、これだけはどうしてもやらしてくれ」と意見することは多々ありました。

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。